光の約1/10の超高速で移動するブラックホールも存在か ロチェスター工科大らの研究

2023年8月24日 19:28

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 太陽は単独で存在する恒星だが、宇宙ではむしろ連星系を成す恒星のほうが多い。もしも、連星系を成す2つの恒星の質量が、それぞれ太陽の質量の30倍以上であれば、それらはやがてブラックホールになる可能性が高い。ブラックホールが持つ重力はとてつもなく大きく、連星系で生じた2つのブラックホールは互いに引き合いやがては衝突することになる。

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 米ロチェスター工科大学の科学者らは、2つのブラックホールが衝突する様々なケース(1,300ケース)を想定して、その際にどのようなことが起きるのかをスーパーコンピューターを用いてシミュレーションを実施。その検証結果を公表した。

 発表された論文によれば、ブラックホール同士が正面衝突する場合を除き、条件次第では、2つのブラックホールが衝突する直前のタイミングでお互いに周回する期間が存在する。このような衝突のケースを”かすめ衝突”と呼ぶが、”かすめ衝突”が起こった場合、合体後のブラックホールは高速で宇宙空間を移動するようになる。そして条件さえ整えば、合体後のブラックホールの移動速度は実に光速の約10分の1(秒速28,500km)にも及ぶことが判明したという。

 我々はともするとブラックホールは宇宙空間で静止して存在していると考えがちだが、高速移動するブラックホールのほうがより一般的な存在なのかもしれない。銀河の中心にある超大質量ブラックホールが地球めがけて飛来してくる心配はないが、恒星質量ブラックホールは、様々な速度で様々な軌道を描いて宇宙空間を移動している可能性がある。また周囲にガスなどの物質を伴わず、光を全く発することなく移動するブラックホールもあるだろう。

 つまり何の前触れもなく、地球付近の宇宙空間に超高速で飛来するブラックホールがあってもおかしくはない。合体時に発せられる重力波は光速で伝播するため、この見えないブラックホールが飛来する前触れを捉えることは可能かもしれないが、飛来する方向や速度を予測することは困難なため、全く気休めにもならないだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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