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吾妻鏡に記録が残る超新星爆発、その残骸が再び活性化 東大の研究
1181年に起こった超新星爆発残骸の多波長観測結果(c)G. Ferrand and J.English, NASA/Chandra/WISE, ESA/XMM ,MDM/R.Fessen, Pan-STARRS[写真拡大]
吾妻鏡は鎌倉時代の歴史書で、西暦1181年の超新星爆発SN1181に関する記述がある。1187年8月7日に観察されたSN1181は、土星と同等の明るさで輝いていたが、約半年後に姿を消したという。
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このSN1181の残骸は、近年(2019年)まで特定されていなかった。その理由は、残骸が非常に暗いためだが、東京大学は5日、この残骸が再び活動を活性化させていたとの研究結果を発表した。
超新星爆発は、水素の吸収線スペクトルが見られないI型と、それが見られるII型に大別される。
I型は連星系をなす恒星が終末期に合体した際に生じ、連星の組み合わせは中性子星同士かまたは中性子星とブラックホールが合体したケースがある。II型超新星爆発は、太陽質量の8倍以上の大きな恒星が終末期に単独で爆発を起こしたものだ。SN1181はI型に分類され中性子星同士の合体で生じたものとされる。
2019年にカシオペア座付近で発見されたWD J005311は、赤外線やX線で明るく輝く星雲と、その中心にある白色矮星からなる。SN1181が出現した場所付近に位置し、SN1181の超新星爆発残骸の候補として脚光を浴びた。
東大の研究者らはこの天体に着目し、最新のX線観測データから、この天体の形成理論モデル構築を実施。これがおよそ1000年前に中性子星同士の合体によって形成され、ここ数十年の間に再び活性化し、高速の星風を吹かせ始めたことを突き止めた。
I型に大別される超新星のうちでもIa型は、最大光度が一定の値を示す。そのためIa型超新星爆発の観測光度が分かれば、それが起こった銀河までの距離が分かるため、宇宙の物差しとして重宝されてきた。
だがWD J005311は、従来のIa型と比べて暗く、異なる特徴を持つ。そもそもいったん活動を終えた超新星爆発が約1000年の時を経て、再び活性化するという事象は、かつて認識されたことがなかった。
今回考案されたWD J005311の理論モデルは、同天体の構造をうまく説明でき、真理に極めて近いものと考えられるが、類似天体の観測事例がほとんどなく、Ⅰ型超新星爆発形成メカニズムに関する謎はより深まった。この新発見を機にこの分野のさらなる深堀研究に期待したい。
なお今回の研究成果は、「The Astrophysical Journal」に掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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