名門シキボウの「香水の原理」技術とは!? 繊維事業の今後を占うカギは?

2023年7月30日 17:23

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 シキボウ(東証プライム)。紡績の名門企業。繊維事業が総売上高の半分超を占めている。

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 そんな老舗:シキボウ(1892年:明治25年)を初めて「へーえ」と意識したのは、今は亡き元東洋経済の編集局長・総務局長を歴任した赤松友弘氏に聞いた「香水の原理」だった。

『濃いと悪臭となりうる成分を香りの成分中にごく僅かに含ませる程度であれば、いい香りと感じる。低濃度なら花の香りだが、濃ければ便臭が具体的な成分例としてインドール(大便の中などにある糞臭のある物質)やスカトール(インドールの誘導体)を応用し、悪臭を甘い香りに返る技術』。

そんな原理に基づいた業界向け製品を、シキボウはメーカーを介して販売しているというのだ。「畜産向け」「ごみ収集車向け」「バキュームカー向け」「介護向け」etc。

 浅学非才の身だが、「なんとも面白い会社だな」とつくづく思ったのが出会いだった。

 直近の業績を追った。2022年3月期は「6.4%増収、13.3%営業増益」。23年3月期は「6.2%増収、10.2%営業減益」。今期予想は「2.9%増収(390億円)、31.4%営業増益(16億円)」。四季報の業績欄の見出し【好転】と言われればその通りだが・・・良し悪しの差は突き詰めると繊維産業に絡む時々の環境。

 経産省の『2030年に向けた繊維産業の展望』では、こう記されている。

「就業者は減少し、繊維産業の次世代の働き手・担い手が不足。2007年の68万人が2020年には40万人に減少している」: マイナス材料。

「海外のアパレル市場は拡大。2019年の1.8兆米ドルが25年には2.3兆米ドルに拡大されると予想されている」: プラス材料。

「外出自粛等により、衣料品等の国内市場規模が縮小」が、外出自粛の流れは和らぎ、人流は回復傾向を強めている。

総合的に見ると、需要そのものは切り返し傾向にあると見通せる。だが要は構造的な問題である従業者が大きな懸念材料。

 知人の日本ネット経済新聞の樋口編集局長は、「就業者の減少は大きな問題だと思う。だが販売の担い手も就業者。そういう視点で見ると着目に値するのが、EC。衣料品等のオンライン消費は上昇基調が続いている。電子商取引に関する市場調査では2019年に13.9%だったシェアが20年には19.4%。当社独自の調査でも年々上がり続けている」とした。

 今後を見据える時、シキボウにも「ECの拡充」は回避できない課題といえよう。

 ところで本稿作成時点のシキボウのPBRは0.36倍。今後の取組について質した。こんな答えが返信されてきた。

 「資本コストに関する指標として、ROA、ROE、ROICを開示している。が資本コストの改善に向けた方針や目標・計画期間、具体的な取組については開示していない・・・中計では経営基盤の強化として資本効率重視の稼ぐ力の向上とポートフォリオの見直しを掲げており・・・取締役会で分析・評価をし議論を進め計画を策定していく予定。」

 見守りたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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