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新入生の制服、今年も遅延の恐れ 多デザイン、小ロット生産も要因
東京商工リサーチが制服販売の現場を取材。今年も入学式に間に合わない可能性が浮上、販売業者らに不安の声[写真拡大]
昨年、東京の衣料品販売ムサシノ商店で新入生の制服が入学式までに間に合わなかったことが報道され大きな問題になった。背景としては、パンデミックによるサプライチェーンの混乱と資源需給の逼迫で原材料調達に遅れが生じ生産スケジュールが遅延したことに加え、男女定員枠の緩和などによって制服の受注数の予測が難しくなったことなどが挙げられている。ムサシ商店の田中社長は「今年は絶対に同じ事態を繰り返さない固い決意」で「人員や物流設備を増強し、万が一にも不測の事態が起きないように万全を尽くしている」。しかし、「そんな努力を台無しにしかねない連絡がメーカーから入った」という。
1月5日に東京商工リサーチが今年の制服納入についてムサシノ商店の田中社長など販売業者や制服メーカーに取材したレポートを公表している。昨年の納入遅延は、制服の相次ぐモデルチェンジ、コロナ禍での工場稼働率低下に伴う生産遅れ、物流の混乱など、幾つもの要因が重なって生じた。メーカーや販売業者によれば、昨年のモデルチェンジは450校だったが、今年は700校以上にものぼり、昨年の1.5倍のデザイン変更が行われる。背景にはLGBTやジェンダー対応による多様化があり、今後この変更がますます広がるとメーカーは見込んでいる。今後さらなる小ロット生産が強いられそうだ。一方で、中国のゼロコロナ政策、ロシアのウクライナ侵攻で原材料調達や物流が円滑に進まず、メーカーでは生地の調達にも支障が出ており、さらにコロナ禍で縫製に従事する外国人労働者も手薄になっている模様だ。メーカーによれば、昨年秋まで「例年にないほど生地が入らず、12月に入りようやく入荷ペースが正常化」に向かっている状況のようだ。
同じデザインの制服は、多くても数百人分に限られ、さらに様々なサイズが必要になる典型的な「多デザイン、小ロット販売」で、その上仕入コストも大幅に上昇している。元々利幅は薄く、新たな設備投資は経営を少なからず圧迫する。こうした状況の中、昨年10月、ムサシノ商店の田中社長は複数のメーカーから「2023年春納品分の生産スケジュールが遅れている」と説明を受けた。取材に応じたメーカーもその事実を認めている。田中社長は「最終的に商品を学生さんに届けるのは私たち販売業者だ」としながらも、「生産の遅れを告げられた以上、私たち販売業者だけではなく、行政や実際に制服を着られる学生さんにも何らかのアプローチが必要」と訴える。(編集担当:久保田雄城)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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