小惑星リュウグウ、太陽系外縁部で誕生か JAXAらの研究

2022年8月18日 15:45

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リュウグウ粒子に含まれる多様な有機物。大別すると三種類の異なる特徴(色ごとに異なる官能基を持つ)を持つことが判明したという。(画像: JAXAの発表資料より)

リュウグウ粒子に含まれる多様な有機物。大別すると三種類の異なる特徴(色ごとに異なる官能基を持つ)を持つことが判明したという。(画像: JAXAの発表資料より)[写真拡大]

 ハヤブサ2によって小惑星リュウグウのサンプルが地球にもたらされたのは、2020年12月のことだった。その後、科学者らによる分析作業が進み、2022年6月には数十種類のアミノ酸が含まれていたことが判明した。これによって地球で誕生した生命の源となる物質が宇宙からもたらされ、地球以外の天体でも生命が誕生する可能性があることへの期待が高まった。

【こちらも】リュウグウからのリターンサンプル、初期分析から判明した事実は? JAXA

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は16日、最新の研究成果に関して発表。リュウグウはもともとは太陽系の外縁部、つまり彗星などの故郷で誕生し、何らかの原因で太陽系内部に飛来した可能性が高いことが示された。

 研究はJAXAの他、海洋研究開発機構、高輝度光科学研究センター、神奈川大学、大阪大学などの共同で行なわれたもので、その詳細は8月16日付けで英国のオンラインジャーナル「Nature Astronomy」に掲載された。

 隕石などの太陽系内部起源の物質は、水素や窒素の同位体の組成を詳しく調べると、地球のそれに近い。一方で彗星などの太陽系外縁部から飛来した物質では、水素や窒素の同位体は、より重い組成が多いという。

 同位体とは、原子核内にある陽子の数が同じで中性子の数が異なる原子どうしを指す用語だが、太陽系外縁部由来の物質は、水素も窒素もその原子核に含まれる中性子数が多いという意味だ。リュウグウのサンプル組成は、隕石のそれよりもむしろ彗星のそれに近いため、リュウグウはかつて太陽系外縁部で誕生し、何らかの原因で太陽系内部に飛来してきたのではないかと結論付けられた。

 またリュウグウのサンプルは、30度以上の温度になると分解する脂肪族炭化水素に富むことも明らかになり、リュウグウが30度以上の温度を経験してこなかったことも判明。さらに、脂肪族炭化水素に富む有機物は、粗粒の含水ケイ酸塩鉱物と複雑に入り混じった組織を持つことも明らかにされた。

 これらから、従来不明だった地球上の有機物や水の由来が、リュウグウ粒子中の粗粒の含水ケイ酸塩鉱物による可能性がでてきたという。つまり地球が水の惑星になり、生命が誕生したのは、リュウグウのような太陽系外縁部から飛来した天体があったからであると推論されるのだ。それを立証するために、今後様々な分析や研究がなされていくことだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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