ソフトバンクGのラジーブ・ミスラ氏が、SVF2号ファンドCEO退任の何故?

2022年7月11日 07:34

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 ソフトバンクグループ(SBG)の副社長で、ソフトバンク・ヴィジョンファンド(SVF)の1号ファンドと同2号ファンドのCEOを兼務していたラジーブ・ミスラ氏が、SVF2号ファンドのCEOを退任してバイスチェアマンに就任することが、7日付で伝えられた。

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 公式には、SBGとは関係のない外部の新たなファンドの設立に参画するためと説明され、「自身が参画するファンドとSVF2号ファンドとの間で利益相反問題が発生しないように予防的に取られた措置だ」との解釈が為されている。この説明でスッキリと納得できる人は、果たしてどれくらいいるのだろう。

 ミスラ氏は10兆円ファンドとして注目を集めたSVF1号ファンドに、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)を呼び込むコネクションの持ち主だったようだ。SVF1号ファンド10兆円のうち約5兆円はサウジアラビアとUAEのひも付きで、投資と言いながら7%の利回りが約束されている。

 通常、金利の支払いを約束して資金を回してもらうことを「借入」と言う。SVF1号ファンドの運用実績がどうであろうと、毎年4000憶円程度の利払いが発生する。預かっている資金も、円安が進行しているからドル換算すれば円貨5兆円では済まない。

 世界中の注目を集めて来たSBGがこっそり手じまいする訳には行かないから、数多の投資先を順調に新規株式公開(IPO)にこぎつけなくては、返済も出来ないということになる。そう考えると、ミスラ氏がSVF1号ファンドのCEOを継続して、SVF2号ファンドのCEOを退任する理由が浮かんで来る。

 ミスラ氏は、国を相手にした借入の保証人のような役割を担っている可能性だ。本当に利益相反を心配するのであれば、投資先数も投資金額も、SVF2号ファンドを凌駕しているSVF1号ファンドも離れるのがロジカルだからだ。

 そんな連想になってしまうのは、SBGが21年11月に発表した1兆円の自社株買いの効果が見えないからだ。21年11月末、SBGの終値は6030円だった。半年間で5523億円の自社株買いが行われた挙句、5月末の終値は5379円だ。

 SBGのように数多くの事業先に投資をしていると、いい方向に回り出すと加速度的に利益が積み上がる。21年3月期の5兆円という利益は正にそのピークだったろう。反対に逆回転すると歯止めが利かなくなることは、22年3月期に1兆7000億円という赤字の計上によって証明された。

 6月からの残り6カ月で自社株買いに投下できる資金は、予定の半分を割込んで4500億円を切っている。加えて、ロシアによるウクライナ侵攻という新たな事態が発生して、投資環境はますます悪化した。限られたキャッシュフローの中で毎年4000憶円程度の利払いが続くSBGに、先の見えない辛抱が続くことになる。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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