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167万台が消えた自動車生産 クルマの国内生産が危機的状況になった理由
トヨタ自動車の国内生産拠点の中心、元町工場(2018年撮影) 国産自動車の生産現場が消えることの無いよう祈る[写真拡大]
日本自動車工業会(自工会/jama)の資料によると、2018年の国内四輪車生産台数は973.0万台(前期比0.4%増)で、2年連続で増加していた。乗用車は835.9万台(同0.1%増)となり、うち普通車は2.1%増の525.6万台、小型四輪車は6.5%減の160.5万台、軽四輪車は149.8万台だった。トラックは125.7万台、バスは11.3万台を記録した。
ところが、コロナ禍および半導体不足などの影響を受けた3年後、2020年の四輪車生産台数は、前期比16.7%ものマイナスで806.8万台となり2年連続での減少。乗用車は前年より16.4%減少して696.0万台となり、うち普通車は21.1%減の419.3万台、小型四輪車は8.3%減の141.0万台、軽四輪車は 7.8%減の135.8万台だった。トラックは前年より15.8%減少して103.8万台、バスは前年比43.1%減少して7万台である。
それに伴い、2018年の四輪車新車販売台数527.2万台は、2020年に459.9万台となった。乗用車は439.1万台だった販売実績が381.0万台まで減少し、うち普通車は158.3万台が137.1万台に、小型四輪車は131.3万台が110.8万台、軽四輪車は149.6万台が133.1万台にまで減少した。また、トラックは86.7万台が77.9万台に、バスは1.4万台が0.9万台に減った。
つまり、自動車の国内生産台数は2018年から2020年の僅か3年で、ほぼ18%弱、約167万台減少しているのだ。海外市場の成長と国内市場の低迷に、コロナ禍や半導体部品不足など不測の事態が加わった。自動車の国内生産は、危機的水準に達したと言わざるを得ない。
また、2021年における日本メーカー8社の世界生産台数の合計約2355万台は、2018年の約2870万台に比べて約515万台落ち込んだとする報告もある。
トヨタの豊田章男社長は、かねてより「国内生産300万台」の維持を掲げてきた。その理由について氏は、トヨタ車を支える部品を提供する「部品メーカーの経営を成り立たせるためだ」と説明してきた。ところが、2020年と2021年の2年連続で、国内生産が300万台を割り、トヨタの2021年の国内生産台数は約288万台だった。
トヨタ自動車の国内生産比率は2021年時点で33.5%。国内8社の平均である31.4%を上回っている。トヨタのメーカー規模を鑑みると、国内生産つまり日本国内雇用に大きく貢献しているといえる。それでも、国内生産比率は2018年の35.3%から僅かだが低下している。国内生産台数は2018年と比べて2021年は約26万台減少した。
3年前と比べて国内生産台数を最も大きく減らしたのは日産自動車だ。43万台以上も減少している。ゴーン元社長のアライアンスによる強引な拡大路線で失った業績の回復途上にある同社は、世界生産台数を絞り込んで基盤を整えつつある。その一環として国内生産比率も引き下げている。国内生産比率は2018年の17.0%から2021年の13.9%まで低下した。同様にホンダも国内生産比率を2018年の16.6%から2021年の14.9%まで下げている。
背景にあるのは、中国自動車市場の急激な成長と日本市場の衰退だ。云うまでもなく、中国は世界最大の自動車市場だ。2021年の販売台数は2600万台超。いっぽう日本の販売台数は450万台を割った。こうしたことを背景に「日本市場向け仕様車を中国仕様の一部として扱うとする動きが日本メーカーに現れ始めている」というのだ。日本メーカーが中国でつくって日本で売る日本向け仕様車という考えだ。
ところが、皮肉と云うべきか、幸いにと云うべきか、日本経済の“失われた20年”で世界の経済成長から取り残され、日本の人件費は相対的に低くなっている。その一方で中国の人件費は高騰しており、日本への輸送費などを考慮すれば、国内生産の部品の方がコスト逓減で勝るケースもある。ここ2~3年の米中対立構造などを鑑みるに、経済安全保障の重要性を考慮すると、日本国内生産の安全性の高さが有利ともいえる。
こうした事態を招いた責任は、自動車メーカーや大手部品メーカーだけにあるとは言えない。日本の経済政策そのものの誤りともいえる。このまま放置すれば、日本の製造業の最後の砦ともいわれる自動車産業さえも、空洞化を招いてしまいかねない。政府や経済産業省には、200万台近いクルマの国内生産が消えた事態の申告で危機的な状況を、真正面から受け止めるべき時期が訪れている。(編集担当:吉田恒)
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