ソフトバンクGを翻弄、グローバル化していた世界が一気にブロック化へと変転!

2022年5月28日 08:41

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 ソフトバンクグループ(SBG)は、アリババ抜きでは語れない。短時間で出資を決めたという伝説が、孫正義社長の存在を殊更大きく見せている所以である。

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 そのアリババが、米株式市場で14.8%高という大幅に上昇したことを受けて、翌27日の東京株式市場でSBGが一時6%高と上昇した。孫氏が予て「SBGの利益は関係ない。投資先の株式価値の合計から、単体の純有利子負債を差し引いて算出される時価純資産(NAV)が最も重要な経営指標だ」と、公言していることを連想したかのような買われ振りだ。

 それにしてもSBGの業績は振れ幅が大きい。21年3月期に4兆9879億円という日本歴代最高益を計上して、5月に開催された決算会見では「5兆円や6兆円で満足しない」と言い放ったかと思えば、22年5月の決算会見では1兆7080億円という過去最大の赤字を計上した。1年間で7兆6000億円の資産価値を棒に振ったことになるから投資家のストレスは尋常でないだろう。

 今回、孫氏は「とるべき行動は徹底した守り」「出来るだけ守りを固めて、現金を厚く手元に持つ」と危機感を前面に出して神妙な姿勢を示した。

 米シェアオフィス・ウィーワークの経営危機が表面化した際の20年3月期は、前期の1兆2500億円の黒字から1兆9000億円の赤字に転落した。その年の11月、米紙ニューヨーク・タイムズのオンライン講演会では、「最悪のケースに備えて既に8兆円を超える現金を手元に確保した」と語っている。孫氏自身の危機感もさることながら、マーケットへの配慮を最大限に感じさせた発言だ。

 今回のケースの方が損失額も大きく、特定の投資先に止まらない深刻さがあることを思えば、同額以上の10兆円前後の現金を確保してもおかしくない。

 10兆円といえばソフトバンク・ヴィジョンファンドが運用している投資金額と同等になる。10兆円を運用して不測の事態に備えるためには、合計で20兆円の資金が必要だということだ。常人には想像することすら不可能な金額だが、桁数を大幅に落して考えてみると、手持ち資金が2000万円程だった場合には、投資金額を1000万円程度に抑えておく位が健全だと、合点がいく。

 現在SBGが迎えている苦境は、世界の枠組みがグローバル化からブロック化へと変化していることに起因している。欧米諸国はロシアのウクライナ侵攻を契機にロシアを孤立させようとしているが、現在までのところでは欧米グループと反欧米グループに色分けを鮮明にする程度の意味合いしかない。国家の領土を盾にした戦乱が容易に決着することは考えられないから、先は読めない。

 それに加えて、世界の工場で、市場でもあった中国では、「ゼロコロナ」政策への執念という、ロジックが感じられないこだわりが振りかざされて、欧米諸国はげんなりとした思いで中国を見詰めるばかりだ。アリババが中国企業だということに思いを馳せれば、巡る因縁を感じるのは止むを得まい。

 過去に数々の危機を凌いできた孫氏にとっても、今回はいよいよ正念場かも知れない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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