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コロナ下の医療機器卸大手:メディアスHDの収益を俯瞰する
コロナ禍の中で初めて「病床使用率」といった言葉を認識させられた。と同時に「赤字経営の病院」の存在も知らされた。コロナ患者対応の医療機関には政府からの補助金が支給されているものの、「外来患者離れ」や「緊急性の低い(高いも同様、とする指摘もある)手術の延期」などで厳しい現状下に晒された。非コロナ対応病院でも、「感染リスク回避」から診療患者の減少を余儀なくされた。
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そんな状況下で、病院を相手にするビジネスの現状はどうなのか。
メディアスホールディングス(東証プライム、メディアスHD)の現状から覗いてみた。前21年6月期で総売上高の約98%を、医療用機器販売で占めている。先端医療装置から消耗品まで、その幅は広い。医療用機器卸の大手である。
前6月期は、「17.3%の増収、141.5%の営業増益、117.2%の最終増益、7円増配21円配」。表現は悪いが、いささか違和感を覚えた。「どう理解すればよいのか」と問い合わせた。
昨夏、電話越しにこう説明を受けた。「消耗品はコロナ対応病院中心に手術の減少が響き落ち込んだ。支えとなったのは営業拠点の新設に伴うSPD(病院の物品管理コストの軽減を図る、物流管理の外注化システム)や、移転新設の新規顧客の獲得に伴う消耗品をはじめX線機器等の大型案件の獲得。またPPE(個人防護具)や感染検査試薬などが想定以上に伸びた」。
そんなメディアスHDは今6月期に新会計基準を適用。「0.7%の減収(2450億円)、66.1%の営業減益(9億円)、57.9%の最終減益(8億7000万円)、7円減配14円配」で立ち上がった。「緊急性の低い手術・検査症例の減少、備品の一時的な特需の反動減が想定される」と説明した。
それが1月31日に、前期比でみると増収減益も「売上高:2195億円、営業利益:19億円、最終利益16億円、4円増配19円配」へ上方修正した。その理由をこう語った。「感染対策の進展により徐々に手術症例数は回復してきており、伴い手術室関連製品の販売が増加。感染再拡大やオリンピック開催による検査試薬の販売が大幅に拡大。PPEなどの感染対策製品の販売も順調に推移。結果、上半期の業績が想定を大きく上回った」。
だが前期から今期の上方修正までの動きを俯瞰すると、「前期の特需は一巡。厳しく積算した今期は感染症の進展が徐々に手術症例数増で、医療用機器の販売が回復傾向」という状況。しかし今期の上方修正も前期比減益を勘案すると、揺さぶられたという事実は否定できない。
現時点では「コロナ感染状況の推移」と合わせ、メディアスHDの今後の収益動向を見守りたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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