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2022年の自動車業界、“半導体不足”懸念払拭への道は?
2021年、世界の自動車は生産現場を半導体不足に襲われた 写真は京都の電子部品メーカー、ロームがSi半導体に換えて、インバータやコンバータ向けに2017年に開発した耐熱・耐高電圧な新世代のフルSiCパワーモジュール[写真拡大]
2021年、ITなど世界先端産業の最前線である生産現場を襲ったのは、グローバル規模の半導体不足だ。コンピュータやモバイル機器、IoTなどのネットワーク、産業用ロボット、そして自動車などのメーカーは急増する製品需要に対応して、自社製品に使用するに十分な半導体チップを確保するために奔走した1年だった。そこでは各産業で慢性的な半導体不足が顕著になり、自動車産業も例外ではなく、自動車生産の停止にまで追い込まれた。
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半導体不足は、さまざまな組織に影響をもたらした。日産自動車は自動車生産台数を50万台削減すると発表、実にそのとおりになった。米ゼネラル・モーターズ(GM)もピックアップトラックの生産の一部を中断せざるを得なくなり、半完成したクルマに必要な半導体が載せられず、後付けを待って工場敷地にストック駐車させたほどだ。
自動車メーカーではないが、Apple CARで業界進出を目論むアップルコンピュータのCEOティム・クック氏は7月、チップ不足が同社のiPhoneやタブレット端末の販売に影響を与えると述べた。
世界ナンバーワンの自動車会社、トヨタも東南アジア系サプライヤーの多くが、コロナ禍から半導体部品を含め生産停止に追い込まれ、日本国内の完成車工場が動かせない事態となった。
以上、グローバルな半導体不足によって自動車産業も大きな打撃を受け、米国の自動車生産は少なくとも150万台、ひょっとすると500万台は減少するとも云われた。対応してフォードとGMはすでに2021年々央に生産を制限するなどの処置に踏み込んだ。電気自動車の精鋭テスラは生産レベルを維持するために自社ソフトウェアを修正して代替サポートを行なう対応に追われた。
自動車産業には以前から安定した半導体需要があるとされていたが、半導体メーカーは現在、他の即効性のある産業とオーソドックスで長期的な契約を結んで、経営の安定を図っている。自動車メーカーにとってこれまで在庫を少なくし、無駄を省き、効率を上げることができ、トヨタが先鞭を付け採用する“ジャストインタイム”生産方式が執りやすく、いまでは自動車業界のサプライチェーン・コントロールで広く活用されている。
半面、通常の生産体制であるなら在庫を抱えず、経済的にもメリットがある。しかし、今回のような世界規模での予期せぬ欠品が発生した場合には、サプライチェーン全体の混乱を招く。実際に経営・生産体制は大混乱に陥った。
完成車組立会社の多くは、2020年と2021年の半導体不足を“これほど”と予想していなかったため、危機を乗り切るための在庫調整は非常に困難を極めたのだろう。
現在起こっている世界的な半導体不足は、複雑で高度に専門的な半導体製造、自動車に必要な性能の高度化などの要求で、短期的に解消される訳ではない。今後、半導体需要と供給の不均衡に対処するには、半導体メーカーが行なうべき短期的および長期的な施策とは何だろう?
自動車業界に向けた半導体供給は、短期的には生産能力が需要に追いつかないと考えられる。何故ならば、先進安全運転支援システムや自動自律走行などの新技術を動かすために必要な半導体の数量と高度化が継続的に要求されるためだ。すでに業界では自動車電動化に必須なインバータに使う半導体は、冷却システムが要らない耐熱性・耐高圧電流、さらに小型化を求めている。
トヨタなどは系列サプライヤー大手のDENSOと組んで、新しく高性能な「SiC半導体」製造に乗り出している。新世代のSiC半導体は京都のローム、三菱電機が量産化に成功している。
もう一点、長期的に自動車業界は、半導体関連部品の調達に関する契約のあり方を見直す必要がありそうだ。そうすれば半導体OEMメーカーや半導体製造企業は、数量契約をより強固なものにすることが可能。その契約に従って、自動車メーカーと半導体メーカーが、互いにリスクを応分負担し、バランスのとれたリスクシェアリング・プランを導入することで、問題解決につながる可能性がありそうだ。(編集担当:吉田恒)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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