豊田社長の「BEV拡大計画」が物語る、全固体電池量産化の新たなステージ

2021年12月28日 16:33

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トヨタが発表したBEV集合。(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

トヨタが発表したBEV集合。(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

 3月15日の企業・産業欄に、『EV用電池として有力視される全固体電池、対応企業はどこか!?』と題する記事を投稿した。これまでのEV用電池の主役:リチウムイオン電池が、全固体電池にその座を奪われる可能性が出てきた。

【こちらも】EV用電池として有力視される全固体電池、対応企業はどこか!?

 「リチウムイオン電池には構造上、イオンを運ぶ役割を果たす物質(電解質)を溶かした液体(電解液)が電池の中に入っている。低温では凍結してイオンが動かなくなる可能性が高い。0~50度がその適応環境。液体は希硫酸と呼ばれ、液漏れが発生すると火災が起こりやすい。急速に充電すると電池自体が高温になり、危険な状態になりかねない。つまり寒冷地での使用や、充電時間の短縮を図ろうとすると多々問題がある。そうした弱点をカバーする観点から全固体電池の存在が急浮上している」という内容。

 その上で「全固体電池」関連企業はどこか、としてトヨタ・村田製作所・マクセル・日立造船等を記した。

 そんな全固体電池に関して、新たな動きが浮上した。

 「村田製作所が、22年度内に月産10万個を目指し量産を開始する方針を明らかにした」と、12月22日に各メディアにより報道された。が、村田製作所では「イヤホン」や「VR(仮想現実)ゴーグル」向けを想定しており、中島規巨社長はEV向け(量産化)に関しては「他社との差異化が難しく、投資ばかりかかる」と否定的見方を示した。

 全固体電池の量産化には、未だ道筋が見えないのか。

 注目に値したのは14日の、トヨタの豊田章男社長の仰天発表だった。EV化戦略を具体的に語らなかった豊田氏が、「EV戦略に4兆円を投じる。30年にはBEV(バッテリーEV)の世界販売を350万台に引き上げる」と明言したのだ。

 東京・お台場のメガウェブのトヨタシティショウケースで明らかにしたと言う。私には不思議でならない。居合わせた報道陣は何故、「全固体電池の量産化に目途が立ったと受け止めてよいのか」と問沙汰さなかったのか。

 前記した3月15日の投稿記事の最初で、「トヨタは東京工業大学と共同で、正極と負極を電気が行き来しやすい固定電解質を発見した。20年代前半にも生産の実用化に乗り出す予定。実証実験で、超小型EV:コムスを動かすことに成功した」と記している。これもメディア報道で知った。

 今回の豊田社長の発言は、こうした足跡の進行の上に立ち位置を置いていると考える。つまりトヨタは全固体電池の量産化に目途が立ったと捉えるのが、当然ではないだろうか!?

 と同時に、こんな事実を思い出した。東レの日覚昭広社長は、「全固定式リチウムイオン電池の材料供給を検討している。東レは液体リチウムイオン電池のセパレーター(絶縁材)の世界大手。全固体式はセパレーターが不要になり、需要を奪われる可能性もあるが、全固体用材料の研究開発も進め市場に柔軟に対応する考えだ」と語っている。東レは電極同士の導電性を高める:シート状炭素分子という素材を開発している。電池の材料だ。

 豊田社長の「バッテリーEV車の大型増産計画」で、全固体電池を巡る動向は新たなステージに立ったと言えよう。

 ちなみに富士経済では、時代の転換を見据えるように全固体電池の市場を「20年の3000億円から、35年には約2兆1000億円に達する」と見通している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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