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七転八倒の東芝が3社分割案に漂着、既に八方ふさがりで分割は不可避!
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12日、東芝はグループを3社に再編して、インフラ事業会社とデバイス事業会社の2社を上場させることを発表した。
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インフラ事業会社には公共インフラ、ビル、ITソリューション、再生可能エネルギーなどを移管し、デバイス事業会社にはデータセンター向けHD、パワー半導体、アナログIC、半導体製造装置などを移管する。最後の1社の詳細は詰められていないが東芝テック株等を保有すると共に、グループの負債やブランド管理等を担当する模様である。
東芝は15年に不正会計スキャンダルが発覚して以降、歴代社長が人目を憚ることなく責任を擦り付け合うという醜態を晒した。不正会計はパソコン部門の小細工のような数字合わせが発端となって始まり、米原発部門の巨額損失発生によって債務超過に陥った。
17年8月には名門企業の東証2部降格という珍事も引き起こし、虎の子のメモリー事業の売却などを通して、ようやく1部に復帰したのは3年以上を経過した2021年1月だったが、既に外部からの攻勢には脆弱な体質に変貌していた。
永山取締役会議長が実質的に追放された6月の定時株主総会で、選任された東芝の取締役は8名。執行役の綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)と畠沢守副社長を除く6名は社外取締役で、うち4名はモノ言う株主(アクティビスト)との協議の末に受け入れている。既にその時点で東芝の方向性は見えていた。
12日の会見で綱川智社長は「解体でなく進化だ」と強調する前段で、分割した各社の企業価値が見え易くなることや、より専門化した俊敏な経営が実現できること、株主の選択肢が増えることなどをメリットとして挙げていたが、苦しい立場が言わせるタテマエのように聞こえるとしても止むを得まい。
東芝の執行部は株式の非公開化や事業の一部売却、投資ファンド資金の少額出資受け入れなど、東芝が一体として存続する道を探り続けたものの、ことごとく拒否された挙句最後に残されていたスピンオフを検討する外なかったようだ。
スピンオフとは東芝から出資を受けて分離・独立することを意味し、独立後も資本関係は継続する。9月にスピンオフ計画の検証が始まったのに並行して、執行部はスピンオフを盛り込んだ中計を策定せざるを得なかった。消去法で唯一残された手法を拒絶する余力が、執行部には残されていなかったと見るべきだろう。
奇しくも同時期に報じられた米GEの分割は、企業イメージと分割が似通っているだけで、内容に雲泥の差があることは言うまでもあるまい。
東芝は近いうちに株主や投資家などへ、分割することが事業を強化する上での最善の策だと理解させるための説明会を開催する。
2年後の分割案に対して、「遅すぎる」との異論も聞こえるようだから、アクティビストの思惑も一致している訳ではない。解体される骨組みは変わらないにしても、未だにすんなりと最終決着に向かう道筋が見えないことに、東芝が抱える苦衷の深さがある。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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