放射線下での海水による腐食をデータベース化 福島第一の安全な廃止へ JAEAら

2021年10月9日 07:58

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放射線環境下にある福島第一原発(1F)格納容器材の腐食模式図と、放射線環境下での腐食データベースの概要。(画像: 発表資料より)

放射線環境下にある福島第一原発(1F)格納容器材の腐食模式図と、放射線環境下での腐食データベースの概要。(画像: 発表資料より)[写真拡大]

 福島第一原発の廃止をトラブルなく安全に進めるためには、原子炉の腐食を抑制することが重要となってくる。だが福島第一原発は海水などの不純物を含む水が、高い放射線に晒されているという特殊な環境である。そのため、原子炉の金属材料がどのように腐食されていくのかに関しては全く知見がない状態であった。

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 日本原子力研究開発機構(JAEA)らは7日、放射線環境下で不純物を含む水がどのように腐食を起こすかを、データベースにまとめたとに発表した。研究には他に、量子科学技術研究開発機構、大阪府立大学、東京工業大学、東北大学、東京大学の研究グループが加わっている。

 水に放射線が入射すると、放射線分解によって過酸化水素などの様々な化学種が生成されて金属腐食の加速につながる。また、一般に水中の不純物などによって導電率が上がったり溶存酸素濃度が高かったりすると、金属腐食は加速される。同じ福島第一原発内でも放射線量や水の導電率、溶存酸素濃度は大きく異なりうる。そこで、諸条件下での放射線分解や金属腐食反応を予測するためのデータベース作成が必要とされていた。

 今回作成されたデータベースでは、水中の様々な不純物イオンに関する179の反応式を考慮した放射線分解の数値解析が可能である。例えば、特に放射線分解への影響が大きい臭化物イオンの濃度が高い場合、脱酸素を行わないと高放射線量下で過酸化水素が発生しやすいなどの知見が得られている。また、水のpHや海水由来の不純物、材料から溶出した鉄イオンなどにも放射線分解による生成物量が大きく変化することが予測されている。

 データベースは、放射線の中でも特に影響の大きいガンマ線のみに着目されている。たがアルファ線やベータ線など他の放射線についても影響は否定できないため、JAEAは今後も研究を進めていくとしている。放射線環境下、不純物水中での金属腐食の評価は福島第一原発に限らず、他の放射線利用分野においても応用が期待される。

 今回の研究成果はJAEAの報告誌である「JAEA-Review」にて6月26日付で公開されている。

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