医療従事者間のプラットフォームで急成長のエムスリー、メドピアとのVSに興味

2021年4月21日 17:30

印刷

 エムスリーは、日本最大級の医療従業者専用のプラットフォーム(m3.com)事業を展開している。登録済みの医療従業者数は、国内30万人超・海外600万人超。そもそもは現ソニー・ネットワークコミュニケーションズの出資で、2000年に設立された(現在は、関連会社の表現が適当)。

【こちらも】急成長のファーマフーズが「下期利益偏重型」の理由

 医療情報インフラとして、存在感を高めている。それは株価動向にも顕著。本校作成中の時価8000円前半水準は、公開(04年9月)初値に対し(その後の株式分割等の勘案を含め)20倍超上昇している。一口で言うと「医療関連ニュースの配信」「医療従業者間の情報交換の場」を展開している。

 20年3月期は「28.5%増収、57.5%営業増益、58.5%最終増益」。今期は「新型コロナウイルスの影響により、現時点では合理的算定が困難」とし立ち上がったが、開示済みの第3四半期は、依然通期計画未定も前年同期比で「28.5%の増収(1237億5000万円)57.7%の営業増益(424億6800万円)、58.5%の最終増益(295億700万円)、3.5円増配12円配」。「成長路線に新型コロナウイルス禍が拍車をかけた」と指摘されている。以下の様な点から、認識できる。

★新型コロナウイルスに関するm3.comへの医療従業者のアクセス回数は、前年比46%増と大幅に増加した。

★もう一方の事業柱である製薬マーケティングは、MRの訪問自粛で「リモート面談」「Web会議」がDX化の進捗と相まって大幅に拡大した。

 確かに、フォローの風にはなった。だがエムスリーが進めている拡大策を知ると、例えばIFIS目標平均株価が1万138円と時価に対し27%方上値にあることも納得がいく。拡大策とは、こんな具合だ。

■AIプラットフォーム事業: 医療クラウドサービスのNOBORI社と事業提携。新型コロナウイルスの肺炎画像解析AI、新型コロナウイルス判定遠隔読影等のAIアルゴリズムを搭載したPASC(医療用画像管理システム)の使用が可能になった。全国121の医療機関に無償提携する予定。

■20年1月にLINEと共同出資でLIMEヘルスケアを設立。昨年末からLINEで医師に直接「健康相談サービス」ができるようになった。また首都圏の一部の医療機関でLINEビデオ通話を利用したオンライン診療サービス「LINEドクター」が始まっている。Webを介した医療提供の分野が育ちつつある。

 またエムスリーの成長を語る時に不可欠なのは、海外事業の展開がある。製薬マーケティング事業・調査事業・医師向けeラーニング事業を軸にアジア中心に急展開している。中でもインドでの伸長が著しい。アジアでの売上高は新型コロナウイルスの影響もあり、前期比2倍水準に達している。

 プラットフォームを介し医師間の双方向通信事業を軸に、医療と人間との密なる関係事業を展開するメドピアの強力なライバルが出現した。歓迎したい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事