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ファーストリ、テルモには感嘆させられるそれだけの理由がある
ファーストリテイリンググループとテルモに改めて感服した。
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前者は3月12日にグループ企業:ユニクロとGUで、4月1日の義務化に先立って「総額表示(消費税込みの価格で示す)方式」に切り替えた。単に先行しただけなら、感服などしない。
ユニクロ・GUでも例えばこれまで1900円の価格表示で売っていた商品の場合、決済の際は消費税込み2090円で商っていた。が、新たに総額表示方式に切り替えるに当たり、「本体価格+消費税=1900円」のままで販売するとしたのである。
つまり実質的には、約9%の値下げである。「コロナ禍で先行き不透明感から節約志向が高まることへの対応」とファーストリテイリングでは説明しているが、他の小売業者にとっては驚異的な差別化戦略であろうことは論を俟たない。
斯界のアナリストは、「よほどの体力が備わっていなくては、出来ない相談」とした。改めて、(財務)体力を覗いてみた。例えば2970億円強の有利子負債に対し、2.5倍弱の7300億円近い利益剰余金を有していた。収益構造で「生産は新興国中心の海外」等、効率経営に徹してきた結果と言える。
後者は、「ファイザー製新型コロナウイルスワクチン」に関し「1瓶から7回の接種を可能にする注射器&注射針」の開発・量産化である。2009年にインフルエンザが猛威を振るった折に開発した注射器を活かし、皮下注射に対応しうるように針の長さを13mmから16mmに改良した商品だ。
周知の通りテルモは、北里柴三郎博士などが発起人になり設立(1922年)された「赤線検温器(株)」が源流。国産初の体温計製販企業である。
テルモの社名はドイツ語で体温計を意味する「テルモライブラリ」に由来する。設立当初は「仁丹体温計」として森下(仁丹)から発売され、オリンパスの体温計部門を買収するなど体温計企業として歩みを開始した。1936年には社名を仁丹体温計(株)に変更し、森下仁丹の医療機器製造部門会社になっている。
仮に体温計会社としての経営深耕だけを図り続けていたら、今日のテルモはない(体温計国内2位のシェアを保っているが、総売上高に占める割合は1%未満)。
一連の、予め薬品が充填されている使い捨て注射器「プレフィルドシリンジ」シリーズ。M&Aで13M社(英国)から人工心肺事業を買収し開発・製造した「補助人工心臓」「人工心肺」。いまやテルモの代名詞とさえされる「カテーテル」など広範囲なかつ世界市場を牽引・席巻する商品を生み出し続けていなくては、「世界160カ国以上を商圏とする医療機器の世界的企業」という冠が乗る企業にはなっていない。ファイザー製ワクチンを「1瓶から7回接種可能」な注射器・針を世に送り出してもいないはずである。
凄い企業には凄さを覚えさせられる背景がある。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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