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緩和マネーはどこへゆく? 無国籍通貨(ゴールドと仮想通貨)の価値と株価との相関性 後編
では、ゴールドと同じ無国籍通貨である仮想通貨についてはどうだろうか。まず、「貨幣」代わりの利用は、すでに各国において貨幣が存在することからも不要だ。支払い方法にビットコインを選べるサービスも出てきてはいるものの、「ビットコインでいくら」という値付けをするところまでは、普及しないのではなかろうか。
【前回は】緩和マネーはどこへゆく? 無国籍通貨(ゴールドと仮想通貨)の価値と株価との相関性 前編
続いて「プレミアム感」であるが、有限な資源であるゴールドと同様に、仮想通貨のほとんどが供給量に上限を設けているため(ビットコインは、2100万まで)一定のプレミアム感は演出されているといえよう。
しかしながら、「利用実績」は2008年から数えて12年程度と、紀元前に始まるゴールドには到底かなうわけはない。さらに、ゴールドの時価総額がビットコインの10倍程度の約1200兆円に及んでいることからも、リスクヘッジとしてはゴールドの存在に軍配が上がりそうだ。時価総額の大きさは価格の安定性にもつながる。
さて、無国籍通貨のゴールドと仮想通貨(ビットコイン)の違いが分かったところで、昨今の株式相場(ダウ平均株価)との相関性を確認してみよう。まず目につくのが、本来逆相関となるべきゴールドと株式相場の価格推移が、2020年8月まで相関関係となっていたことである。
特に相関関係が顕著となったのはコロナ禍直後からの動きであり、株価がV字に回復すると同時にゴールドも上昇を続け、そのまま2020年8月に最高値を更新した。その後は下落トレンドとなったため、株価とは逆相関に戻ったとはいえ、異例の動きであったことは間違いない。
そして、ゴールドと株価が逆相関に戻ったタイミングを境として、そのバトンを受けたかのように、2020年8月から徐々に上昇を始めたのが、ビットコインをはじめとする仮想通貨なのである。
つまり、コロナバブルで飽和した緩和マネーが、無国籍通貨であるゴールドに一旦は向かったものの、その後はビットコインをはじめとする仮想通貨に向かい始めたと推測することはできないだろうか。株価が上昇している中で、ゴールドや仮想通貨の価格を押し上げている理由は、明らかに緩和マネーの影響であるといえよう。
飽和した緩和マネーが、仮想通貨という亜流の流れに向かうのは仕方ないかもしれない。しかしながら、現在の仮想通貨の値動きは「手を出してはならない仕手株相場」そのものである。むしろ、飽和した緩和マネーがゴールドに向かっていたままのほうが、有事の際にコントロールしやすく、健全だったのではなかろうか。
仮想通貨のバブルが弾けた時、飽和した緩和マネーは主流に戻ってくるのだろうか。それともどこかに紛れ込んで消え失せてしまうのだろうか。緩和マネーは未来への借金でしかないが、現在の取り組みが新たな歪となって、我々の生活に深い影を落とす可能性も十分に考えられるのである。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)
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