資生堂、今後は収益性とキャッシュフロー重視へ転換 原価・販管費改革により営業利益率15%達成を目指す

2020年12月3日 18:28

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記事提供元:ログミーファイナンス

資生堂、今後は収益性とキャッシュフロー重視へ転換 原価・販管費改革により営業利益率15%達成を目指す

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世界で勝てる⽇本発のグローバルビューティーカンパニーを⽬指して

北川晴元氏:本日は、株式会社資生堂オンライン説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。本日は、私、株式会社資生堂IR部長 北川晴元よりご説明いたします。それでは、会社説明を開始させていただきます。どうぞよろしくお願いします。

プロフィール

まず、簡単に自己紹介をさせていただきます。私の資生堂への入社は大学卒業後の1993年になります。1995年から2006年は、主に本社財務部で経理や財務を担当していました。ちょうど当時は橋本龍太郎内閣であり、いわゆる金融ビッグバンの時代に在籍しましたので、毎年会計制度の変更対応に追われていました。

2006年から約5年間は、経営企画部で主に連結経営計画の策定および管理を担当し、その後IR部に異動しました。当社のIR部は、株主総会の事務局を担当するなど、他社の体制と比較するとそのカバー領域は広く、会社法と金商法をベースにしながら情報開示と投資家コミュニケーションを企画・実践しています。

「第8回 企業価値向上表彰優秀賞およびコーポレートガバナンス・オブザイヤー 2019 経済産業⼤⾂賞」の受賞

おかげさまで、昨年は、東京証券取引所や日本取締役協会様より、ご覧のような賞を頂戴することができました。2014年に、外部から初めて社長に登用された魚谷雅彦のリーダーシップにより、会社が大きく変革し、その過程で受賞できたものと捉えています。本日はそのトランスフォーメーション・ジャーニーの一端を感じていただき、みなさまの投資活動の一助になれば幸いです。

会社概要

資生堂は1872年(明治5年)に銀座で創業した会社です。漢方薬が主流の時代に、日本初の洋風調剤薬局として事業をスタートしました。あと2年で150周年を迎えます。

グループの中核事業である化粧品事業を開始したのは1897年、現在ではグループ会社が80社、従業員はグループ全体で約4万8,000名となっています。連結売上高は1兆円規模に成長しており、化粧品以外では美容室事業や食品、医薬品、さらに資生堂パーラーやフランス料理店L’Osier(ロオジエ)などのレストラン事業も展開しています。

2019年 ビューティー企業ランキング トップ10

こちらは「WWD Beauty」という有名なアメリカの業界紙で紹介されているビューティー企業のグローバルランキングです。ご覧のように世界のトップは3兆円を超える売上のフランス・L’OREAL(ロレアル)社です。2位がUNILEVER(ユニリーバ)、3位がESTEE LAUDER(エスティ ローダー)と続き、当社は世界では5位です。

アジア・日本ではすでにトップの地位ですが、グローバル市場では当社はまだまだ成長の余地があると捉えています。

2019年 報告セグメント別売上⾼

そして近年グローバル化を加速しており、海外売上比率は50パーセントを超えています。

こちらは新型コロナウイルスの影響が生じる前の2019年のセグメント別の売上高を示していますが、日本が約40パーセント、中国が約20パーセント、米州および欧州、そして空港免税店などで展開しているトラベルリテールがそれぞれ約10パーセントとなっています。

2014-2019年 業績推移

2015年からVISION 2020という6ヶ年の長期戦略に取り組んできましたが、これまでの5年間は大変順調に進んできました。

2020年の達成目標として当初掲げた過去最高の売上高1兆円、営業利益1,000億円、営業利益率10パーセントはグラフでお示ししているように、すべて前倒しで達成することができました。売上の伸び率以上に利益が拡大し、経営効率も大きく改善することができました。

2020年第3四半期累計(1-9⽉) 実績要約

しかしながら、今期は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けています。こちらが1月から9月の実績です。売上高の実質前年比はマイナス22.5パーセントと、大変厳しいものになりました。

2020年第3四半期累計(1-9⽉) コスト削減

この厳しい市場環境の中、当社では全社的に徹底したコスト削減を進めています。粗利益の減少をコスト削減でどれだけカバーすることができたかという指標を右上に記載しており、四半期ごとにコスト管理のレベルを上げ、第3四半期では失った粗利益の55パーセントを販管費の抑制でカバーしました。

売上⾼前年⽐推移 ⾒通し

次に、現時点の見通しです。売上高前年比推移がこちらです。第4四半期の見通しは実質前年比マイナス10パーセントです。これは日本市場における消費マインドの冷え込みに加え、欧米の感染症拡大傾向およびそれに伴う移動規制等が厳しさを増していることによるものです。

2020年 通期⾒通し

こちらが通期のP/L見通しになります。第4四半期も市場回復の遅れが一定程度継続することを考慮し、売上高は9,150億円に修正しています。

営業利益はコスト削減を引き続き徹底するものの、中国のダブルイレブンやホリデーシーズンでのマーケティング投資の継続などからマイナス100億円、特別損益を画面右側のとおりにNETでマイナス120億円を見込むことから、当期純利益はマイナス300億円の見通しです。

新型コロナウイルス感染拡⼤によって ⽣活者の価値・意識・⾏動は不可逆的に変化

次に新型コロナウイルスの影響で事業環境が大きく変わりましたが、化粧品業界にとってどのような影響があるのかを見ていきたいと思います。ニューノーマルと言われているように、世界中の生活者の価値観、意識や行動が大きく変化しています。みなさまも身の回りの変化を感じられることも多いかと存じます。

ビューティー市場においても、より健康的な美しさを求める価値観や肌の健康を保とうとする意識が拡大し、スキンケアへの関心がより高まっています。

一方で、外出機会が減ったり、日常的にマスクをすることから口紅などメイクアップの使用機会が減っています。また、デジタル、オンラインでの情報収集やEコマースでの購入が著しく増えてきました。

今後は価格に関する意識がより高まり、単に高価格、低価格ということではなく、価格に見合った本当に価値のあるもの、必要なものを求める傾向が高まっていくことが考えられます。

今後の経営戦略

こうした事業環境の変化を受けて、これから2023年までの3年強、中期戦略「WIN 2023」を推進し、抜本的な経営改革、トランスフォーメーションを実現していきます。

まず、スキンビューティー領域をコア事業と位置づけ、2030年までにこの領域における世界のナンバーワン企業になることを目指します。そして、これまでの売上高重視から収益性とキャッシュ・フロー重視に転換し、営業利益率は過去最高の15パーセントを目標にします。

次に、日本・中国を中心とするアジア圏での基盤をより一層強固にしながら、同時に欧米事業の収益改革を急ぎます。また、グローバルにデジタル、EC事業の拡大をさらに加速するため組織や体制を強化します。

これまで「VISION 2020」において積極的な投資をしてきた研究開発、生産物流、ITや人材育成などへの投資は継続します。同時に自前主義にこだわらず、他社との協業を積極的に実施していきます。尚、すでにCEOの直轄の委員会がこれらの大きく大胆なグローバルでのトランスフォーメーション、構造改革について迅速な意思決定により取り組んでいます。

エグゼクティブオフィサー(EO)体制へ

それを加速するため、2021年よりエグゼクティブオフィサー(EO)体制を導入します。全社の業務執行に責任を持つ新たな経営体制として従来の組織の枠に囚われることなく適材適所を実現するものであり、多様な価値観や発想を経営体制に反映させて「WIN 2023」目標の達成と長期ビジョン、世界で勝てる日本発のビューティーカンパニーの実現を目指します。

ご覧のように現行では、日本を中心とする執行役員、リージョンCEOによる体制となっていますが、2021年からは執行委員に加えデジタルCOE(センター・オブ・エクセレンス)のアンジェリカ・マンソン、グローバルサプライチェーンマネージメント(グローバルSCM)のアントニオ・スピロトプロス、リーガルのマリア・チクラナの3名がグローバルエグゼクティブオフィサーとなり、そこにリージョンCEOが加わる体制となります。

⾼付加価値スキンビューティー領域への注⼒

「スキンビューティー領域をコア事業とする」とご説明しましたが、これは化粧品にとどまらず、美しく健康的な肌を実現する価値を提供する企業へと進化していくことを意味しています。

肌は健康のバロメーターであり、食生活、睡眠、生活環境などによる心身の健康や活力と密接な関係にありますので、ビューティーとウェルネス、すなわち心身の健康は今後さらに融合していくものと考えています。

このように、肌の健康を体全体の健康と分けて考えるのではなく、つながったひとつのものと考えること、また、体の内外両面から健康や美しさを表現するという考え方は大変東洋的な考え方であり、私たちの生活に深く根付いています。

これらはすなわち、資生堂がグローバルで競争していく際に、欧米の競合と差別化できる重要なポイントのひとつです。この領域に強みを持つ自社の研究開発、外部とのオープンイノベーション、戦略的なM&Aなどにより、ご覧のような多面的な商品、サービスを提供しています。

新ブランドのグローバル展開を加速

加えて、これまでにない新しい独自価値を持ったスキンケアブランドのグローバル展開も加速します。左側の「DRUNK ELEPHANT」は昨年資生堂が買収した、アメリカで生まれたスキンケアブランドです。人体や環境への優しさを標榜するクリーンビューティーと呼ばれるカテゴリーが近年拡大していますが、この分野の草分け的な存在として米国中心に急成長しています。

ユニークな商品とSNSを活用したコミュニケーションによってユーザーを拡大しており、Eコマースが力強く伸長しています。第3四半期のEコマース比率は65パーセントを超え、40パーセント台半ばの成長となっています。このブランドは生まれながらにしてデジタルネイティブです。この強みを活かしながら2021年以降もグローバル展開をさらに加速する予定です。

また「樹木との共生」をテーマに掲げ、資生堂が開発した最も新しいブランド「BAUM」も今年6月に日本国内で導入後、この環境下でも大変好調に推移しています。

新価値創造の事業化

さらにスキンビューティーのコンセプトに基づいて化粧品にとどまらない新しいビジネスもスタートします。オープンイノベーションの第一弾として、中国の美容機器市場でナンバーワンの評価を受けているヤーマン株式会社との合弁事業を立ち上げることを8月に発表しました。当社のスキンケア技術とヤーマン社の美容機器の専門技術・知見を組み合わせ、共同での商品開発・事業化を、成長著しい中国市場および日本で来年より本格的に展開します。

構造的転換を図り、2023年に営業利益率15%を達成する

2020年から「WIN 2023」の変革・トランスフォーメーションに果敢に取り組み、大きな収益性の改善により体質を強化し、3年後の2023年には過去最高となる15パーセントの営業利益率を達成します。

2019年との比較では販売ミックスの改善や、自社工場生産の拡大により原価率を2パーセント向上します。また販管費はデジタル化、経費の低減など生産性向上の業務改革を推進し、3パーセントの低減を目標とします。

デジタル・Eコマース事業の⾶躍的成⻑を実現

デジタル・Eコマースはこれまでの取り組みスピードを大きく加速します。全世界の媒体費のデジタル化比率は現在およそ50パーセントですが、2023年には90パーセント以上まで高めます。またEコマースはライブコマースなど小売店との融合モデルや、アリババなどプラットフォーマーとの取り組みを含め、全社売上に占める構成比では倍増の25パーセント、中国では50パーセントを目標とします。これらを促進するためのチームを東京の本社に設置し、データ分析・コンテンツ開発などのデジタル人材を積極的に採用します。

トランスフォーメーションのロードマップ

2023年に向かっての主要な変革・トランスフォーメーションのロードマップはご覧のとおりですが、今年から2021年末までが事業基盤を再構築する重要な期間となります。

企業価値の向上

企業価値を持続的に高めていくには言うまでもありませんが、売上高や営業利益といった経済的側面の成長だけでなく、その企業がどのような社会の問題解決に貢献していくのか、といった社会価値も重要になってきています。

私たちのミッション

世界中の人々や社会、地球環境に対して資生堂が果たすべき企業使命、存在理由はなにかを改めて議論し、昨年、企業ミッションを「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD~美には世界を良くする力がある~」と定めました。われわれの事業を通じて、肌の健康、スキンビューティーを価値として提供することにより、人々を笑顔にし、自信を持っていただき、そして幸せを実感していただくことこそが資生堂の企業ミッション・使命です。私たちが提供する美の力は世界をより良くする力があると信じています。

ESG 取り組み強化

このような考え方のもと、イノベーションによる価値の創造を加速させるとともに、さまざまな社会課題・ニーズに対して、本業を通じた、資生堂だからこそ実現できるESCG 環境、社会、文化、ガバナンスの取り組みを強化しています。ガバナンス面では、経営陣の報酬体系にESG目標を組み入れるなど、これらの活動を動機づける設計としています。

環境対応パッケージの推進

まず環境対応についてです。シャンプーやコンディショナーなど、詰め替えやファンデーションのレフィル対応は、今ではごく一般的なものとなっています。当社では、高級品の分野でも他社に先駆けて、付け替え用レフィルや詰め替え用などを数多く販売しています。例えば、クレ・ド・ポー ボーテは、ブランドが誕生した当初からレフィルを採用しています。

これにより、プラスチックの使用量やゴミの廃棄量の削減につながっています。また、生分解性の化粧品用容器の開発にカネカ社とともに取り組んでいますが、共同開発した容器を採用したリップカラーパレットを11月1日にSHISEIDOブランドから発売しました。カネカ生分解性ポリマー、PHBHを化粧品パッケージで使用するのは世界で初めてです。

さらに、BAUMブランドでは、プラスチック容器部分に植物由来のバイオPET、ガラス容器にはリサイクルガラスを採用しています。また、木製家具メーカーのカリモク家具株式会社とのコラボレーションにより、商品パッケージに家具の製造工程で発生した小さい木材を再生利用しています。木製パーツの部分は繰り返し使用が可能ですし、使い込むと味わいが出てきます。これまでは活用が難しかったものに新たな価値を加え、お客さまに提供する、単なるリサイクルではないアップサイクルという新しい試みです。

コロナ禍における対応/ニーズを踏まえた美容情報の提供

具体的なESGの取り組み事例をいくつかご紹介します。まず、コロナ禍における対応についてです。先ほどもお伝えしたとおり、新型コロナウイルスの感染影響で自宅で過ごす時間が増え、外出時はマスクを着用するようになり、お客さまの美容に関するニーズが変化しました。そのようなお客さまに寄り添い、この時期ならではの美容情報を、タブロイド情報誌や新聞折り込みチラシ、ウェブサイトやSNSで発信しました。

コロナ禍における対応/消毒液の⽣産

また、日本、米州、欧州で消毒液を生産し、医療機関に提供しました。日本では、経済産業省から消毒液生産の協力要請があり、当社の知見を活かして、肌にやさしい手指消毒液を開発・生産しました。その独自の処方は他の企業にも広く開示しました。消毒液の提供に対し、日本医師会からは感謝状をいただきました。また、開発をリードした栃木県の那須工場の近隣の中学校からもお礼状をいただきました。この消毒液は8月から地域限定で一般販売してきましたが、12月中旬より全国販売を開始します。

⼥性のエンパワーメント

次は、女性のエンパワーメントについてです。女性の活躍を実現するダイバーシティ、エンパワーメントは当社の最重要取り組みです。企業の役員に占める女性の割合向上を目的とした「30% Club Japan」では、当社CEOの魚谷が会長に就任し、他の日本企業の多くの経営者の賛同を得て積極的な活動を行っています。

ダイバーシティの推進

社内でのダイバーシティの取り組みも進んでいます。これは当社の取締役のメンバーです。13人中6人が女性となっています。さまざまな経験や識見を持った多様な独立役員の方々に参画いただいており、海外の機関投資家からも、資生堂は日本企業の中で非常にダイバーシティが進んでいる会社として注目されています。

ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂)

また、ダイバーシティは取締役メンバーに限ったことではありません。日本企業の女性管理職比率の平均は約12パーセントですが、当社では、2021年1月には38パーセントとなる見込みです。また、本社では外国籍の社員も増加し、性別や年齢、国籍に関係なく、個々人の違いをお互いに認め、尊重し合い、新しい価値創造に向けて議論する風土を醸成しています。

世界で勝てる⽇本発のグローバルビューティーカンパニーへ

最後になりますが、社会価値と経済価値の双方の価値向上を両立し、資生堂はこれからも世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーになるべく取り組んでいきます。皆さまのご支援をいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。ご清聴ありがとうございました。

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