脱石炭にM&A戦略で臨む、三井松島HDの現状は「?」

2020年11月23日 08:52

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 11日の朝日新聞電子版が『脱石炭、答えはストロー?「ニッチ」を活路に生き残り』とする表題で、吉岡泰士社長のコメントを交え三井松島ホールディングスの現状を伝えている。私は昨年4月10日の財経新聞(企業・産業欄)に、『三井松島ホールディングス(以下、三井松島HD)「脱石炭」の道筋』を投稿した。

【こちらも】三井松島ホールディングス「脱石炭」の道筋

 双方とも時代の流れ・要請に「脱石炭生産販売(関連)事業」対応として、三井松島HDは祖業とは全く無縁のニッチ分野に焦点を合わせ、M&Aの駆使による生き残りの施策を執っているという内容である。

 この方針は、至る2024年3月期の中期5カ年計画にも明記されている。「主力の石炭事業は価格や為替の変動に左右されやすい。今後は石炭関連の新たな権益投資を取りやめる。新事業創出に向けてM&Aを推進する。5年間に計300億円を投じる」。

 株価は企業に対する市場の通信簿、とされる。中計の発表(18年11月)を挟み10月の2006円から12月の1277円まで値を崩した株価は、拙稿の投稿時点で1300円台入口から前半だった。鈍い戻りからその後、右肩下がりの展開を続け昨春以降は概ね1000円割れの水準に居所を移している。本校作成時点の時価は700円台前半。

 1月7日には1228円も3月に800円割れ。10月に年初来安値670円から、やはり鈍い戻り足を見せている。こうした限りでは株式市場は「脱石炭をフォローする体制移行は容易ではない」と言っている、と捉えることができる。

 確かにM&Aを介し、新規事業の種はまかれている。再生稼働エネルギー(MMエナジー)/衣料品事業(花菱縫製)/電子関連事業(クリーンサマフィイス、三星電子)/事務機器(明光商会)/ペット事業(ケイエムティ)/介護事業(MMライフサポート)、そして前記の朝日新聞デジタル版が表題に用いた「ストロー(飲食用素材、日本ストロー)」である。

 決算資料を詳細に拾っていくと、既に開示済みの今期中間期で「ペット事業」や「電子部品事業」は増益寄与。だが「衣料品事業」はコロナウイルス禍で、通期でも8億円近い赤字が見込まれている。「脱石炭を補う事業は現時点では確認できない。日本ストローも市場シェアは最大級だが、脱プラ対応のバイオストローや紙ストローがどこまで浸透するかは依然未知数」(アナリスト)とされる。

 1913年(大正2年)に石炭開発・製造業者として、いわば国策会社として100年余走ってきた三井松島HDの舵切りが右から左にと容易に進まないことは否定できない。前期実績「12%減収、47.3%営業減益」、今期計画「18.2%減収、92.7%営業減益」がそれを示している。

 100年超の歴史を誇るかつての国策会社の先行きに、未だ確たる方向性は確認できない。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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