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死語になった自動車用語「キャブレター」
マスキー法をクリアしたシビックCVCC ©sawahajime[写真拡大]
キャブレターとは気化器のこと、略して「キャブ」。
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知人からこの逸話を聞いた時は、耳を疑った。正規ディーラーでサービスフロントに行き、「キャブの調子が悪いので~」といったら、「キャブって何ですか?」と聞き返されたとのこと。
この知人は、学生時代にシビックCVCCの中古車を買って、気に入って乗っていたそうだ。
世界的に達成不能と云われた排気ガス規制である「マスキー法」を、日本車の「マツダREAPS」と「ホンダCVCC」だけがクリアした。シビックは1972年に登場し、このマスキー法をクリアしたシビックCVCCが1973年に市場投入された。
中年を過ぎて地位も得、経済的な余裕も出来た彼は、とある田舎の納屋に放置されて居たシビックCVCCを見つけて、懐かしさのあまり、再び購入を決めて自宅に回送した。
そのシビックは、動くには辛うじて動いたが、キャブが不調で全く本調子は出ない。
彼は複数台数を保有していたので、普段の足には不自由していなかったし、時々近所を動かして見る程度で、次第に車庫に置いてあるのを眺めるのがせいぜいの状態になって行った。
そしてある日、正規ディーラーを訪ねて得た回答が、冒頭の「キャブって何ですか?」だった。諦めきれず、他にも心当たりをあたって見たが、結局CVCC車を修理出来るところに行き着く事無く、月日が経過して行った。
そんな彼とご縁が出来て、先の「キャブって何ですか?」の逸話を聞き、一肌脱ぐ事になった。
自身の出身メーカー傘下の正規ディーラーは、原則として都道府県単位で展開し、各々の担当府県に自前の営業拠点を展開、その営業拠点のテリトリー内にある、俗にモーター屋さんと呼ばれる「業販店」とも親しくして、「〇〇〇取扱店」の看板を掲げて貰っていた。
モーター屋さんは、単独銘柄のみを扱わず、複数の競合メーカーの車を扱う場合がほとんど。また、古くからその地域に根差した店も多く、古い車の扱いにも慣れている所が沢山あった。
そこで早速、懇意のディーラーに電話して、「シビックCVCC」を扱いなれたモーター屋さんを紹介してくれる様に頼んだ。相談したディーラーの重役は、「うちの中古車部門のベテランがやれるよ」と、気安く引き受けてくれた。
何分にも自社銘柄では無い旧車の為、新品部品手配以外にも、中古車から流用可能な部品の取り出しや、部品手配に少々時間を要したが、長年車庫に眠っていたシビックCVCCは再生された。
後日談がある。
再生されたシビックCVCCが大好きな彼は、時々会社にも乗って来た。彼と冬場にこの車で外出した時、ヒーターをかけると「オーバークール」になるからと、寒いのにヒーターをかけないので寒くて仕方なく、コートを着て乗車する羽目になり、再生を手伝った事を後悔させられた。
昨今の車は、キャブレター(気化器、略称:キャブ)では無く、燃料噴射装置が一般的だ。
かってはスポーツカーで、「ソレックス」や「ウエーバー」の3連、4連キャブとかあり、「キャブ調整」に神業が求められたが、車好きの憧れの仕様も、今は判る人も少なくなった。
「キャブレター」なんて言葉も、今や死語の世界に行ってしまった様だ。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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