ホンダ・S2000チューンドカー、アミューズ・S2000 GT1復刻 エンジンカー究極の魅力

2019年10月27日 20:10

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ホンダ・S2000(画像: 本田技研工業の発表資料より)

ホンダ・S2000(画像: 本田技研工業の発表資料より)[写真拡大]

 アミューズ・コーポレーションの田名邊代表(2008年死去)によって生み出された、ホンダ・S2000のチューンドカーが、来年1月の東京オートサロンで復活するらしい。その現代的改装は新設計のGT1専用R1チタンエキゾーストだけだが、伝説のクルマ「アミューズ・S2000 GT1」を復活させた。

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 この車はごく一部の「マニアのクルマ」でしかないが、その性能はエンジンカーの究極の姿を見せており、「クルマ」を知るに良い素材でもある。ベース車両はホンダ・S2000だが、資質が何よりホンダらしい。

フロントミッドシップ・リアドライブ(FMR)に搭載されたエンジンは、市販車としては驚異の9,000回転まで回る。F20C型最高出力250PS/8,300rpmで、2000cc自然吸気(NA)エンジンとしては驚異的な数値を叩き出している。ホンダF1の技術的成果を生産車に生かしている。

 「アミューズ・S2000 GT1」の注目点は、9,000回転まで回る「高回転型エンジン」の代表格であることだ。逆に最近のエンジンは低速トルク重視になって扱いやすく、日常でもサーキットでも走りやすくて速い車に仕上がり、なおかつ操縦テクニックを必要としなくなっている。ターボエンジンやマイルドハイブリッドなどで、燃費向上と共にエンジン性能の求める頂点が違ってきているのだ。

 ホンダ・S2000を戦艦大和に例えることもできる。つまり今では「無用の長物」と言えるのかもしれない。しかし、「高回転型エンジン」の回転数を落とさないように運転する操縦テクニックこそエンジン車の目指すところであり、エンジンの究極の性能なのだ。そのチューンドカー「アミューズ・S2000 GT1」の人気の深層が、エンジンカーの最後の姿を描いているとも言える。

 「アミューズ・S2000 GT1」のベース車であるホンダ・S2000は、2009年8月4日、一部のマニアに惜しまれながら生産は終了してしまった。国内販売台数は延べ2万台にすぎず、世界でも11万台程度にとどまった。

 また現在では、S2000のような車を駆るイギリス発祥の「ライトウエイトスポーツ」は、もはや一般的な遊びではなくなり、これからはEVや自動運転車に変わっていくのだ。しかし一方で、日本ではマツダ・ロードスターに人気があり、筆者もその魅力にとりつかれた1人である。年々、クルマの趣向がライトウエイトスポーツからGTのようになっていくのが残念ではある。

 S2000のような高回転型エンジンの難しさは、ピストンの上下動で生まれる摩擦を逃げるだけでも大変である。F1エンジン並みのピストンスピードを市販車で実現しているホンダ・S2000自身の復活を望むのだが、現在のホンダにはその余裕はあるまい。生産技術で遅れた責任を、金融知識に頼る現在のグローバル経営者に問いたいが、それも投資感覚を絶対視する投資家たちにもみ消されてしまうだろう。

「EVのS2000」は絶対にありえないだけに、惜しまれるクルマだ。たとえ、戦艦大和に終わってもそれで良いと思えるクルマだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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