ソフトバンクGはウィーワークを傘下に入れることができるか!?

2019年10月17日 17:23

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 企業・産業欄に9月24日、「孫正義氏はウィーワークにどんな新手を打ってくるのか」と題する記事を投稿した。その後、新たな動きも出てきた。第2弾としてお読みいただければ幸いである。

【こちらも】孫正義氏はウィーワークにどんな新手を打ってくるのか

 世界22カ国・74都市で約280カ所のシェアオフィスを展開するウィーワーク(米国ニューヨーク州)の成り行きが注目されている。

 ウィーワークはこれまで、いわゆるユニコーン企業(企業の評価総額が1000億円以上の未上場企業)と称されてきた。日本にも2018年2月に拠点を構え、ウィーワークジャパンを設立(東京都港区南青山、佐々木一之CEO)。東京丸の内北口を皮切りに、5都市で21拠点のシェアオフィスを展開している。

 そんなウィーワークがいま、大きな岐路に立たされている。言葉を選ばずに言えば、ソフトバンクグループ(以下、SBG)の総大将:孫正義氏がどんな対応を見せるのかに世界の関心が注がれていると言って過言ではない。

 10月14日にウォールストリートジャーナル日本版が、『ソフトバンク、ウィーワークの経営権取得を模索』と題する見出しで以下の様な内容を配信している。

★新規上場(IPO)の撤回、創業者CEOのアダム・ニューマン氏の辞任という事態で当面の資金繰りという喫緊の課題に遭遇している。

★広報担当者は「融資をまとめるためウォール街の大手金融機関(JPモルガン・チェース)と契約した。約60の資金提供先が機密保持契約に署名し、経営権及び出資に関し協議を始めている」とした。

★また資金供給について同社の株式の29%(筆頭株主)を保有するSBGが、数十億ドル規模の金融支援の準備を進めている。SBGの狙いは、経営権の掌握にある。

 現時点で成り行きは未定だが、SBGに「何がなんでも」という思いが強いことは容易に想像できる。いまや「投資会社」と目され、現に巨大なファンドを組成し幅広い投資を展開しているSBGにとり「実は設立以来赤字続きだった」ことが表面化したウィーワーク(18年:売上高約1800億円、最終損益約1900億円の赤字)への投資は「大きな汚点」となりファンドへの出資者離れが進みかねないからだ。

 孫氏はウィーワークジャパンに関し昨年、こう豪語もしている。「設立してまだ間もないが、今年の売上高は倍増。来年も倍増。中国のアリババ(電子商取引企業)の様な急成長企業になると確信している」。

 だが実は、孫氏はウィーワークが赤字体質から抜け出せないことを熟知していた。「このままでIPOに走ったら、評価額は激減する。当面、IPOは断念させる」と決意したことは否定できない。

 その意を汲むかの様に9月初旬に英紙フィナンシャルタイムズが、「SBGはIPOによる評価額をめぐる懸念を背景に、ニューマンCEOに上場延期を促した」と報じた。そして9月23日のウォールストリートジャーナル日本版は、「ニューマン氏に奇行や薬物の使用が明るみに出ており、ウィーワークの一部取締役がCEOの退任要求を行った。退任要求の取締役の中には、最大の出資者であるSBGに関係する取締役も含まれているという」と発信している。

 ウィーワークの広報担当者が言う「JPモルガン・チェースを調整役とする融資資金を検討している経営権・出資協議のメンバー」には、コア企業としてSBGも含まれているとする見方も浮上している。

 SBGによるウィーワークの実質上の買収は、実現するのか。真偽を見定めるには、時間を要する。が、SBGの今日に至る歴史が「買収(M&A)の歴史」であることは事実である。顕著な例を引くとこんな具合だ。

■米国ヤフー: 1995年、孫氏は米国シリコンバレーで社員5-6人だったヤフーを200億円で買収した。パソコン(PC)黎明期である。直後に孫氏から200億円の根拠を直接こう聞いた。「インターネットに入り口を作り、集まる膨大な情報を手に入れる。素晴らしい発想だ。PC時代の牽引役になりえる買い物だ」と。事実ヤフーの評価額は数年で10兆円となった。96年に日本でヤフーサービスを開始。グーグルと並ぶ検索エンジンを手にした。

■携帯電話事業: 総務省から1.7GHzの周波数を割り当てられソフトバンクは携帯事業に進出する予定だった。だが孫氏の前に現れたのが経営面で難しい局面を迎えていた英国ボーダフォン。日本でも既に携帯電話事業を展開していた。双方は当初「資本提携」で話し合いを始めた。が、孫氏は一定期間の話し合い後、一転しての買収(06年3月)に舵を切った。後にこう聞いた。「(経営難とはいえ国内で)1500万人のユーザーを有していた。これを活用し携帯電話事業でトップに立つには、買収しかないと判断した」。ちなみに買収金額は1兆7500億円。

■ZOZO: 曲がり角に晒されていたZOZO前CEOの前澤友作氏曰く。「(自身の進退は)孫さんに相談した」。孫氏は約4000億円を投じ、ヤフーを「アマゾン・楽天」と並ぶ「3大ショッピングサイト」に止揚する道を選んだ。

 果たしてSBG:孫氏はウィーワークを傘下に収めることができるのだろうか。時間は要しようが、結果がみえるまでさほどかかるまい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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