ZEHの補助金対象が高層マンションへ! 住宅に対する環境意識が高まる

2019年9月29日 20:30

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記事提供元:エコノミックニュース

積水ハウスは超高層マンションにおいてもZEHを推進する

積水ハウスは超高層マンションにおいてもZEHを推進する[写真拡大]

 環境問題と聞いて、真っ先に「地球温暖化」を思い浮かべる方も多いだろう。2015年、国同士が地球規模で地球温暖化に対して話し合う国際会議COP21において採択された「パリ協定」で、各国が地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減目標を自主的に設定した。日本の目標は2030年までに2013年比で26%削減だ。

 この目標を達成するべく、日本のエネルギー消費の抜本的な見直しが行われたが、中でも急務とされているのが住宅の省エネ化だ。そこで、断熱材などで断熱性を高め、設備を省エネすることでエネルギーを極力消費せず、さらに太陽光発電等でエネルギーを創り出して、エネルギーの消費量を実質ゼロにする「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」の普及が政府によって進められている。

 政府は「2020年までにハウスメーカー等の建築する注文戸建住宅の過半数をZEHに、2030年までに全ての新築住宅の50%以上をZEHにする」という達成目標を掲げ、補助金も導入して推進している。ZEHビルダーとして登録されたハウスメーカーや工務店やZEHプランナーとして登録された建築事務所で、ZEH仕様の住宅を建てれば補助金の対象になる。こうして官民協力のもと、ZEHの認知度は徐々に高まってきている。

 しかし、その一方でZEHは高層マンションには向かないという見方がある。ZEHを実現するためには太陽光発電による創エネが重要なカギを握るが、集合住宅は屋上の面積が限られている。戸数が増えれば一戸当たりの発電量は減少してしまう。高層になればなるほど、ZEH基準を満たすのは難しくなる。

 そこに加え、少子高齢化や都市部への居住集中などを考慮すると、都市部での集合住宅、とりわけ高層マンションでZEH対応できるかが今後の課題となっている。

 政府もこれまで、高層マンションのZEH推進については先送りにしてきた。ところが、ここにきて大きな変化が起こり始めている。住宅メーカー大手の積水ハウス株式会社〈1928〉が超高層マンションのZEH化に向けて動き出したのだ。

 積水ハウスは9月18日、大阪市中央区の全住戸で燃料電池を採用した36階建て超高層マンション「(仮称)上町一丁目タワーPJ」が集合住宅のZEH化を促進するための実証事業として、経済産業省の「2019年度 超高層ZEH-M実証事業」に採択されたことを明らかにした。ついに超高層マンションがZEHの補助金対象になったのだ。

 「(仮称)上町一丁目タワーPJ」は、日本板硝子株式会社の真空ガラス「スーパースペーシア」を採用することで、全住戸の開口部に高い断熱性を確保するとともに、全住戸の給湯設備に「家庭用燃料電池(エネファーム)」を導入し、全戸で快適性と省エネを両立。この二つの組み合わせによって、全住戸でZEH基準を満たし、建物全体の評価となるZEH-Mの基準も同時にクリアすることに成功した。

 開発業者の努力によって、超高層マンションでもZEH化が可能と実証されたことの意味は大きい。今後、超高層マンションの購入を検討する際にもZEHは重要な選択肢の一つとなり、住宅の価値を向上するものになってくるだろう。日本の住宅のZEH化は、集合住宅も含めて、これから本格的な時代を迎えるかもしれない。(編集担当:今井慎太郎)

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