マツダがスモールとラージに分けた訳(2)「コモンアーキテクチャー」からの展開

2018年6月5日 21:33

印刷

 そもそも、マツダは「コモンアーキテクチャー」で「スカイアクティブテクノロジー」と称してすべての技術開発を進めてきた。そこで、「コモンアーキテクチャー」とはどの様なことなのか見てみよう。

【前回は】マツダがスモールとラージに分けた訳(1)「コモンアーキテクチャー」が目指すのは「平準化」

■「一括企画」と「混流生産」で「コモンアーキテクチャー」となる

 簡単に言えば、「全車種」「全工程」を一括で企画して、基本設計を同じにし、全車種「混流生産」ができるようにした。建設車両の小松製作所も同じ考え方で進んできている。小松製作所では車種が多いため、あるラインでは40種以上の組み立てができる多能工が養成されている。マツダはそれほどでもないが、トヨタは車種が多すぎて、コモンアーキテクチャーの概念を取り入れてこなかった。そのため、リーマンショックでは痛い目に遭った。マツダのこの概念を取り入れ、現在トヨタで進められるTNGAに打って出ている。トヨタはテスラと手を切り、マツダと仲良くしているのは自然な流れであろう。

 同じラインで多くの車種が混流できると、何がメリットとなるかと言えば、生産の「平準化」だ。単一の車種を生産する専用ラインとすると、その車種が売れないときはライン自体が遊ぶこととなり、人員も含めて固定費となってしまう。しかし、1ラインで混流生産可能としておけば、1車種が売れないときは他車種で補えることとなる。ラインの稼働率が上がり、リーマンショック時のような減産時点でも損害が少なくて済むこととなる。また、セル生産方式に近くセットされていれば、ラインそのものを容易に削減することもできる。

 全車種の部品も、共通のものを「固定領域」、車種によって変更すべきものを「変動領域」として、生産設備や加工設備、段取りなどを共通で使える工夫をして、ラインは共通で使えるようにしてきた。サプライヤーまで巻き込んで協力してもらい、平準化に努力してきたのだった。

■マツダの具体的展開

 具体的には、設計を「スモール」と「ラージ」の2系統に分け、スモールに「CX―3」と「アクセラ」、ラージに「CX―5」と「アテンザ」をそれぞれ中核とし、それぞれ年間120万台と80万台の生産台数に配分したのだ。これまでの、アクセラを中核に全車種を「一括企画」してきた方式では、部品の共用化などで非効率な点が大きくなったということだ。

 スモールは量産を目指す車種群であり、ラージは将来の電動化などに対応するプレミアム車種群。ラージには、後輪駆動(FR)にも対応できる構造を持たせるようだ。これはプレミアム車種については、FRとすることが世界の常識となっているからだ。FFで低速トルクの強い現代では、大型で車重が重いと急加速が不安定になることと、センタートンネルが大型車では相対的に邪魔にならないことによるのであろう。また、「プレミアム車種では後席3名乗車はあまりない」とのことかもしれない。

■世界の動向は「この方向」

 マツダの4倍以上の生産規模のトヨタがこの効果を得られるまでには、長い時間を要することだろう。また、一度整理整頓できても、すぐに変動していかねばなるまい。将来、これらの見込みが適切だったかが問われることとなる。EV・HV・PHV・FCVなど全方位で構えるトヨタとしては、どの様に整理するのかも大事なことだ。さて5年たつと勝負が見えてくるだろうか?

 3社連合になった日産においても、どのように立ち回るか大変興味あるところだ。もしかしたら、カルロス・ゴーン氏の去就の背景であるエマニュエル・マクロン大統領の野望が、コストダウンと平準化の障害となるかもしれない。組織の編成・運用は、それほど重要だということだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事