NEC、小売店での決済に電子タグやバーコード不要の物体認識技術を開発

2018年3月5日 21:55

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多数の商品を雑然と置いた状態での認識(写真:NECの発表資料より)

多数の商品を雑然と置いた状態での認識(写真:NECの発表資料より)[写真拡大]

 NECは5日、スーパーやコンビニなどの小売店で、決済時に必要な商品読み取りを大幅に効率化する技術として、生鮮品や日配品からパッケージ品まで、あらゆる小売商品を画像認識する多種物体認識技術を開発したと発表した。

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 世の中の動向を認識しつつ、敢えてその動向に準じない方策もある。今回発表のPOSレジがそうだ。

 経産省はコンビニ各社と共同で「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を2017年4月に策定。2025年までにコンビニ各社の全ての取扱商品に電子タグを利用することを合意。店舗レジやサプライチェーンでの高効率化を目指す。この実現の条件は、電子タグが1円程度になることだ。

 NECが着目したのは、サプライチェーンでの高効率化は犠牲にしても、電子タグやバーコードなしでも決済できるPOSレジだ。得意な画像認識技術を横展開した製品である。セルフレジでの自動決済が誰でも簡単にできるようになるという。

 その意図は、電子タグの価格が1円程度になっても低価格品での割高感があり、本格的な普及にはまだまだ時間がかかるとみている。加えて、生鮮品などではバーコードや電子タグの貼付ができず、特殊な操作が残るため完全自動化には制約もある。

●多種物体認識技術を用いたPOSレジの特長

 先ず、認識精度の高さであろう。自然物から工業製品まで特性の異なる多種多様な小売商品を高精度に認識できるという。写真を見て欲しい。雑然と置かれた商品から、例えば「おにぎり北海道産日高昆布」と正確に商品を認識している。

 この認識には、AIの深層学習技術であるディープラーニングとNECが得意とする特徴点マッチングの異なる二つの技術を融合。認識率が最大になるように各技術の配分を統制する。

 例えば、青果物などの生鮮品のように個体ごとに外観の違いが大きいものは、個体ごとの違いを吸収して判別できるディープラーニング技術を適用する。飲料やカップ麺などのパッケージ品のように酷似したデザインが大量にあるものは、デザイン配置の違いを判別できる特徴点マッチング技術を適用する。弁当などの日配品のように具材と商品ラベルの特性を併せ持つ商品は、両方の技術が適用し、その結果を統合して認識するといった具合だ。

 次に、多数の商品を雑然と置いた複雑環境でも頑健に認識できることだ。個々の商品の画像を機械学習することで、多くの商品が煩雑に配置された状態での認識を可能としている。

●セルフレジ(NEC、多種物体認識技術を用いたPOSレジ)のテクノロジー

 スーパーでセルフレジを見かける機会は多い。そのため、セルフレジを使用した経験のある人は多いであろう。購入商品が少なく、バーコードの位置がはっきりわかる場合は、確かに便利であるが、レジの係員と比べるとその処理速度は数倍以上だ。

 このレジ精算のみを扱うならば、多種物体認識技術をもつPOSレジは魅力だ。特定の商品の加工時間も認識できれば、商品割引のバーコード付与も不要となる。

 NECは、POSレジのデモシステムを、6日から9日まで東京ビッグサイトにて開催される「リテールテックJAPAN2018」に出展する。また、3月からNEC社内の小売店舗にて、決済業務の無人化の実証実験を行う。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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