電気代が高い理由は「再エネ賦課金」かも、意味を知っている人は17%

2018年1月4日 22:06

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(グラフ: トレンド総研の発表資料より)

(グラフ: トレンド総研の発表資料より)[写真拡大]

 一年の中で電気代が最も高い季節は?と問われれば、多くの人々が「冬」と答えるのではないだろうか。暖房などを使う機会が多いために、電気料金が確かに高い。だがしかし、この電気料金を左右しているのは「使用量」だけではなかった。実は、家庭の電気料金には、「再エネ賦課金(さいえねふかきん)」、正確には「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の費用が上乗せされているのだ。電気料金と密接に関係しているのがこの「再エネ賦課金」だ。実際に支払っている再エネ賦課金の額は、家庭に届く「電気ご使用量のお知らせ」(検針票)で確認可能だが、多くの人々が気にしていない・見過ごしているのが実情だ。

【こちらも】再生エネ買い取りの消費者負担、2050年度までの累計は94兆円との試算

 生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研が、「電気料金」「再エネ賦課金」をテーマに20~40代の主婦500名を対象に調査を行っている。

 まず、「冬は、他の季節に比べて、電気料金が高くなりやすいと思うか?」質問。主婦の85%が「そう思う」と回答。寒い冬の電気代は多くの家庭で高いと感じていた。そして、電気料金に上乗せされる「再エネ賦課金」について知っていた人はわずか17%、知らなかった人は83%だった。多くの人々が電気料金の仕組みを理解せずに支払っていた。

 「再エネ賦課金」について詳しく説明しよう。再エネ賦課金とは「FIT(固定価格買取制度)」にもとづいて設定されている。FITとは、太陽光や風力、地熱といった再生可能エネルギーの導入拡大を図ることを目的に国が定めた仕組みだ。この制度により電力会社は、再生可能エネルギーで発電された電気を、割高な価格で一定期間買い取ることが義務づけられている。買取ったその費用は「再エネ賦課金」として、企業や家庭といった電気の使用者が負担しているのだ。つまり、メガソーラーと呼ばれる大規模な太陽光発電所の電気も、住宅の屋根に太陽光パネルを載せて発電している電気も、つまりは、私たち国民負担というわけだ。

 2012年度の標準家庭の再エネ賦課金は月額「66円」、年間「792円」だったが、2017年度の標準家庭の賦課金は月額「792円」、年間「9504円」となっている。初年度の12倍と高騰を続けているのだ。

 電気料金などエネルギーの専門家・朝野賢司氏によると、再生可能エネルギーの買取価格は、火力や原子力などの発電コストと比べてかなり割高に設定されているとのことだ。再エネ賦課金は年々増大しており、現状の政策では将来にわたっても大幅に増加する見通しだ。2030年度の時点では最大で3.6兆円となる試算(電力中央研究所)が出ており、その家計の負担を消費税に置き換えると、約1.6%分と同程度になるそうだ。

 日本では太陽光などの再生可能エネルギーには「コストが割高」「発電量が不安定」などの課題が指摘されているが、アメリカやカナダ、欧州では自然エネルギーの発電コストは大幅に下がっており、原発や火力発電よりも安いと言われている。世界の常識と真逆を行く日本、なぜ高いのか?諸説あるようだが、太陽光・風力発電を設置する好立地な土地が少なく、あったとしても住宅や農地と取り合っているからという考え方がある。または、国内の太陽電池メーカーは価格が急激に下落することを防ぐために、談合のような値付けを行っている。適正な競争が働けば、本来価格は下がるはずとも言われている。

 「再エネ賦課金」は利用者が知らないうちに、年々上がっている。理想は再エネ賦課金の利用者負担を少なくし、なおかつ再生可能エネルギーの普及や発電が増えることだろう。それには技術革新などで太陽光発電所が、今よりはるかに安く建設できるようになる必要があるようだ。2018年度は、再生可能エネルギーについて多くの人が理解し、今一度現状の制度を改め直す年にしようではないか。(記事:久保圭大郎・記事一覧を見る

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