大王製紙がセルロースナノファイバーで自動車部品試作、CFRPがライバル

2017年12月15日 02:49

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大王製紙の「エコプロダクツ2017」ブース。(画像: 大王製紙の発表資料より)

大王製紙の「エコプロダクツ2017」ブース。(画像: 大王製紙の発表資料より)[写真拡大]

 12月7日~9日東京ビッグサイトで開催された「エコプロダクツ2017」で、大王製紙がセルロースナノファイバー(CNF)を配合した自動車部品を展示した。CNFは、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)と同様、自動車の軽量化に大幅な貢献を果たすはずと大注目の素材である。

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■クルマの軽量化を目指せば、燃費がよくなる
 燃費規制が激しくなるこれからであるが、すべてのクルマがEVにシフトするには時間がかかりそうである。そのため、ガソリン車をはじめHV、PHEVの車体の軽量化をスピードアップすれば、燃費を今より良くすることができるだろう。そこで現在、各社がしのぎを削っている。

 車重に対する燃費の良し悪しであるが、車格が上がり、出力(馬力)が大きいほど、車重の影響が鈍感になるようである。つまり、軽自動車の方が、軽量化することの恩恵を受けることになる。すると、ホンダ・新型N-BOXが80kgの軽量化を実現したことは、とても意味のあったことなのである。

■CNFのメリット・デメリット
 CNF(セルロースナノファイバー)は、今回製紙会社が試作したことでわかるように、自然由来のパルプをナノ化したものである。鉄の5分の1の軽さで、強度は5倍以上もある。一方、自動車素材として既に使用されているCFRP(炭素繊維強化プラスチック)は、鉄の4分の1の軽さで、強度は10倍といわれている。

 CNFのそのほかのメリットは、透明であり、熱を加えても膨張しにくく、粘りを出すこともできる。CFRPよりも加工のバリエーションが豊富になるだろう。例えば、CNFを樹脂に10%混ぜると、樹脂の弾性率が1.3~1.4倍に向上、強度も1.1~1.2倍に上がるという。衝突したときの衝撃を緩和してくれそうである。

 また、既存の成型機を使用することも可能で、製造工程が多いCFRPよりもコスト削減になるだろう。リサイクルについても簡単で、砕いて溶かせば元の物性に戻るという。再生可能な素材ということになる。

 ただデメリットもあり、CNFと樹脂を混ぜるには水と油を混ぜるようなもので、製造には困難を伴う。そのため、製造コストがまだまだ高い。その点はCFRPと同じである。すでに軽量化素材として幅広く使用され始めているハイテン(高張力鋼)は1kgあたり200円であるが、CNFは5000~1万円。しかし、新製法も編み出されており、1000円まで下げることが可能のようである。これが実用化できるようになれば、CFRPの3000円よりも安くなり、CNFが使用されるようになるかもしれない。

 まだまだ、クルマの軽量化についても新素材や新製法の出現があるかもしれない。目の離せないジャンルでもある。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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