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【EVショック】自動車産業の革命はEV・AIで起きるのではない 問題は部品点数減
電気自動車の普及が進めば、産業構造にも大きな変革が訪れる。[写真拡大]
■問題は部品点数が半減することだ
EV・AIに移行することは自動車製造業としては変化による特段の問題はないのだが、深刻なのは部品点数が半減することだ。それはすなわち「雇用が半減するかもしれない」ということになる。同じ台数のクルマをつくっても仕事がなくなるということだ。実際にはPHEVなどの生産は続き、一時は部品点数が増えることになるが、この変化が重くのしかかる。
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2040年までに完全EVに移行するとすれば、単純に計算して20年の間に2倍の台数を売り上げねばならないということになる。実際にはEVと言ってもゴルフ場のカートのようであると、部品点数は1/10程度であろう。テスラのような高級車なら、エンジンとその周辺がなくなるだけだ。意外に、ミッションは簡素化されてもなくならないようだ。
中国ではゴルフカートに近い簡素なEVが出回っているようだが、次第に安全性などを考えて、豪華仕様を加えてくるだろう。自動車の基本形は安全であるから、衝突強度や耐久性などはEVであろうがエンジン車であろうが変えることはできない。ボディデザインの革命はEVではなく、カーボンやポリマーなど材質の変化で起きてくるはずだ。それに伴って534万人と見積もられている労働者の業種変換が必要となってくるのだ。
日産自動車はエンジン開発をあきらめたのかと思いきや、ストローク変化型新型エンジンを開発してきた。これを10年で償却する気なのだろうか?技術開発から開発費償却のサイクルもカルロス・ゴーン氏は短縮することを考えているようだ。
■EV化の是非は発電方法が化石燃料でないことが前提
さらにEVシフトを複雑にしているのは、「大規模発電所から配電」する現在の形では、火力発電所を増設しないと電力不足に陥る危険が高い国が多いことだ。その時、熱効率でエンジンによる個別発電の方が優れていたとすると、またエンジンに逆戻りもあり得る。個別発電の強みは、ガソリンから水素にインフラ整備が追い付けば変えることもできることである。また、EV車への電力供給のためには高圧送電線の維持管理が必要であり、災害にも弱く、戦争にはめっぽう弱い。個別発電の方が有利なのではないかと常々思う。
熱効率の高いマツダのエンジンなどが量産に入ると、熱効率を正確に計算しなおさねばなるまい。原発政策をも巻き込んで、エネルギーをどこから得るのか?早急に展望することが先決だ。
■製造業の経営は投資業ではない
間違いないことは、EV化が進めば、自動車産業は534万人の雇用から300万人の雇用へ減少し、日本に「ラストベルト」が生じることだ。アメリカは製造業から金融業に転換してGDPそのものは向上させてきたが、日本も同じ道をたどることがトレンドに感じている経営陣は多い。
経済は国の「インフラ」とも考えられる基礎だ。製造企業の経営陣が自らのビジネスモデルを「金融業」と勘違いして「投資感覚」で経営にあたった結果が、「東芝」であり「SONY」であり「日産、神戸製鋼」であるのではないのか?
■自動車産業の革命はEV・AIで起きるのではない
「EV・AIにより自動車産業の革命が起きる」と現在言われているが、これは自動車にとって革命であるが「自動車産業としての革命」ではあるまい。自動車産業の革命は「フォード生産方式」から「トヨタ生産方式」に移行したことで起きているが、現在の進歩は「トヨタ生産方式」の発展形であり、「作り方革命」は起きていない。
EV化の手前で実際にはガソリン・ディーゼル・HV・PHEVなどが入り乱れて、部品点数が30%程度増える時期が来ると言われるので、単純ではないようだ。ハイブリッドではむしろ部品点数が増えることはわかるが、その先に来るのが部品点数の減少であると、生産能力の調整は容易ではない。自動車各社が、工場の集約、車種の整理などに取り組んでくるのは必然であろう。
その時の武器となるのは「生産技術の更新」である。より工数の少ない工程の組立ては設計から変えていかねばならず、「モジュール化」が現在切り札となっているようだ。また「ライン」から「屋台(セル生産)」に変えていくことで大幅な工数を削減できる可能性があり、これはEV・AIでなくとも変わらぬ変更点である。
問題は、PHEVなどを超えて「完全EV化による部品点数の減少」にある。自動車産業全体のボリュームが半減することで、社会的影響力を失う。それによって経済全体の中で変革が起きることだ。これは雇用を失うことで起きる政治問題であり、社会問題だ。政治と技術開発を切り離している金融関係者、経済学者の人々は、いま真剣にその論理を見直すことが必要であろう。自動車産業の代替産業が必要で、有力なのは「AIロボット産業」と見られてきた。
十分な時間はあるようで、まず「第4次産業革命」と言われているIoTに対応することであろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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