鉄道の保線作業、業界を超えた事例活用で人手不足解消を

2017年9月18日 07:09

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ドクターイエロー (c) 123rf

ドクターイエロー (c) 123rf[写真拡大]

 鉄道事業の基盤の一つが線路の保守・メンテナンスだ。最近、何かと脚光を浴びることの多くなった新幹線の保線作業車「ドクターイエロー」を中心に保守の作業実態はどうなっているのか見てみよう。

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 列車の走らない深夜は隅々まで診て回る時間帯である。脱線防止ガードを取り付けて回ったり、石を袋に詰めた「バラスト」と呼ばれる土嚢を線路の軌道に詰めて置いていく除雪作業もある。これらは脇を列車が走る昼間には出来ないため深夜に行われることの多い作業だが、昼間でなければ出来ない危険作業もある。例えば、実際に列車が走っている状態で線路の状態を目視点検して回ることや、車内に同乗して揺動測定器で揺れ方を測ること、線路のずれをミリ単位で定点観測する作業などである。積雪の初段階で積雪面をブラシで掃いておけば雪が積もりにくくなる智恵などは、実際の現場が生み出したものを他にも横展開したノウハウの一つであろう。

 さて、こうした作業、保線員が並んで線路を点検して回る姿を何かに重ねてみることは出来ないだろうか。例えば、昨今需要が増して、働く人が増えている「施工管理」の仕事がその一つと云えそうだ。建設施工管理は、人手に頼らざるを得ない仕事であり、モノとお金の管理が非常に難しい仕事だ。人手不足が叫ばれる昨今、こうした仕事をいかに人手に頼らずに建設プロジェクトの完成と維持管理を実現させられるか、一つのひな形を示すのも働き方改革のアプローチかも知れない。そして、鉄道事業の重要コア業務の一つである保線作業における人とモノの管理でも、参考にしてみると良いのではないかと考えられる。

 そのような視点で建設作業と保線作業に共通で活用・運用出来るロボットの例はここ数年ほどで出始めている。例えば、重量鉄骨の配筋作業は重量物を支える人や、作業する人など5、6人程度は必要な作業だったが、支えるだけの人の役割をロボットに置き換えている例がある。わかりやすい例だ。こうした考え方を鉄道の保線作業にも援用し、共通要素を括ってみると人手不足を解消しながら、作業員たちの報酬を十分確保出来るプロジェクト運営になるのではないだろうか。一案は、鉄道保線の拠点と建設用車両管理の拠点の共通運用化である。これを駐車場管理、カーシェアサービスのサイト運用から応用した姿で行うようにする。組織割りは、実態を反映した最適化させたものにするなどだ。あくまでも一案である。

 より良い理解のため同質の概念をグルーピングしてまとめてみるのは、いわゆる有名なKJ法以来、ものづくり現場をソフトに捉えるノウハウの知恵である。ひいては仕事内容、製品市場まで発展させれば、マーケティング活動の源泉になるものだ。重要度の高い内容の仕事・分野にこうした考え方を最適活用させて社会課題の解決に向けた道筋を見出して行きたいものである。(記事:蛸山葵・記事一覧を見る

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