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違法残業で新人女性を自殺に追いやった電通、労基法違反容疑で書類送検
働き方改革に取り組む電通だが、労働環境の改善はうまくいくだろうか?[写真拡大]
厚生労働省は違法に社員に長時間労働をさせた労働基準法違反容疑で4月25日、法人としての電通と中部(名古屋市)、京都(京都市)、関西(大阪市)3支社などを含む幹部たちを書類送検した。
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過労死と認定された高橋まつりさんの自殺に伴い、残業時間の過少申告が広がっているとみて行われてきた厚生労働省の捜査はこの書類送検で終わった。今後は検察が詰めの捜査を行い労働基準法違反の刑事処分を検討していくことになる。
■事件の発端となった高橋まつりさんの自殺
2015年12月25日、4月に入社したばかりの新入社員高橋まつりさん(当時24才)が電通の社員寮の4階から飛び降り自殺をした。10月以降仕事量が急増し1カ月の時間外労働が130時間に達していた。この頃高橋さんは友人や母親にツイッターなどで、仕事の苦しさを伝えていた。
「1日20時間とか会社にいるともはや何のために生きているのか分からなくなって笑けてくるな」
「本気で死んでしまいたい」
2016年9月30日、高橋さんの自殺は長時間労働によるうつ病が原因と判定され、三田労働基準監督署が労災を認定した。これに伴い電通に対する立ち入り検査が始まることになった。
■鬼十則が生んだ苛酷な社風
鬼十則は1951年に定められた行動規範で、電通のノルマ優先、利益優先の企業体質を育んできたものである。一部を紹介する。
「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは…」
高橋さんの事件以前にも電通は同様な事件を起こしていた。1991年8月27日、入社2年目の男性社員(当時24才)が自宅で自殺した。その頃1カ月あたりの残業時間が147時間もあり、酒席で上司から靴の中に注がれたビールを飲むようパワーハラスメントが強要されていたことなどが認定され、遺族へ1億6,800万円の損害賠償請求が裁判で認められた。
■「命より大切な仕事はない」今後を見守ろう
高橋まつりさんの母親は労災認定が認められた時にコメントを発表していた。
「娘は二度と戻ってきません。命より大切な仕事はありません。過労死が二度と繰り返されないように希望します」
これらの不祥事を受け、電通では2016年11月1日に「電通労働環境改革本部」を発足させた。二度と過労死を生まぬよう働き方改革、労働環境の改善に取り組むと発表している。三度目の過労死が起こらぬように見守っていきたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る)
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