「歌」題材の映画が大ヒット、なぜ今『シング・ストリート』が胸に刺さるのか

2017年3月28日 15:20

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80年代の時代背景だけでなく、その世界で生きようとする青年の群像劇を描く© 2015 Cosmo Films Limited. All Rights Reserved

80年代の時代背景だけでなく、その世界で生きようとする青年の群像劇を描く© 2015 Cosmo Films Limited. All Rights Reserved[写真拡大]

■『シング/SING』、『ラ・ラ・ランド』が日本でもヒット

 2017年3月から上演がスタートした『シング/SING』は、初週動員数において1位を記録し好調な発進となった。『シング/SING』以外にも『ラ・ラ・ランド』など音楽を取り扱った映画が近年目立つようになっており、どれも映画にうまく音楽を取り込んだ作品となっている。この傾向は2016年から出てきており、現在DVD販売やレンタルが行われている『シング・ストリート』も音楽を題材にした映画だ。

■2016年の隠れた名作『シング・ストリート』とは

 『シング・ストリート 未来へのうた』は、アイランド発の映画。映画の祭典の1つとなっているサンダンス映画祭でワールドプレミアを迎え、その後はアメリカやイギリスでも上映されて好評を得た。

 物語としては、不景気のあおりで私立から公立のシング・ストリート高校に転校にすることになったコナーが主人公。転校先の学校では校長やいじめっ子のバリーに目を付けられ、踏んだり蹴ったりのスタートを切ることになってしまうのだ。

 コナーが落ち込んでいると、モデルを目指すラフィーナという女の子と出会う。コナーは彼女と親密になりたいため、「ミュージックビデオに出演してくれ」と願い出る。しかし、バンドをした経験がないコナーはは、彼女を満足させるため楽曲作りとメンバー集めをすることになるのだ。

■逆境の中でも前進を続ける姿が魅力

 コナーは転校してそうそう校長とバリーに目を付けられるなど、さんざんな人生を歩むことになる。しかし、それにめげることなくロックの精神で立ち向かう姿が印象的である。

 コナーは兄のブレンダからさまざまなアーティストを紹介され、それに感化されていく。時代設定が80年代ということもあり、当時流行していたa-haやデュラン・デュラン、ザ・クラッシュなどの名曲が劇中に流れる。このアーティストの名前がわからなくても、どこかで耳にしたことがある曲ばかりだ。

 コナーはこれらのアーティストの曲を演奏するだけでなく、どんどん自分たちのバンド専用の曲を生み出していく。その過程が物語の中心となってくるのだが、不況の中でも自分らしくたくましく生きようとする姿は、胸が熱くなる展開である。

 中でも、映画のラストで演奏される校長や学校を揶揄した曲を披露する姿は必見もの。校長を模した面を配り、それを生徒たちが被って思い切り学校や校長に歌で抗議する。ただ批判をするのではなく、歌の力で学校全体の流れを変えようとする「ロッカー」らしいやり方が印象的である。

■音楽を通して「青春」を感じられる

 昨今では歌を扱ったり、音楽に力を入れている映画にヒット作が多い。これらすべての映画に共通していると感じることは、現状から打破しようとする力と歌がリンクしているところにあるのだろう。

 『シング/SING』や『ラ・ラ・ランド』にしても、「歌が素晴らしい」や「歌うことが好き」という表現は少ない。それよりも、歌を通して人間や各キャラクターに成長がみられる姿が中心になっている。

 『シング・ストリート 未来へのうた』も、不況の中でも自分たちの生き方を貫こうとしたヒューマンドラマである。今の時代だからこそ、こうした「歌」を題材にした映画を一度は観ていただきたい。

 『シング・ストリート 未来へのうた』はDVDは各取扱店舗にて販売中。また、レンタルなどもすでに行われている。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る

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