日産の電気自動車「リーフ」の走行距離が50km以上伸びた理由(わけ)

2016年3月27日 15:03

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記事提供元:エコノミックニュース

新しい日産のEV「リーフ」の駆動用電池のパッケージの寸法は従来型と同じだが、パワーは25%とほどアップした。新型の航続距離は280km、将来的に航続600kmを目指す

新しい日産のEV「リーフ」の駆動用電池のパッケージの寸法は従来型と同じだが、パワーは25%とほどアップした。新型の航続距離は280km、将来的に航続600kmを目指す[写真拡大]

 日産自動車は昨年末、同社の乗用車で電気自動車(EV)の「リーフ」をマイナーチェンジした。日産の説明によると、「この100%電気自動車“リーフ”は、走行中にCO2などの排出ガスを一切出さないゼロ・エミッション・ヴィークルとして、高い環境性能をもっている。同時に、高性能リチウムイオンバッテリーと電気モーターの搭載による、力強く滑らかな加速性能、あらゆる速度域で高級車のような静粛性能、優れた重量バランスによる高い操縦安定性、ガソリンに比べ安価な電気で走ることによる経済性の高さなどが、お客さまから高い評価を得ています。2010年の発売開始以降、現在までにグローバル累計で約20万台を販売しており、販売台数世界No1のEVとなっています」という。

 今回、初のマイナーチェンジを実施したが、最大のニュースは新しいバッテリーの搭載にある。新たに搭載した30kWh駆動用バッテリーは、高容量の新材料を使用し、従来のバッテリーパックサイズを維持しながら、リチウムイオンの高充填化と、バッテリー内部抵抗の減少を実現した。その結果、室内スペースを犠牲にすることなく航続距離が、280km(JC08モード)と50km以上向上するとともに、急速充電では24kWhバッテリーと同様に約30分で80%までの充電(バッテリー残量警告等が点灯した時点から充電量80%までの目安。充電時間は急速充電器の仕様、環境温度等により異なる)が可能となった。

 同社のEV-HEV技術開発本部の枚田典彦主管によると、「日産では、電圧範囲が広いリチウムイオンバッテリーは自動車の駆動用バッテリーに適しており、“将来は必ず主流になる”と見込んで、1992年から開発を進めていた。部品点数が少ないためコストに優れ、軽く薄く、クルマの形状に合わせた設計が容易なラミネート構造のバッテリーセルも日産が独自に開発した技術。バッテリーの開発は、実験や評価試験に時間がかかるが、他社に先駆けてリチウムイオンバッテリーに着目し、データを蓄積してきたことが、新しい30kWhのバッテリーにも活かされている」という。

 EV用のバッテリーは、大量のエネルギーを詰め込むため、衝突事故などの際に安全性の高さが担保されるべきだ。日産ではEVの安全性を「機械」「電気」「熱」の3種類に分類。衝突時の衝撃に耐えられるか、発熱しないか、発熱しても発火しないか、などのテストを行なっている。

 過酷なテストを重ねて開発を続けてきた結果、リーフは発売から5年間で計20万台以上をグローバルに展開し、過去1件もバッテリーに起因する事故は起きていないという。

 今回、新搭載した30kWhバッテリーは、耐久性も大きく上がった。結果、「8年16万km」までの容量保証を実現した。ちなみに、従来の24kWhバッテリー搭載車では、「5年間または10万km」保証だった。

 冒頭で登場した枚田典彦主管の説明によると、「30kWhとは、蓄えられる電気量の単位。そのバッテリーから取り出せるパワーは、瞬間的に200kWを取り出すことができる。これを馬力に換算すると約280馬力に相当する。新型リーフのバッテリーは最高峰のスポーツカー並みのパワーを持っている」という。

 EVの商品性をさらに高めていくためには、環境性能の高さも大切だ。が、0-100km/hの加速性能の向上などには、バッテリーのパワーをいかに瞬時に大きく取り出せるか、このあたりの性能向上がポイントとなる。自動車用バッテリーの開発おいて、瞬時のパワーを高めるためにいかに電池の内部抵抗を下げることが大きな課題で、そこをクリアできれば、その技術を活かしてEVだけではなく、ハイブリッド車などにも適用できる。

 日産は将来的に1回の急速充電で600km走れるバッテリーが実現させるとする。そうなれば燃費のいいガソリン車が1回の給油で走れる距離と同レベルになり、社会構造を大きく変える。今回、第一世代の日産リーフ発表後、5年の歳月をかけて進化した30kWhのバッテリーを搭載できるようになったことは、今後EVが進化していくうえで大きな1歩だ。(編集担当:吉田恒)

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