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【不動産業界の2015年3月期決算】景気回復で不動産需要全体が安定的に上向いて増収増益決算が多数を占める
5月14日、不動産大手5社の2015年3月期本決算が出揃った。全社が増収、最終増益だったが、三菱地所、野村不動産は営業、経常減益。それでも分譲も賃貸も、オフィスビルも商業施設もマンションなど住宅もおおむね好調に推移していた。
今期、2016年3月期の見通しは三井不動産、住友不動産、東急不動産は増収増益見通しで、野村不動産の最終減益は前期の特殊要因がなくなるためだが、三菱地所は前期の反動、物件売却の減少、再開発によるオフィスビルの閉鎖が重なって減収減益を見込んでいる。
■住宅への消費増税の影響を他の部門がカバー
2015年3月期の実績は、三井不動産<8801>は売上高0.9%増の増収、営業利益7.8%増、経常利益13.0%増、当期純利益30.4%増で、2ケタ最終増益は過去最高。年間配当は前期比3円増の25円だった。賃貸事業では「ららぽーと」など商業施設が快調で、分譲事業では個人向け住宅の利益率が高まり、投資家向けの物件も伸びた。
三菱地所<8802>は営業収益3.3%増、営業利益3.1%減、経常利益4.7%減、当期純利益14.1%増の増収、最終増益。年間配当は前期比2円増の14円だった。マンションの完成・引き渡しが2割減ったが、オフィス需要が回復し賃料も上昇傾向。大型物件の引き渡しがあり、新しい賃貸オフィスビルも稼働した。固定資産の売却益など特別利益を計上し、法人減税による繰り延べ税金負債を取り崩しで会計上の税金費用が減り2ケタの最終増益になった。
住友不動産<8830>は営業収益3.4%増、営業利益3.4%増、経常利益6.5%増、当期純利益15.6%増の増収増益。全て2期連続で最高益を更新した。3期連続の増収、5期連続の営業、経常増益。年間配当は前期比1円増の21円だった。完成工事、不動産流通の両事業は営業減益だったが、オフィスビル市況の改善が続く不動産賃貸、分譲マンションの販売が好調な不動産販売の両事業は増収増益になり、業績を押し上げた。
東急不動産HD<3289>は売上高8.3%増、営業利益3.0%増、経常利益2.2%増、当期純利益6.4%増の増収増益。年間配当は前期比5.5円増の10円だった。東京のオフィスビル「汐留ビルディング」「新宿アイランド」「新青山東急ビル」などが新たに稼働して賃料収入が伸び、「東急ハンズ」など商業施設の集客も底堅く推移した。空室率は2.8%の低水準。住宅事業は都市部の高級物件の引き渡しが減って減収減益だったが、用地売却益で補っている。
野村不動産HD<3231>は売上高6.6%増、営業利益3.2%減、経常利益0.6%減、当期純利益43.2%増の増収、最終増益。首都圏を中心にマンション販売が堅調で増収。部門採算の改善に加え、法人減税に伴う繰り延べ税金負債の取り崩しで会計上の税負担が減ったため最終利益は過去最高を記録した。年間配当は前期比10円増の45円だった。
■今期はオフィスビルも商業施設も住宅も順調
2016年3月期の通期業績見通しは、三井不動産<8801>は売上高5.3%増、営業利益4.8%増、経常利益4.7%増、当期純利益6.8%増の増収増益、過去最高更新を見込む。予想年間配当は前期比3円増の28円。賃貸事業は新たに「ららぽーと富士見」など複数の商業施設が開業し、引き続き稼ぎ頭。分譲事業も投資家向けの好調が続く見通しで、マンション販売の状況も都心部を中心に悪くないとみている。
三菱地所<8802>は営業収益10.4%減、営業利益13.6%減、経常利益15.1%減、当期純利益4.6%減の減収減益を見込む。予想年間配当は前期と同じ14円。物流施設などの物件売却の減少に加え、再開発によるオフィスビルの閉鎖で賃料収入も減少する見込み。大型物件の引き渡しが多かった前期の反動も出る。
住友不動産<8830>は営業収益5.4%増、営業利益4.9%増、経常利益5.7%増、当期純利益9.2%増で、4期連続の増収、6期連続の営業、経常増益を見込む。予想年間配当は前期比1円増の22円。完成工事、不動産流通、不動産賃貸、不動産販売の主要4事業全てで増収増益を目指す。不動産賃貸事業は、「住友不動産御成門ビル」、「住友不動産平河町ビル」の通期稼働などが業績に寄与。不動産販売事業は前期比149戸増の5500 戸の販売計上を見込んでいる。
東急不動産HD<3289>は売上高0.9%増、営業利益2.7%増、経常利益0.6%増、当期純利益5.0%増の増収増益を見込む。予想年間配当は前期比1円増の11円。国内の「都市事業セグメント」では投資家向けの物件売却益の減少が見込まれるが、海外で「次世代・関連事業セグメント」のプロジェクトが稼働して収益をあげる見込み。
野村不動産HD<3231>は売上高3.1%増、営業利益1.5%増、経常利益0.5%増、当期純利益1.1%減という増収、最終減益を見込む。予想年間配当は前期比5円増の50円。最終減益は、繰り延べ税金負債の取り崩しという2015年3月期の特殊要因がなくなるため。今期はスポーツクラブを運営するメガロスにTOBをかけて完全子会社化するなど、収益源の多角化を図る。(編集担当:寺尾淳)
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