日本の音楽業界はストリーミングサービスに対応できるか

2015年1月8日 15:54

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記事提供元:エコノミックニュース

日本の音楽業界は依然危機的な状況にある。音楽単体でCDやDVDを売ることは難しくなり、大手レコード会社も新たな一手が打ち出せていない。著作権の解決や、それでどう売上を立てていくかの戦略が見えないといった問題から、欧米などに比べストリーミング配信への移行は遅れている。

日本の音楽業界は依然危機的な状況にある。音楽単体でCDやDVDを売ることは難しくなり、大手レコード会社も新たな一手が打ち出せていない。著作権の解決や、それでどう売上を立てていくかの戦略が見えないといった問題から、欧米などに比べストリーミング配信への移行は遅れている。[写真拡大]

 2014年、日本の年間CDシングルランキングは1位「ラブラドール・レトリバー」、2位「希望的リフレイン」、3位「前しか向かねえ」(いずれもAKB48)で、すべて推定売上枚数は100万枚以上(オリコン〈4800〉調べ)だった。ちなみに4位と5位もAKB48。国内レコード会社売上では、完全にAKB48が所属するキングレコードの一人勝ち状態だ。

 しかしこの100万枚ヒット曲、AKB48ファン以外に口ずさめる人がどれだけいるだろうか。数年前まではミリオンヒットと言えば老若男女が口ずさめる曲か、少なくとも10~30代の多くは知っている曲だった。それが、ここ数年の握手券商法や限定盤商法で、ランキングや売上枚数は意味を持たないものになってしまった。

 それでも14年は、映画『アナと雪の女王』のオリジナルサウンドトラックが映画音楽としては驚異的な98万枚のセールスで年間アルバム2位(オリコン調べ)に入り、「Let It Go~ありのままで~」が子どもから大人まで歌えるヒットソングとなったことは救いだったと言えるだろう。

 こうしたランキングからも分かるように、日本の音楽業界は依然危機的な状況にある。音楽単体でCDやDVDを売ることは難しくなり、大手レコード会社も新たな一手が打ち出せていない。業界全体がCDからストリーミング配信へと進まなくてはならないが、著作権の解決や、それでどう売上を立てていくかの戦略が見えないといった問題から、欧米などに比べ配信への移行は致命的に遅れている。

 世界的にはCDからダウンロード、そしてストリーミングサービスによる配信へと音楽の聴き方・届け方は変わってきている。スウェーデン発のストリーミングサービス『Spotify』の台頭などによって、米アップルのiTunesは14年大幅に収益を落とした。15年、ますますストリーミングサービスは普及すると見られているが、日本への導入はまだ時間がかかりそうだ。事実、14年夏に予定されていた『Spotify』の日本進出は、国内大手レコード会社の楽曲提供拒否により頓挫している。ストリーミングサービスは提供元やミュージシャンへの収入が少ないという問題はあるとは言え、既得権益にしがみついて変化に踏み切れないレコード会社の体質がどんどん日本の音楽業界を貧しくしていっていることは否めない。

 日本の音楽業界がその中で希望を見出しているのが、従来のCD以上の高音質を実現したハイレゾ音源だ。オーディオマニアや熱心な音楽ファン、良い音を楽しみたい50代以上などをターゲットに、ハイレゾ対応のスピーカーやイヤホン、スマートフォンなどが14年秋~冬から数多く開発・販売されている。過去の名盤のハイレゾ化にも積極的だ。

 オーディオ業界も、若い世代がデジタル再生に慣れ音質に頓着しなくなってきたことから、近年は高年齢層向けの高音質商品に力を入れている。そうした流れからもハイレゾ音源の普及は受け入れられそうだ。しかし、その需要がどこまで広がるかには不安が残る。20~30代は、ハイレゾを楽しみたくても金銭的な負担からイヤホン、スマートフォンくらいしか手を伸ばさない可能性も高い。また、一般層にもある程度広がらなければ、ハイレゾ音源自体が一過性のブームで終わる危険もある。

 ミュージシャン側は数年前から、個人事務所などに移り、CD売上に左右されないようライブ中心に活動する傾向も強くなっている。聴き方の多様化、ジャンルの細分化はもはや止めることができない今、売り方や届け方も変わらなくては音楽業界の不況は15年も続くだろう。(編集担当:久保田雄城)

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