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【経済分析】どうすれば経済を予測できるのか(上)
【6月4日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
前回のブログで述べたように、経済を数式化することにより、あるいは従来の経済学の理論や分析手法を用いて将来の経済が予測できないとすれば、経済を予測できる方法が他に何かあるのでしょうか。
もしも経済が全くランダムに秩序なく動いているのだとすれば、経済を予測することは原理的に不可能となります。今景気が良くても、突然何かの拍子で悪化に転じてしまうとすれば、来年の景気が良くなるか悪くなるかは神様にしかわからず、景気予測は博打を打つのと変わらなくなります。エコノミストは馬券を当てることとさして違わない職業となってしまいます。
しかし、私自身の20年間にわたるエコノミストの経験から、「経済にはある秩序が存在し、その秩序を見出すことにより、経済予測は可能である」、と確信をもって言うことができます。
論より証拠で、私自身が行った一つの経済予測を例に、そのことについてお話したいと思います。
『おそらく、今回も景気後退が長期化すると考えれば、景気は現在中間反騰の局面に入っていると理解した方がよさそうである。中間反騰は本来長続きしないであろうから、何かのきっかけで再び底割れする可能性が高いであろう。その引き金を引くのは、やはりアメリカになりそうである。一見好調に見えるアメリカ経済も、歴史的なバブルの中にある。その転換点は定かではないが、ニューヨーク株式市場の暴落をきっかけに、世界経済はかなり厳しい状態に置かれそうだ。日本の株式市場は底割れする可能性が高く、景気は二番底に向かって再び下降を始めるであろう。…』(拙著『複雑系で解く景気循環』東洋経済新報社、237ページ)。
これは、日本経済が当時戦後最悪と言われた1998年の不況を脱し回復に向かいつつあった99年春、私が拙著『複雑系で解く景気循環』の中で日本の景気を予想したくだりです。
その後、景気はIT主導で予想以上に早く回復し、日経平均株価も98年10月につけた12,879円を底に急速に戻す展開となりました。輸出をてこに製造業の収益は急回復をみせ、それが設備投資の拡大を伴っていたことから景気回復の持続性に国民の多くが期待を寄せました。こうした期待を象徴するように、日経平均も2000年2月には2年半ぶりに終値で2万円の大台を回復しました。
しかし、経済企画庁(現在の内閣府)が景気の「自律回復宣言」を出した2000年3月、ナスダック市場の暴落をきっかけに米国経済は変調をきたし始めました。この時を境に過熱状態にあった米国の個人消費に急ブレーキがかかり、一方で半導体をはじめとしたIT関連産業では大規模な在庫調整が起き、やがてその影響は輸出の鈍化という形で日本経済に波及していきました。すでに2000年4月をピークに下落に転じていた日経平均株価は、景気の先行き懸念が高まる中、2001年3月についに98年10月の安値を割り込みました。そして、日本経済は2001年に再び急降下していくことになりました。まさに、拙著の中での予測が2001年に現実となったのです(参照の図)。
ここで断っておかなければならないのは、私が決して「2001年の景気」を予測したわけではなかったということです。設備投資がこれほど急速に拡大することも、日経平均が2万円台にのせることも、この時点で私は予想していませんでした。こうした景気の部分的、短期的な動きは正確には予測できないと最初から考えていたために、「アメリカ経済の転換点は定かではないが…」と率直に書かざるを得ませんでした。
私がこの時点で確信をもって言えたことは、99年に始まった日本の景気回復が長い調整途上の小休止にすぎず、再度の調整が必ず起きる必然性であり、また、そのきっかけが米国の株式市場の崩落にあるという因果関係でした。つまり、私が拙著の中で予想したのは景気の部分的、短期的な動きではなく、あくまでも「景気全体の大きな流れ」であり、そうした変化が現実に訪れたのが結果的に2001年であったということです。【続】
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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