踊育プロジェクトと、教育ビジネスの可能性

2013年11月9日 18:56

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記事提供元:エコノミックニュース

 2008年3月に文部科学省が告示した学習指導要領により、11年から小学校、12年からは中学校、そして今年13年度からは高校においても、表現運動・リズムダンスとしてダンス実習が体育に導入されている。これまでに無かった新しい授業であるため、教育現場ではヒップホップダンスなどを指導できるノウハウが整備できていなかったり、指導教師のダンススキルがまだ充分でないという学校も多いようだが、プロのダンサーを特別講師に招いて対応するなどの工夫で乗り切っており、児童や生徒たちにも概ね好評のようだ。

 ダンスは表現力やリズム感だけでなく、柔軟性やコミュニケーション能力も身につき、もちろん基本体力の向上にも役立つので、身体的にも精神的にも成長期にある子供たちにはうってつけの教育プログラムといえるだろう。

 そんな中、公益社団法人日本ストリートダンススタジオ協会(以下・NSSA)が進める「踊育」(ダンイク)プロジェクトへの注目が高まっている。踊育とは、「創造力」「自己表現力」「コミュニケーション能力」「家族とのコミュニケーション」「礼儀教育」「健康な体づくり」「生活の楽しみ」「グローバルな視野」などの、子供たちが生きていく上で必要なことをストリートダンスを通して学ぶというNSSAのコンセプトだ。NSSAではこれを基に、全国のダンススタジオと連携し、学校教員向けのダンス研修会や授業を実施したり、リズムダンスの講師を教育現場へ無償で派遣するなど、ダンス教育をサポートしてきた。

 この活動の注目すべき点は、一協会が単独で行っている社会貢献活動ではないということだ。まず、NSSAと共に踊育プロジェクトの中核をなしているのは、株式会社小学館集英社プロダクション(以下 ShoPro)、そしてユニバーサルミュージック合同会社。さらにここに、飲料メーカーのダイドードリンコ<2590>などが賛同し、普及活動の支援を行っている。ダイドーでは、継続的な社会貢献活動の実現を目的とした「地域コミュニティ貢献積立金」を設けているが、それを利用した社会貢献活動の一つとして、昨年より「踊育‐東北ダンスプロジェクト‐」を実施している。この取り組みは、東日本大震災で被災した子供たちに「ダンスを通して明るく元気になってほしい」との願いから実施されているもので、岩手県、宮城県、福島県の3県の小学校や幼稚園でダンス授業や、教員向けのダンス研修会が継続して行われている。つい先日も、11月6日に岩手県の陸前高田市立第一中学校の全校生徒249名を対象に、ヒップホップ世界チャンピオンのドミニク氏とヒッポホップバトル日本チャンピオンのシュン氏を特別インストラクターに迎えて、ダンス授業を実施している。

 また、このプロジェクトは教育現場だけに留まらず、エンターテインメントの分野にまで活動を発展させている。

 たとえば、10代に人気のダンス&ボーカルユニット・EXILEの妹分として注目を集めるガールズパフォーマングループ・Happinessの楽曲「We Can Fly」を踊育プロジェクトのオフィシャルソングに起用したり、ShoProとユニバーサルミュージックの連携を活かし、音楽、イベント、モバイルコンテンツなどはもちろん、アニメ、コミック、ゲーム、ファッション、マーチャンダイジングe-コマースなどへも、どんどんと幅を広げて、子供たちの興味を喚起していく見通しだ。

 「教育」と考えれば敷居が高くても、エンターテインメントという分野で考えれば、他の企業にとっても「踊育」はビジネスの一つとして参加しやすくなってくるのではないだろうか。利益最優先になってはいけないが、その方が「創造力」「自己表現力」「コミュニケーション能力」など、NSSAが掲げる8つのコンセプトをより具体的に推進するコンテンツも現れるだろう。

 英語教育などは、すでにビジネスとしては成熟している。そんな中、ダンスは新しい教育ビジネスの市場にもなりえるのではないだろうか。ダンスと教育の結びつきが新しい試みであるならば、教育とビジネスのあり方にも新しい可能性が生まれてもいいかもしれない。(編集担当:藤原伊織)

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