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エキスパートになっていくコンデジの存在
スマートフォンのカメラ機能向上などの影響もあり、成熟市場であるコンパクトデジカメは価格の下落が急速に進み、昨年も苦しい1年だった。
通信やアプリの充実などもあり、多くの役割をコンパクトな1台でこなすスマートフォン。カメラ機能もその1つとは言え、画質のクォリティの高さや、すぐに多くの人と画像を共有できる利便性はコンパクトカメラの市場に十分な脅威を与えてきた。GFKマーケティングサービス ジャパンが発表した2011年の家電及びIT市場の販売動向調査によると、デジタルカメラの市場はコンパクトデジカメが前年比10%のマイナスで、その厳しさを裏付けている結果となっている。
一方、コンパクトデジカメの現状とは裏腹に成長を続けているのがミラーレス一眼。同調査でも前年比45%増と順調に成長市場として位置付けられた。ミラーレス一眼は、一眼レフカメラのようにボディ内にクイックリターンミラーを装備しておらず、光学ファインダーも持っていない。そのために、大幅な小型化・軽量化が実現されており、なおかつレンズ交換もできるとあって、お手軽に本格的な写真を撮りたいユーザーを中心に人気が高い。富士キメラ総研の調査によると、レンズ交換式のデジタルカメラは高成長しており、特にミラーレス一眼の成長は著しく、2015年にはデジタル一眼レフの1700万台を抜き世界市場で1800万台に到達すると予測している。
このようにデジタルカメラの市場を見ていくと、1990年代半ばに市場に登場した頃は、デジカメ自体がコンパクトカメラで、そこからプロも使用する一眼レフデジカメが登場し2分化、さらにコンパクトデジカメは高機能・高級レンズを搭載するハイエンドユーザ向けのモデルを出すなど細分化の動きを見せる。さらに、一眼レフからは、その派生モデルとして2008年にミラーレス一眼が誕生し、今やデジタルカメラの市場は目的や用途に応じてカメラを細かく選ぶ時代に突入した。
その中でも、最もデジカメのカテゴリーで苦戦を強いられているコンパクトデジカメは、ますます細分化を強いられ、そのエキスパート性を前面に押し出すような商品が続々登場している。
ソニーが3月に発売する最新型のサイバーショット「DSC-TX300V」はWi-Fi機能を搭載し、スマートフォンをはじめ、様々な機器と連携を実現している。これにより、写真の共有、鑑賞など撮影後の楽しみも拡充し、また、GPS・コンパスも搭載しており、ワイヤレスで多彩な楽しみ方を実現することが可能だ。現在、売れ筋のコンパクトデジカメでもニコン独自のAF機能などを搭載したハイスペック機COOLPIX「S8200」やキャノンの薄型ボディで高倍率のIXY「600F」などフルオートでの画質の良さが高い評価を得ているモデルや、高速撮影機能が売りのカシオハイスピードエクシリムシリーズなど、ある機能に特化した高性能さが認知されヒットしているケースも少なくない。
このような現象は、ミラーレス一眼でも起こる可能性がある。先日、発売されたばかりの富士フイルム「X-Pro1」はミラーレス一眼の中で高額に位置するモデルで、店頭では15万円前後(ボディのみ)。同社は「最高峰の画質と質感でミラーレス一眼の概念を変える」としており、このような一線を画すモデルが今後も数多く登場すれば、同カテゴリーが細分化していくのも時間の問題だ。
デジタル写真の楽しみ方は、スマートフォンの進化と伴に今後も様々に変化していくだろう。エントリーモデルであるコンパクトデジカメには、その流れを意識しながら、一芸に秀でた機能を搭載させていくことで、細分化された市場を生き残っていく可能性が見えてくるのかもしれない。
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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