世界初、チームの共通認知をチャットメッセージからAIでリアルタイムに推定し、チーム状態の変化を可視化できる技術を開発

プレスリリース発表元企業:株式会社NTTドコモ

配信日時: 2026-04-10 11:00:00

~Human Computer Interaction分野の難関国際会議「CHI 2026」に採択~



 株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)と国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学(以下、NAIST)は、企業が効率的な働き方による事業成長をめざすにあたり、チームが高いパフォーマンスを発揮するために重要とされるShared Mental Model(以下、SMM)をSlackやMicrosoft Teamsなど日常のビジネスチャット上のメッセージからAIでリアルタイムに推定する技術(以下、本技術)を世界で初めて
※1開発しました。また、本技術の研究開発に関する論文がHuman Computer Interaction分野※2の難関国際学会「ACM CHI conference on Human Factors in Computing Systems (以下、「CHI
2026」)※3」に採択されました。

 各企業における業務内容が高度化し、複雑性が増す現代において、チームが効率的にパフォーマンスを発揮するには、チームメンバーが「仕事の進め方」、「役割分担」、「お互いの得意・不得意」についてどれだけ共通の認識を持っているかを表す指標であるSMMスコア※4を継続的に把握して高いレベルで維持することが重要とされています。一方で、SMMスコアの主な把握方法は専門家によるアセスメントやアンケート調査であるため、準備や実施・分析に一定の時間や労力がかかるうえ、結果が得られるまでにタイムラグが生じやすく、日々変化するチーム状態を継続的に把握することが難しいという課題がありました。

 今回両者が開発した本技術は、ドコモが独自に開発したグラフニューラルネットワーク※5(以下、
SMM推定エンジン)を用いてチームが日常業務で利用しているSlackやMicrosoft Teamsなどのチャットツールのメッセージを解析することにより、チームのSMMスコアをリアルタイムに推定し、チーム状態の変化を可視化するものです。チャットツールのメッセージを複数のAI(LLM)によって「情報共有」、「質問」、「感謝」など11カテゴリに分類し、その後特定カテゴリのメッセージがチーム内で誰から誰にどのように伝達されているかという指向性をSMM推定エンジンで解析することで、チームの
SMMスコアを自動的に算出します。本技術では従来の手法のようにアンケート調査をする必要がないため、コストやチームメンバーの時間・労力といった負担を軽減し、リアルタイムに継続的なモニタリングをすることが可能になります。また、専門家によるアセスメントのように人が介在しないため、チームメンバーの発言内容を他者が個別に確認・評価することなく分析でき、プライバシーが守られるという秘匿性の高さも特長としています。

[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/118641/800/118641-800-806f62dd302a175b1df9be54350cb5cd-1490x658.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
                      図1. 本技術の利用イメージ

 本技術を活用することで、チームのマネージャーやリーダーは自チームのSMMスコア低下をリアルタイムに把握できるようになり、SMMスコア向上にむけた前提知識の共有や目的の再確認といったコミュニケーション施策を適切なタイミングで行うことが可能になります。また、チームに新しいメンバーが参画した際にも、時間の経過とともにSMMスコアが上昇傾向にあるか、すなわちオンボーディングがうまくできているかを把握することもできます。

 本技術の開発および有効性の検証のため、ドコモ社内において実際にビジネスチャットのデータを用いた実証実験を実施したところ、メッセージの内容、カテゴリ、指向性の3つの情報をあわせて分析する本技術を活用することで高精度なSMMスコアの推定が可能になることが確認できました。今後は、ドコモ以外の企業や組織での実証実験を通じて本手法のさらなる性能向上や技術検証を行う予定です。

 今後も両者は、本技術によってチームが効率的にパフォーマンスを発揮できる働き方を実現し、多くの企業の事業成長や生産力向上に寄与することをめざしてまいります。

 なお、本技術に関する論文について、2026年4月13日(月)から4月17日(金)にスペイン・バルセロナで開催される国際会議「CHI 2026」で発表する予定です。

【論文タイトル】
Estimating Shared Mental Models via Communication-Categorized Directed Graphs

【著者】
田中 宏昌(NTTドコモ 総務人事部 兼 クロステック開発部)
山田 渉(NTTドコモ サービスイノベーション部 担当課長)
落合 桂一(横浜市立大学 データサイエンス学部 准教授、NTTドコモ モバイルイノベーションテッ
      ク部 主査)
Shaowen Peng(奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 助教)
若宮 翔子(奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 准教授)
荒牧 英治(奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 教授)

※1 2026年4月10日時点、ドコモ調べ
※2 Human Computer Interaction(HCI)分野とは、人間とコンピュータの相互作用を促進する情報科学の研究分野の一つです。現代では、スマートフォンやタブレット端末など、人間とコンピュータとの情報のコミュニケーションのほとんどがHCIと関連しています。
※3 ACM CHI conference on Human Factors in Computing Systems (CHI 2026)とは、人とコンピュータの関係を研究する分野(HCI)の世界最大級かつ最難関の国際会議です。毎年開催され、IT企業や大学の研究者が、UI/UX、AIと人間の関係、デジタル社会のあり方などについて最新の研究成果を発表します。採択率は非常に低く、論文が採択されることは、その分野で高い評価を受けたことを意味します。
※4 SMMスコアが高いチームではチーム内でのさまざまな共通認知が形成されており、いわゆる阿吽の呼吸で効率的に仕事を進めることができ、SMMスコアが低いチームでは業務に関するさまざまな前提知識の共有ができておらず、お互いの認識確認に時間を要して効率的に業務を進めることが難しいとされています。
※5 グラフニューラルネットワーク(GNN)とは、人やモノ同士の「つながり(ネットワーク構造)」をそのまま扱って学習するAI技術です。例えば、SNSの友人関係や企業内のコミュニケーションのように、「誰と誰が関係しているか」という構造を考慮しながら、影響関係や特徴を解析できます。
 
別紙               実証実験の概要

 1. 目的
 本技術が、従来のアンケート調査に代わってチームのSMMスコアを高精度に推定できるかを検証するため、ドコモ社内における実際のビジネスチャットデータを用いて性能評価を実施しました。

2. 具体的な実験内容
(1) 対象
ドコモの研究開発部門に所属する16チーム(計286名)

(2) 利用データ
各チームのSlack上のメッセージ(合計約17,500件)および、チームメンバーに対して実施したSMMアンケート調査の結果
<SMMアンケート調査の内容>
SMMアンケート調査には、国際的に標準化されたSMM測定尺度(5-PSMMS※1)を使用し、「仕事の進め方」「役割分担」「コミュニケーション方法」「お互いの能力」「スケジュール管理」の5つの観点から、チーム内でどれだけ共通の認識が形成されているかを数値化しました。

(3) 評価方法
1. 16チームのうち1チームを評価用として残し、残りの15チームのデータをSMM推定エンジンに学習させ、評価用の1チームのSMMスコアを推定
2. 16チーム全てに対して順番に1.のSMMスコア推定を行い(「leave-one-out cross-validation」と呼ばれる方法)、SMM推定エンジンによる推定値とアンケートによる実測値の誤差を測定
3. 誤差の大きさはRMSE※2という指標で評価(値が小さいほど、アンケート結果に近い正確な推定ができていることを示す)

(4) 本技術の優位性の検証における比較手法
メッセージの内容、カテゴリ、指向性の3つの情報を考慮することで精度の高いSMM推定性能を発揮するという本技術の優位性を検証するため、以下の3つのモデルとの比較を実施しました。
・モデル1:メッセージの内容は考慮するが、カテゴリと指向性は考慮しないモデル
・モデル2:メッセージの内容とカテゴリは考慮するが、指向性は考慮しないモデル
・モデル3:メッセージの内容と指向性は考慮するが、カテゴリは考慮しないモデル

3. 本実証の結果
(1) 評価結果
各モデルにおけるSMM推定エンジンによる推定値とアンケートによる実測値の誤差(RMSE)は以下のとおりです。SMM推定エンジンのRMSEが最も小さく、全ての比較手法を上回る最高の精度を達成しました。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/118641/800/118641-800-c86046a15c979c832faea19f8f6cc28e-3900x756.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


(2) 評価から得られた知見
1. メッセージのカテゴリを考慮することがSMM推定において重要であること
メッセージのカテゴリを考慮したモデル2の評価結果は、カテゴリを考慮しないモデル1の評価結果を大きく上回っており、メッセージを「情報共有」「質問」「感謝」などの種類に分類して分析することの有効性を確認しました。

2. メッセージの指向性を考慮するだけでは効果が限定的であること
メッセージのカテゴリを考慮せず、メッセージの指向性を考慮するモデル3の評価結果は、カテゴリおよび指向性の両方を考慮しないモデル1とほぼ同じ精度にとどまりました。「誰から誰へ」という指向性の情報だけでは、SMMの推定精度は向上しないことが確認できました。

3. メッセージの内容、カテゴリ、指向性の3つの情報を組み合わせることで最高の精度が得られること
メッセージの内容、カテゴリ、指向性の3つの情報を組み合わせて分析する本技術が、全ての比較モデルを上回る精度を達成しました。この結果から、メッセージで「何が話されているか(メッセージのカテゴリ)」および「誰から誰に伝わっているか(指向性)」の両方を考慮することが、チームの共通認識を正確に推定するために不可欠であることを確認しました。

※1 以下の論文で提案されている測定方法です。
van Rensburg JJ, Santos CM, de Jong SB and Uitdewilligen S (2022) The Five-Factor Perceived Shared Mental Model Scale: A Consolidation of Items Across the Contemporary Literature. Front. Psychol.
12:784200. doi: 10.3389/fpsyg.2021.784200
※2 RMSE(Root Mean Square Error:二乗平均平方根誤差)とは、推定値と実測値のずれの大きさを表す指標です。値が小さいほど推定の精度が高いことを意味します。

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