テスラAI5、NVIDIA比「電力効率2〜3倍」は実現するか―OpenAI「ハラペーニョ」との違いを検証

2026年8月28日 10:25

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記事提供元:Tech Times

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米テスラの最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏は、開発中の次世代推論チップ「AI5」について、自動車や人型ロボットでの推論処理ではNVIDIA製チップの2〜3倍のワットあたり性能を発揮し、コストは約10分の1になるとの見通しを示した。いずれもマスク氏による性能とコストの予測であり、比較対象や測定条件の詳細は公表されていない。第三者が確認できるAI5のベンチマーク結果も、現時点では公開されていない。

■マスク氏が掲げる「電力効率2〜3倍、コスト10分の1」

マスク氏は、投資家のロン・バロン氏との対談で、AI5について「自動車とロボットの推論レベルでは、ワットあたり性能がNVIDIAより少なくとも2〜3倍高くなるだろう」と述べた。コストについても、NVIDIA製チップのおよそ10%になるとの見方を示した。

AI5は、学習済みのAIモデルを使って認識や判断を行う推論処理に重点を置いた独自チップである。テスラは、自動運転支援システムや人型ロボット「Optimus」など、自社で用途を把握できる処理に合わせてハードウェアを設計することで、消費電力とコストの削減を目指している。

一方、マスク氏の発言からは、どのNVIDIA製品を比較対象にしたのか、同じモデルや精度、遅延条件で測定したのかは分からない。AI5の数値は、現段階では実測によって確認された性能ではなく、テスラが目指す設計上の位置付けとして捉える必要がある。

■OpenAIのJalapeñoが示した推論専用チップの強み

同じ時期にOpenAIは、ブロードコムと共同開発した初の独自推論チップ「Jalapeño(ハラペーニョ)」の測定結果を公表した。SemiAnalysisの公開ベンチマーク「InferenceX」を使った比較では、GPT-OSS 120B、DeepSeek R1、Kimi K2.5の3モデルにおいて、比較対象となったシステムに対するピーク時のワットあたりAI処理量が1.5〜1.9倍となった。

この測定はOpenAIの研究施設で実施され、SemiAnalysisの技術者が測定に立ち会った。OpenAIによると、要求の処理開始から応答完了までの遅延も比較対象より1.7〜3.6倍短くなり、応答性を重視する条件では2.1〜4.1倍の性能を記録したという。

Jalapeñoの結果は、対象となるモデルや処理方法に合わせて設計した推論専用ASICが、汎用性を備えたGPUシステムより高い電力効率を示し得ることを具体的な測定値で示している。ただし、これはOpenAIのデータセンター向けシステムをNVIDIAのBlackwell世代などと比較した結果であり、テスラの車載・ロボット向けAI5を直接評価する基準値ではない。

■データセンターと車載機器では比較条件が異なる

Jalapeñoは、大規模なデータセンターでAIサービスを提供するための推論プラットフォームである。これに対してAI5は、自動車やロボットの内部でカメラなどの入力を処理し、限られた電力と放熱能力の範囲で動作することを想定している。

データセンターでは、ラック単位の電源、冷却設備、ネットワークを含めたシステム全体の処理量や消費電力が重要になる。自動車やロボットでは、演算装置だけでなく、センサー、通信機器、駆動系などにも電力を配分しなければならない。このため、ワットあたり性能はAI5の設計を左右する中心的な指標となる。

専用ASICは、利用するモデルや演算形式を絞り込むことで、不要な機能を減らし、特定の処理を効率化できる。AI5とJalapeñoには、用途に合わせてチップ、ソフトウェア、システムを一体で最適化するという共通構造がある。ただし、用途と測定条件が異なる以上、Jalapeñoの結果からAI5の「2〜3倍」を裏付けることはできない。

■AI5の設計は完了、量産までには検証工程

テスラは2026年4月、AI5の最終設計を完了したと明らかにした。テープアウトは、製造に必要な設計データを確定し、半導体受託製造会社へ引き渡す工程を指す。ここから試作、動作確認、性能評価、製造工程の調整を経て量産へ進む。

AI5については、サムスン電子とTSMCが製造に関わると報じられている。サムスン向けの設計は同社の2nmプロセスに合わせて調整され、テキサス州テイラーの工場で製造される計画が伝えられている。ただし、この情報の一部はサムスンの技術者がLinkedInに掲載後、削除した投稿などに基づいており、製造開始や量産規模を示す正式発表とは区別する必要がある。

サムスンは、2nmプロセスでGAAと呼ばれるトランジスタ構造を採用している。電流が流れるチャネルをゲートが取り囲む構造により、微細化に伴う電流制御の難しさを抑え、性能と電力効率の改善を図る技術である。同社はテイラー工場への初期投資額を170億ドルとしており、顧客向け生産を2027年に始める方針が報じられている。

一方、サムスンの2nmプロセスに関する具体的な歩留まりは同社から公表されていない。約60%に達したとの数字は業界関係者などに基づく報道値であり、AI5そのものの製造歩留まりを示すものでもない。マスク氏が掲げる低コストを評価するには、実際のチップサイズ、良品率、パッケージ、メモリ、基板を含む製造コストを確認する必要がある。

■DojoからAI5へ開発資源を集中

テスラは、AIモデルの学習を目的として独自スーパーコンピューター「Dojo」を開発してきた。しかし、2025年8月には開発チームを解散し、一部の人員を別のプロジェクトへ移したと報じられた。

マスク氏はバロン氏との対談で、DojoとAI5の開発がそれぞれNVIDIAと競争できる見通しに達していなかったため、両者の開発資源をAI5へ集約したと説明した。テスラはAIモデルの学習では引き続きNVIDIA製品を利用しながら、自動車やロボットでの推論には自社設計のAI5を使う方針である。

開発の一本化は、人材や資金を重要な設計に集中できる一方、テスラの次世代AIハードウェア戦略がAI5の完成度と量産計画に強く依存することも意味する。試作チップの性能が目標に届くか、異なる製造工程で作られたチップに必要な互換性を確保できるかが今後の焦点となる。

■判断材料は実機性能、比較条件、量産コスト

AI5の「NVIDIA比2〜3倍」という主張を評価するには、まず動作する試作チップでテスラの想定する処理を実行し、消費電力、処理速度、遅延、精度を測る必要がある。さらに、比較対象となるNVIDIA製品と同じ条件を設定し、第三者が再現可能な測定方法を示すことが求められる。

コストが約10分の1になるとの主張も、単純なチップ単価だけでは判断できない。必要なチップ数やメモリ、基板、冷却、開発費を含め、同じ処理を実行するシステム全体で比較する必要がある。

Jalapeñoの測定結果は、特定用途向けの推論ASICが電力効率と応答速度の両面で優位性を持ち得ることを示した。AI5も同じく、用途を限定したハードウェアとソフトウェアの協調設計を目指している。マスク氏の数値が実際の製品で達成されるかは、AI5の試作評価と比較条件の公開を待つ必要がある。

■注目ポイントQ&A

●AI5の電力効率がNVIDIA製品の2〜3倍という主張は実証されていますか?

実証されていません。マスク氏が示した予測であり、比較したNVIDIA製品、測定対象の処理、消費電力の算定範囲などは公表されていません。第三者による公開ベンチマークも確認されていません。

●Jalapeñoの結果はAI5の性能を裏付けるものですか?

直接の裏付けにはなりません。Jalapeñoはデータセンター向け、AI5は車載・ロボット向けで、電力条件や処理内容が異なります。一方、利用目的に合わせた推論専用ASICが電力効率を高められるという設計上の発想には共通点があります。

●AI5の量産は始まっていますか?

AI5は最終設計を製造側へ渡すテープアウトの段階を終えていますが、テープアウトは量産開始を意味しません。試作、動作確認、性能評価、製造工程の調整などを経る必要があります。

●AI5はいつテスラ車に搭載されますか?

テスラは一般向け車両への具体的な搭載時期を正式に確定していません。2027年以降の量産や、Optimusなどへの先行投入が報じられていますが、市販車への搭載時期は製造と検証の進捗に左右されます。

●テスラのDojo計画はどうなりましたか?

Dojoの開発チームは2025年に解散したと報じられています。マスク氏は、DojoとAI5に分かれていた開発資源をAI5へ集約したと説明しています。

元記事: Tesla AI5 Claims 2-3x Nvidia Efficiency; Jalapeño Offers Closest Comparison

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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