Star CatcherとAetheroが宇宙電力契約、10月打ち上げ予定の軌道上AI「Titan」に続く基盤整備へ

2026年8月25日 23:37

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記事提供元:Tech Times

Aethero Purchases Power From Star Catcher To Actualize Advanced Computing In Orbit (Star-catcher.com)

Aethero Purchases Power From Star Catcher To Actualize Advanced Computing In Orbit (Star-catcher.com)[写真拡大]

宇宙空間で高性能コンピューティングを運用するには、演算装置だけでなく、それを動かす電力と、発生した熱を逃がす放熱設備が必要になる。宇宙向け電力インフラを開発するStar Catcher Industriesと、軌道上コンピューティング企業のAetheroは2026年8月24日、将来の宇宙データセンターなどに電力を供給する電力購入契約(PPA)を締結したと発表した。

Aetheroは次世代計算モジュール「NxA-ECM」を搭載する「Titan」ミッションを2026年10月に打ち上げる計画だ。一方、Star Catcherの軌道上送電網はまだ運用を開始しておらず、今回の契約はTitanへ10月から電力を供給するものではない。両社のネットワーク拡大に合わせ、今後数年かけて段階的に利用を始める計画である。

■将来の軌道上計算基盤に向けた電力購入契約

今回の契約でAetheroは、Star Catcherが公表する主要商用顧客として10社目となった。同社によると、締結済みPPAによる受注残高は6,000万ドル(約95億4,000万円、1ドル=159円換算)を超えた。契約する電力量、価格、供給開始時期などの詳細は公表されていない。

Star Catcherは、複数の衛星で構成する「Star Catcher Network」を軌道上に構築し、顧客衛星へ必要に応じて電力を届けるサービスを計画している。Aetheroはこのネットワークを、将来展開する宇宙データセンターやコンテンツ配信ネットワークの電力源として利用する方針だ。

衛星は通常、想定される最大消費電力に対応できる太陽電池アレイと、地球の影に入る期間を補うバッテリーを自ら搭載する。計算処理能力を高めれば消費電力と発熱も増えるため、太陽電池、バッテリー、放熱器、計算装置の間で質量や表面積を配分しなければならない。

Star Catcherの構想は、ピーク時に必要な電力の一部を外部から受け取れるようにし、顧客衛星が搭載する発電・蓄電設備の設計自由度を高めるものだ。同社は、太陽電池アレイを小型化できれば衛星の断面積や質量を抑え、その分を計算装置や放熱設備などへ振り向けられると説明している。

■既存の太陽電池パネルを受電面として利用

Star Catcher Networkは、光を使って離れた衛星へエネルギーを送る「光給電」を採用する。同社の計画では、軌道上で集めた太陽エネルギーを、宇宙機に使われる太陽電池が効率よく変換できる波長の光へ整え、高精度な追尾装置で顧客衛星の太陽電池パネルへ照射する。

受信専用のアンテナや独自の受電装置を追加するのではなく、顧客衛星がすでに備える太陽電池パネルを受電面として使う点が特徴だ。Star Catcherは、対応する衛星で通常の太陽光を受ける場合の2倍から最大10倍の電力を必要時に生成できるとしているが、これは同社が目標として掲げる性能であり、軌道上での送電性能は今後の実証対象となる。

同社は2025年、米フロリダ州のNASAケネディ宇宙センターにあるSpace Floridaの打ち上げ・着陸施設で地上試験を実施した。発表によると、1kmを超える距離で市販の太陽電池パネルへ1.1kWを超える電力を送り、試験期間全体では10MJを超えるエネルギーを供給した。

この試験は地上で行われたものであり、軌道上では送電側と受電側がともに高速で移動する。対象を捕捉し、細いビームを正確に向け続ける追尾・指向技術が重要になる。Star Catcherは2026年中に初の軌道上光給電実証を行う計画で、商用ネットワークの運用時期はまだ示していない。

■Aetheroの「Titan」は10月打ち上げ予定

Aetheroは、軌道上でセンサーデータを処理し、地上への送信量や処理待ち時間を減らす計算基盤を開発している。2024年8月には最初の実証衛星「Deimos」をSpaceXのTransporter-11で打ち上げ、NVIDIA Jetson Orinを使った計算モジュールの運用試験に着手した。

2026年3月30日には、2機目となる小型衛星「Phobos」をSpaceXのTransporter-16で打ち上げた。PhobosはNVIDIA Jetson Orin NXを搭載し、Aetheroが公表するAI演算性能は最大157TOPSである。複数顧客のアプリケーションをコンテナ化して実行し、地球観測や軌道上での自律処理を検証する位置付けとなる。

これに続くTitanは、Aetheroと衛星メーカーのEnduroSatが進める、より大規模な実証ミッションだ。2026年10月の打ち上げを予定し、EnduroSatのESPAクラス衛星「FRAME-15」にAetheroの次世代計算モジュール「NxA-ECM」を搭載する。

NxA-ECMは、NVIDIAのBlackwellアーキテクチャを採用したJetson Thorを基盤とする。Aetheroによると、各モジュールは4,000TFLOPSを超える演算性能を持ち、Kubernetesベースのソフトウェアによって複数モジュールをクラスタ化することで、Titan全体では最大1万6,000TFLOPSを目指す。

この数値はAetheroが示す設計上の演算性能であり、軌道上での持続性能や利用できる処理精度、消費電力、熱設計を含む実運用性能はTitanで検証される。同社は、リアルタイム推論、自律的な衛星タスク管理、複数ノードにまたがるデータ処理などを想定している。

FRAME-15は最大3.4kWのピーク電力に対応する。Titanはまず衛星自身の電力システムを使って計算基盤を実証する計画で、今回のPPAに基づくStar Catcherからの受電がTitanの10月のミッションに組み込まれるとは発表されていない。

■民生半導体を使うための耐障害設計

Aetheroは、専用の耐放射線半導体だけに依存するのではなく、民生品を含む高性能な半導体と、ハードウェアおよびソフトウェアによる障害対策を組み合わせる「radiation-hardening-by-system-design」を採用している。

公開されたTitanの設計には、処理状態を保存して障害後に再開するチェックポイント、誤り訂正、メモリ内容を定期的に検査・修正するスクラビング、ファイルシステムの耐障害化などが含まれる。高性能な市販半導体を活用しながら、放射線によって生じる一時的なビット反転や処理障害の影響をシステム全体で抑える考え方だ。

Titanでは、Blackwell世代のJetson Thorを使った複数の計算ノードが軌道環境で安定して動作するか、障害対策を含むソフトウェア基盤が処理を継続できるかが重要な検証項目となる。

■計算能力と同時に必要となる放熱面積

宇宙空間の熱設計では、地上のデータセンターのように周囲の空気へ熱を逃がすことができない。装置内で熱を運ぶ流体や伝導部品は利用できるが、衛星の外へ最終的に熱を放出するには放熱器からの熱放射が必要になる。

計算装置の消費電力が増えるほど廃熱も増え、より大きな放熱面積が求められる。太陽電池アレイと放熱器は、ともに衛星の質量、展開面積、姿勢、打ち上げ時の収納容積を使うため、軌道上コンピューティングでは電力と放熱を一体として設計する必要がある。

Star Catcherは、ピーク電力を外部から補えるようになれば、太陽電池アレイを最大負荷だけに合わせて大型化する必要性を減らし、利用可能になった質量や面積を放熱器へ配分できると説明する。電力をどの方向から受けるか、放熱器を低温側へどの程度向け続けられるかなど、衛星全体の姿勢設計にも選択肢が増えるという。

同社の内部試算では、ピーク電力を軌道上電力網へ移すことで、軌道上コンピューティング事業の収益規模を1.9倍から3.5倍にできるとしている。この数値は同社独自のモデルに基づく予測で、独立した監査や、稼働中の商用ネットワークによる検証を経たものではない。

■契約が実運用へ移るまでの二つの段階

Aetheroとの契約は、すでに運用中の電力網から直ちに電気を購入する契約ではなく、Star Catcher Networkの構築を前提とした将来の供給契約である。発表時点では供給量や単価、実際のサービス開始日は明らかにされていない。

直近では、Aetheroが2026年10月に予定するTitanの打ち上げと、Star Catcherが同年中に計画する軌道上光給電実証が、それぞれ別の技術的節目となる。Titanは大規模な分散計算と耐障害設計を検証し、Star Catcherの実証は移動する宇宙機間での捕捉、追尾、光給電を試す。

Star Catcherは2026年5月、6,500万ドル(約103億3,500万円)のシリーズA資金調達を発表した。B Capitalが主導し、Shield CapitalとCerberus Venturesが共同主導したもので、累計調達額は8,800万ドル(約139億9,200万円)となった。同社はこの資金を軌道上実証とネットワーク開発に充てる方針だ。

軌道上コンピューティングをめぐっては、GoogleがTPU搭載衛星を研究する「Project Suncatcher」を進め、NVIDIAも宇宙向け計算モジュール「NVIDIA Space-1 Vera Rubin Module」を発表している。Star CatcherとAetheroの取り組みは、演算装置だけでなく、電力を外部サービスとして供給するインフラを組み合わせようとする点に特徴がある。

PPAが実際の電力供給へ移行するには、Star Catcherが軌道上で送電技術を実証し、その後にサービス網を展開する必要がある。今回の契約は、軌道上計算の拡大に伴って電力と放熱が共通インフラの課題になりつつあることを示す、事業化に向けた事前合意と位置付けられる。

■注目ポイントQ&A

●Titanは2026年10月からStar Catcherの電力を利用するのですか?

そのような発表はありません。Titanは衛星自身の電力システムを使って計算基盤を実証する計画です。今回のPPAは、Star CatcherとAetheroの軌道上ネットワークが拡大するのに合わせ、今後数年かけて段階的に利用を始める契約です。

●Star Catcherは衛星へどのように電力を届けるのですか?

軌道上で集めた太陽エネルギーを、顧客衛星の太陽電池が変換しやすい波長の光として送り、既存の太陽電池パネルへ照射する構想です。専用の受電アンテナを追加しなくても利用できる設計ですが、軌道上での送電性能は今後の実証対象です。

●太陽電池アレイを小さくすると、なぜ計算能力を高めやすくなるのですか?

衛星が使える質量、展開面積、収納容積には限りがあります。ピーク電力の一部を外部から受け取れれば、発電・蓄電設備だけでなく、計算装置や放熱器へ割り当てる余地を増やせる可能性があります。

●Titanの1万6,000TFLOPSは実証済みの性能ですか?

いいえ。Aetheroが示しているNxA-ECMの設計上の性能を複数モジュールに拡張した目標値です。軌道上での持続性能や消費電力、熱設計、耐障害性を含む実運用性能はTitanミッションで検証されます。

●軌道上電力網はすでに利用できますか?

まだ商用運用は始まっていません。Star Catcherは地上で1.1kWを超える光給電試験を実施していますが、初の軌道上光給電実証は2026年中に予定されています。商用サービスの開始時期は公表されていません。

元記事: Orbital AI Gets Energy Grid: Aethero Signs Power Deal for October Titan Mission

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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