NECが水中音響AIの研究開始、防衛・海洋観測への応用を視野

2026年8月21日 10:25

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記事提供元:Tech Times

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NECは2026年8月18日、防衛装備庁の防衛イノベーション科学技術研究所が実施する「革新型ブレークスルー研究」で、「自己教師あり学習による水中音響基盤モデルに関わる研究委託(その1)」を受注し、研究を開始したと発表した。

膨大な水中音響データから共通する特徴を学習し、さまざまな解析に応用できる基盤モデルを構築する。NECは2027年度までの構築と有効性の実証を目指しており、防衛用途に加え、海洋生物や資源の探査、環境モニタリング、地震に関する分析などへの展開を想定している。

■水中音響データの解析を支える基盤モデル

海中では光や電波が届きにくいため、音波が観測や物体認識の重要な手段となる。ソーナーやハイドロホンで取得した水中音響データは、海面や海底での反射、海水温や塩分による音速の変化、生物や船舶が発する音などが重なり合う。解析には高度な信号処理と専門家の知見が必要で、膨大なデータを扱うには時間と集中力を要する。

AIによる解析では通常、入力データに正解を付けた「ラベル付きデータ」を大量に用意する。しかし、水中音響では、何の音が、どのような条件で記録されたのかを確認してラベルを付ける作業が難しい。観測や収集に船舶、観測機器、人員が必要になるうえ、音の判別にも専門知識を要するためだ。

NECによると、水中音響分野では特定の用途や業務に特化したAIモデルの開発が中心で、言語分野の基盤モデルのように幅広い用途へ適用できる汎用的なモデルは、ほとんど実現されていないという。

■自己教師あり学習でラベル不足に対応

今回の研究では、正解ラベルのないデータを学習に利用できる自己教師あり学習を採用する。自己教師あり学習は、データの一部を隠して復元させるといった課題をモデル自身に解かせ、データに共通する特徴や構造を学ばせる手法だ。

水中音響の場合、音の時間変化や周波数成分を表したスペクトログラムの一部をマスクし、周囲の情報から復元させる方法などが考えられる。幅広い水中音から基礎的な特徴表現を獲得した後、用途ごとの少量のラベル付きデータを使って追加学習すれば、個別の分類や検知に適応しやすくなる。

こうした情報処理の構造は、大量のデータから共通表現を学び、個別の課題へ応用する言語や画像の基盤モデルに通じる。NECは、大規模言語モデルなどに用いてきた大規模学習技術と、水中音響に関する長年の知見を組み合わせる。

自己教師あり学習を水中音響へ適用する研究は、すでに学術分野でも進んでいる。2023年に米国音響学会誌へ掲載された研究では、ラベルのないデータによる事前学習と、少量のラベル付きデータによる追加学習を組み合わせ、船舶音の公開データセット「DeepShip」で分類性能を検証した。

2024年にIEEEの学術誌へ掲載された別の研究では、自己教師あり学習とデータ拡張を組み合わせ、同じDeepShipで86.33%の分類精度を報告している。いずれも特定のデータセットを対象とした船舶音分類の結果であり、あらゆる海域や用途で同じ性能を示すものではないが、ラベルの少ない条件で音響表現を学習する手法の有用性を示している。

■NECのソーナー技術と「cotomi」の学習技術を活用

NECは90年以上にわたってソーナー技術を開発してきた。今回の研究では、この分野で蓄積した信号処理技術や知見に、同社のAIコア技術「cotomi」で培った大規模学習技術を組み合わせる。

学習に必要な大規模水中音響データは、官民連携によって収集する計画だ。研究を委託した防衛イノベーション科学技術研究所と開発を進め、モデルの有効性を実証する。

「基盤モデル」は、単一の完成済みアプリケーションを指すものではない。大量のデータから汎用的な特徴表現を事前に学び、その後、目的に応じた追加学習や調整を施して個別の解析へ利用する共通基盤である。

水中音響の基盤モデルでも、すべての用途を初めから同じ精度で処理するのではなく、事前学習したモデルを用途ごとのデータで調整する形が中心になると考えられる。モデルがどのような対象や環境条件に適応できるかは、今後の研究と実証で確認される。

■防衛と海洋産業の双方で活用を想定

NECは今回の研究を、防衛と民生の双方で利用するデュアルユースの取り組みと位置付けている。海中の事象を従来より的確かつ迅速に把握し、音響データを基に海中環境を継続的に表現する「海のデジタルツイン」につなげる構想だ。

民生分野では、海洋生物や海洋資源の探査、環境モニタリングなどが応用候補として挙げられている。水中の音には船舶、生物、地殻活動、波浪などに由来する多様な信号が含まれているため、それぞれを識別し、時間的・空間的な変化を分析する共通基盤が整えば、海洋観測の効率化につながる可能性がある。

地震についてNECは「高精度な地震予測」への活用可能性も掲げている。研究段階の構想であり、具体的な予測手法や性能は公表されていない。まずは水中音響の基盤モデルを構築し、対象となるデータや用途ごとに有効性を検証することになる。

このモデルが扱える音の種類、利用するデータの規模、評価方法、個別用途での性能など、技術の詳細は現時点で明らかにされていない。NECは2027年度までの構築を目標としており、その後の社会実装を通じて、防衛力の強化と海洋産業の発展への貢献を目指すとしている。

■注目ポイントQ&A

●水中音響の基盤モデルとは何ですか?

大量の水中音響データから共通する特徴を事前に学び、個別の分類や検知などへ応用するためのAIモデルです。用途ごとのデータで追加学習や調整を行うことを前提とする共通基盤です。

●従来の水中音響AIと何が違いますか?

従来は特定の用途や業務に合わせたモデルが中心でした。今回の研究では、ラベルのない大量のデータから幅広い特徴を学び、複数の用途に展開できる汎用的なモデルの構築を目指しています。

●自己教師あり学習を使う理由は何ですか?

水中音響データは収集や判別に専門性とコストを要し、正解ラベルを大量に用意することが難しいためです。自己教師あり学習では、ラベルのないデータを事前学習に利用できます。

●どのような用途が想定されていますか?

NECは防衛用途のほか、海洋生物や資源の探査、環境モニタリング、地震に関する分析などを候補に挙げています。具体的な対応機能や性能は、今後の研究と実証によって確認されます。

●研究はいつまでに完了する予定ですか?

NECは2027年度までに水中音響基盤モデルを構築することを目指しています。個別サービスの提供開始時期や運用計画は公表されていません。

元記事: NEC Secures Japan Defense Contract to Build First AI That Hears Submarines and Earthquakes

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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