5.6兆ピクセルの宇宙マップが公開、約40億の天体を網羅しAI訓練や次世代観測の基盤に

2026年8月12日 13:30

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DESIレガシー・イメージング・サーベイのチームは、全天の75%にわたる約40億個の天体をカタログ化した、5.6兆ピクセルの2D宇宙地図を公開した。この地図は単なるアーカイブではなく、今後の天文観測やAIモデルの訓練を支えるインフラとして機能する。インターネット接続があれば誰でも無料でアクセスでき、重力レンズや超新星などの珍しい天文現象を探すことも可能だ。

■2Dマップは単なるアーカイブではなく「インフラ」

ローレンス・バークレー国立研究所と米国立科学財団(NSF)のNOIRLabによって公開されたこの地図は、完成済みのアーカイブにとどまらず、現役の研究インフラである。2026年6月以降、DESI(ダークエネルギー分光装置)の毎夜の観測を支えており、ヴェラ・C・ルービン天文台から届く観測データの較正にも使用される予定だ。さらに、米エネルギー省(DOE)のジェネシス・ミッション(Genesis Mission)において、AI分類器を訓練する最初の天体物理学データセットの1つに指定されている。

レガシー・サーベイの共同リーダーで、バークレー研究所の科学者でもあるデビッド・シュレーゲル氏は、「これは今や天文学研究を形作る基盤の一部となっている。現在、天体を扱うときには、まずレガシー・イメージング・ビューアを開き、何を見ているのか確認することが多い」と述べている。

2Dイメージング・サーベイと3D分光サーベイは、根本的に異なる目的を担う観測手法である。2Dサーベイは天体が空のどこに見えるかと、複数の波長における明るさを記録するが、その距離は測定しない。距離の測定には、それぞれの天体の光に生じるドップラー偏移を調べる分光観測が必要となる。DESIの2D地図が空を深く撮影した写真だとすれば、世界的な注目を集めるダークエネルギー研究の成果を生み出しているDESIの3Dサーベイは、その写真を読み取り、距離を決定する仕組みだと言える。

アリゾナ州キットピーク国立天文台にあるNSFのニコラス・U・メイヨール4メートル望遠鏡(口径13.1フィート)には、DESIの5,000基のロボット式光ファイバー位置決め装置が搭載されている。毎夜の観測には、ファイバーをどの銀河やクエーサーに向けるかを示すターゲットカタログが必要であり、観測候補となる空の各領域を事前に撮影したデータから作成される。2026年6月以降、このカタログには新たに拡張された2D地図が使われている。DESIは2026年4月、当初の5年間のサーベイを予定より早く完了したが、延長プログラムとして2028年まで観測を続けており、そのすべての観測夜がこのターゲティング基盤に依存している。

シュレーゲル氏は、「DESIによる銀河観測が非常に効率的だったため、レガシー・サーベイの地図を拡張する必要があった。早い段階で、観測する銀河や空の領域が尽きるかもしれないことが明らかになり、対策を始めなければならなかった」と語る。

2026年6月30日に全天サーベイを開始したルービン天文台は、この2D地図を比較の基準として使用する。毎晩700万件のアラートが蓄積される中、研究者は検出結果をDESIレガシー・サーベイのカタログと照合し、何が変化し、何が移動し、何が新たに現れたのかを調べる。2026年8月30日に打ち上げが予定されているNASAのナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡も、運用開始後の数年間、観測対象の特定や較正にこのカタログを利用する見込みだ。

レガシー・サーベイの共同リーダーで、NSF NOIRLabの天文学者でもあるアルジュン・デイ氏は、「私たちのチームにとって、これらのデータは宇宙の膨張史と私たちの銀河系の形成を調査する上で不可欠だ。しかし、空はすべての人のものであり、このサーベイは誰もが空を探索し、その驚異に触れる機会を提供する」と述べている。

■スーパーコンピューター「Perlmutter」での8週間にわたる処理

5.6兆ピクセルの地図を構築するための技術的課題は、それ自体が注目に値する。異なる夜、異なる大気条件、異なる大陸にある異なる観測装置で撮影された263,407回分の望遠鏡の露光データを、継ぎ目がなく、測光的に均一な空の地図へ統合することは、定型的な計算処理ではない。

各夜の露光データには、それぞれ異なる大気シーイング、測光オフセット、位置天文学的な補正情報が伴う。大気シーイングは大気によって画像がどの程度ぼやけるか、測光オフセットは装置の感度が前夜からどのように変化したか、位置天文学的な補正情報はピクセル座標と天空座標を正確に対応させるための情報を意味する。2015年にチリで測定された星と、2023年にアリゾナで測定された同じ星が同じ明るさで表示されるよう、すべての露光データを整合させるには、画像処理を始める前に約1年間のソフトウェア開発が必要だった。

コードの準備が整うと、チームはカリフォルニア州のバークレー研究所にある国立エネルギー研究科学計算センター(NERSC)のスーパーコンピューター「Perlmutter(パールマッター)」で、8週間にわたって連続処理を実行した。Perlmutterは、宇宙の膨張が加速していることを発見し、2011年のノーベル物理学賞を共同受賞したバークレー研究所の天体物理学者ソール・パールマッター氏にちなんで名付けられたHPE Cray EXシステムである。

同システムは、4基のNVIDIA A100 GPUとAMD Milanプロセッサをそれぞれ搭載した1,536のGPUアクセラレーテッドノード、3,072のCPU専用ノード、毎秒5テラバイトでデータを転送できる35ペタバイトのオールフラッシュストレージを備えている。GPU機能は、天文学で必要となる大規模データ分析を想定して設計されており、今回の処理は同システムで実行された単一の天体物理学処理ジョブとして最大級のものとなった。

元データは、3つの地上スカイサーベイと1つの衛星ミッションから得られた。DECaLS(Dark Energy Camera Legacy Survey)は、DOEが製造し、チリのセロ・トロロ汎米天文台(CTIO)にあるNSFのビクター・M・ブランコ4メートル望遠鏡(口径13.1フィート)に搭載された5億7,000万画素のダークエネルギーカメラを使用した。MzLS(Mayall z-band Legacy Survey)は、アリゾナ州キットピーク国立天文台のNSFニコラス・U・メイヨール4メートル望遠鏡を使用した。BASS(Beijing-Arizona Sky Survey)は、アリゾナ大学のスチュワード天文台を使用した。さらに、NASAの広域赤外線探査衛星(WISE)が、地上の光学望遠鏡では捉えられない領域まで地図を広げる赤外線帯のデータを提供した。

統合されたデータは、複数の光学および近赤外線の波長帯において、13年間、2,285夜分の観測をカバーする。作成されたカタログには、位置や明るさだけでなく、恒星、銀河、ブラックホール、小惑星、超新星、重力レンズなどの天体分類も含まれている。これまでに1,800本を超える発表済みの科学論文がレガシー・サーベイのデータを参照しており、その数は増え続けている。

■ダークエネルギーの謎にどう関わるのか

2024年以降にDESIが示してきたダークエネルギーに関する成果は、このイメージング基盤の上に成り立っている。そこには、ダークエネルギーが宇宙の時間とともに弱まっている可能性や、宇宙論の標準モデルであるLambda-CDMモデルの修正が必要になるかもしれないという示唆も含まれる。2Dサーベイのターゲットカタログは、空にある数十億の天体のうち、次にどれを測定すべきかをDESIの分光器に指示した。その後、分光器が数千万個の銀河の赤方偏移、すなわち距離を測定し、ダークエネルギーのシグナルを示す宇宙構造の3D地図を作成した。

2026年4月、DESIは当初の目標であった3,500万個の銀河を大幅に上回る数の天体をマッピングし、当初計画した5年間のサーベイを予定より早く完了した。研究チームは、今回公開された拡張版のターゲットカタログを使って2028年まで延長サーベイを続け、さらに広い空を観測する。5年間の全データセットを使った、より精緻な結果は2027年に公表される見込みだ。

DESIの共同研究者で、バークレー研究所の科学者でもあるナタリー・パランケ=デラブルイユ氏は、2026年4月のサーベイ完了時に、「DESIが観測した加速の弱まりは、もはや宇宙定数では説明できない。これはダークエネルギーそのものの発見以来、宇宙論で最も興味深い発見になる可能性がある」と述べている。

DESIの共同広報担当者でウォータールー大学教授のウィル・パーシバル氏は、その意味を次のように説明した。「異なるデータセットを整合的に説明するには、宇宙論の標準モデルを修正する必要があるかもしれないという見方がますます強まっている。時間とともに変化するダークエネルギーは、有望な説明に見える」

DESIのデータに見られるダークエネルギーのシグナルは、確定した発見ではない。物理学者が発見と認定する際に求める5シグマの基準を超えていないためだ。しかし、データが公開されるたびに証拠は強まっており、2026年7月30日に公開されたライマンアルファの森(Lyman-alpha forest)のデータセットを含む、複数の独立した観測手法にもシグナルが現れている。2D地図の拡張によって、DESIが2027年に公表する結果が、より決定的なものとなる可能性は高まる。

■ダークエネルギーの運命は宇宙の未来を変えるか?

宇宙論の現在の標準モデルであるLambda-CDMモデルは、ダークエネルギーを固定された宇宙定数として扱う。これは、すべての空間を満たし、どの時代でも一定に保たれる均一なエネルギー密度であり、1998年に初めて発見された宇宙の加速膨張を引き起こすと考えられている。このモデルでは、宇宙は永遠に膨張を続け、やがて銀河は互いに観測可能な地平線の外へ遠ざかっていく。

DESIが示した兆候が正しければ、ダークエネルギーは一定ではないことになる。それは宇宙の歴史の中で変化してきた動的な場であり、物理学では「クインテッセンス」と呼ばれるものだ。その場が弱まっているならば、ダークエネルギーによる外向きの作用と重力による内向きの作用のバランスは、宇宙の時間とともに変化する。

DESIのデータと整合する一部のモデルは、この場の作用が最終的に反転し、宇宙の膨張がまず減速した後、再び収縮する可能性を示している。これは、1998年の発見によって否定されるまで有力と考えられていた「ビッグクランチ」シナリオである。別のモデルでは、場が従来より低い新たな値で安定する可能性も示されている。現在のデータセットには、これらの可能性を区別できるだけの精度はない。

ルービン天文台による弱い重力レンズ効果の測定では、ダークマターが背景にある数十億個の銀河の形をどのようにゆがめるかをマッピングする。わずか1年分のデータでDESIの全サーベイ結果に匹敵する精度へ達すると予想されており、ダークエネルギーのシグナルが維持されるかどうかを調べる、初の独立した高精度テストとなる見込みだ。8月30日に打ち上げが予定されているローマン宇宙望遠鏡も、独自の高赤方偏移銀河サーベイによるデータを加える予定である。

■AI訓練とジェネシス・ミッションへの貢献

宇宙論にとどまらず、約40億天体のカタログは、別の種類の科学インフラでも役割を担う。DOEのジェネシス・ミッションは、AIによる科学的発見を加速するため、2026年7月に発表された50億ドル超、1ドル=159円で約7,950億円超の国家イニシアチブである。アメリカン・サイエンス・クラウドを使用し、17の国立研究所のコンピューティング資源を接続する。DESIレガシー・イメージング・サーベイのカタログは、このインフラにおける天体物理学のパイロットプロジェクトで使用が予定されている最初のデータセットの1つだ。

具体的な用途はAIの訓練データである。ルービン天文台の「空間と時間のレガシー・サーベイ(Legacy Survey of Space and Time)」は、前回の観測から明るさが変化した天体などについて、毎晩最大700万件の自動アラートを生成する。超新星、小惑星、変光星、活動銀河核などを区別してアラートを分類するには、ラベル付きの事例で訓練された機械学習モデルが必要となる。全天の75%に広がり、複数の波長帯をカバーし、すでに天体分類が付与された約40億個の天体のカタログは、この分野における過去最大級の訓練データセットの1つである。

NASAとDOEはジェネシス・ミッションの下で、過去および将来の望遠鏡や衛星から得られる150ペタバイトを超えるデータに、物理法則を取り入れたAIを適用する方針を示している。レガシー・サーベイのカタログは、その構想を実際に機能させる基盤の一部となる。

■誰でも探索可能なビューア

viewer.legacysurvey.orgで公開されているレガシー・サーベイ・スカイ・ビューアは、5.6兆ピクセルの地図全体を読み込めるブラウザベースのインターフェースである。ユーザーは名前の付いた銀河を検索し、任意の天空座標へズームし、個々の天体をクリックしてカタログデータを取得できる。光学画像と赤外線画像の表示を切り替えることも可能だ。このインターフェースは、観測前に天体を目視確認したい専門研究者向けに設計されているが、登録や専用ソフトウェアは必要なく、誰でもすぐに利用できる。

データをプログラムから扱う研究者は、NOIRLabの科学プラットフォーム「Astro Data Lab」や、標準的な天文データ形式を通じて完全なカタログへアクセスできる。「Backyard Worlds: Planet 9」のような市民科学プロジェクトも、すでにレガシー・サーベイの画像を基礎データとして利用している。このプロジェクトでは、仮説上の第9惑星が含まれる可能性もある移動天体を一般の参加者が探している。

■注目ポイントQ&A

●DESIの2D宇宙地図には何が含まれ、3D地図とはどう違うのですか?

2D地図は、光学および近赤外線の波長帯において、天体が空のどこに見え、どの程度明るいかを記録しますが、その天体までの距離は記録しません。全天の75%を捉えた、非常に深く広角な写真と考えることができます。ダークエネルギー研究の成果につながっているDESIの3D地図は、各天体の赤方偏移、つまり宇宙の膨張によって光の波長がどれだけ引き伸ばされたかを測定して距離を求め、3つ目の次元を加えます。2D地図は先に構築され、DESIの分光器をどの天体へ向けるべきかを示すターゲットカタログとして機能しました。DESIがこれまでに公表したダークエネルギー研究の成果は、すべてこの2Dイメージング基盤に依存しています。

●13年間に撮影された画像の処理に、なぜスーパーコンピューターで8週間もかかったのですか?

263,407回の露光は、それぞれ異なる夜、異なる装置、異なる大気条件の下で撮影されました。処理パイプラインでは、すべての露光を共通の明るさの尺度に測光較正し、同じ座標系に位置合わせした上で、各画像に写るすべての天体を検出、測定する必要があります。その後、同じ空の領域を撮影した複数の露光を、継ぎ目のない画像へ合成します。大気シーイングや装置感度の変化、3台の望遠鏡の光学特性の違いも考慮しなければなりません。この処理を行うコードの開発には約1年かかりました。完成後、数千基のNVIDIA A100 GPUと35ペタバイトのオールフラッシュストレージを備えるNERSCのスーパーコンピューター「Perlmutter」で、全データセットの処理に連続8週間を要しました。

●マップ内で個々の天体を探せますか。それとも統計的なカタログにすぎないのですか?

個々の天体が識別され、カタログ化されています。研究者や市民科学の参加者は、公式画像に登場する、地球から約3,500万光年離れた渦巻銀河「メシエ96」のような名前の付いた銀河を検索し、高解像度画像を見ることができます。カタログは、位置、天体の種類、明るさ、色を条件に検索できます。viewer.legacysurvey.orgのレガシー・サーベイ・スカイ・ビューアでは、光の点をクリックすると、それぞれのカタログ情報を確認できます。専門研究者も、観測提案を作成する際にこのビューアを開き、候補となる天体を目視確認することが日常的にあります。

●ダークエネルギーが変化しているというDESIの証拠は強まっているのですか?

慎重に評価する必要がありますが、証拠は強まっています。DESIが2025年3月に公表した3年間の観測結果と、2026年7月のライマンアルファの森の分析は、統計的有意性の程度は異なるものの、ダークエネルギーの影響がLambda-CDM標準モデルの想定のように一定ではなく、宇宙の時間とともに弱まっているように見えるという兆候を示しました。確定した発見に必要とされる5シグマの基準を超えた単独の結果は、まだありません。しかし、バリオン音響振動やライマンアルファの森など、複数の独立した測定手法にシグナルが現れています。拡張された2D地図によって、DESIの延長サーベイでは、より遠方にある、より多くの銀河を観測できるようになります。研究チームは、5年間のデータを使った、より精緻な結果を2027年に公表する予定です。2026年6月30日に独自のスカイサーベイを開始したルービン天文台による独立したテストは、約1年分の観測データで、DESIの結果を高精度で確認または反証する初の機会になると見込まれています。

元記事: DESI Legacy Surveys Releases 5.6-Trillion-Pixel Universe Atlas; Rubin, Roman Benefit

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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