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NTTと東大発OptQCが資本業務提携、2030年度に100万量子ビット級の光量子コンピュータ実現へ

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NTTと東京大学発のスタートアップOptQCは、誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータの実用化に向け、資本業務提携契約を締結した。NTTは今後、OptQCへの出資を予定している。両社は研究開発だけでなく、事業化、ユーザー企業を交えたユースケース開拓、サプライチェーン構築、社会実装までを一体的に進め、2030年度までの実現を目指す。
光量子コンピュータは、光を量子情報の担い手として利用する方式である。OptQCが開発する方式は室温・常圧で動作でき、光通信技術との親和性が高い。超伝導量子コンピュータなどが必要とする極低温環境とは異なる方法で大規模化と省電力化を目指せる点が特徴だ。
■提携の背景とOptQCの実績
NTTとOptQCは2025年11月、スケーラブルで信頼性の高い実用的な光量子コンピュータの実現に向けた連携協定を締結した。その後、NTTは厚木研究開発センタに光量子コンピュータの研究開発拠点を立ち上げ、両社の連携を進めてきた。
今回の資本業務提携と併せて、両社は2027年度までを期間とする共同研究契約を締結した。共同研究では、波長多重技術を活用した量子ビット数の拡大、誤り耐性を備えた光量子コンピュータの設計、100万量子ビット級システムアーキテクチャの設計に取り組む。2027年度までに、システムアーキテクチャと主要要素技術の設計を完了することが目標である。
事業面では、2026年度からユーザー企業や研究機関との共創を開始する。2027年度には将来の実用化を見据えたサプライチェーンの構築に着手し、2028年度には1万量子ビット級光量子コンピュータの実機を使ったユーザーとの概念実証(PoC)を開始する計画だ。2029年度にはアプリケーション開発と実証を拡大する。
OptQCの光量子コンピュータは、すでに実機の稼働段階に入っている。同社と産業技術総合研究所(産総研)は2026年7月21日、OptQC製の1号機「MoQuren(モクレン)」を産総研の量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)に設置し、稼働を開始したと発表した。
産総研によると、商用化を見据えた国産光量子コンピュータが実際の研究・開発環境に導入されるのは世界初の事例だという。MoQurenは、産総研が整備する量子・古典融合計算基盤「ABCI-Q」の重要な構成要素となる「システムO」につながるものと位置付けられている。
ただし、現時点でMoQurenが一般の研究者に広く提供されているわけではない。OptQCは将来の一般提供に向け、シミュレーション機能を備えた開発者向け実行環境、すなわちソフトウェア開発キット(SDK)の開発を進めている。
■時間領域多重化(TDM)技術の仕組み
OptQCの光量子コンピュータを大規模化するための中核技術の一つが、時間領域多重化(TDM)である。空間的に多数の量子ビットを並べる代わりに、量子情報を持つ光パルスを時間方向に並べ、異なる時間帯の光パルスを量子ビットとして扱う。
超伝導量子コンピュータでは、一般に量子ビット数を増やすほど、ジョセフソン接合、共振器、制御配線などの回路要素も増える。量子ビットを極低温に保つ希釈冷凍機や、内部の配線、制御装置を含めたシステム全体の大規模化が課題になる。
これに対し、時間領域多重方式では、異なる時間に到着する多数の光パルスを共通の光学系で処理できる。光パルスを時間方向に連続して生成することで、装置の物理的な規模を量子ビット数に比例して増大させずに、扱える量子状態を増やせる可能性がある。
古澤明教授らの研究グループは、時間領域多重方式を用いた大規模なクラスター状態の生成や、量子テレポーテーションを利用した光量子演算の研究を進めてきた。クラスター状態とは、多数の量子状態を量子もつれによって結び付けた、測定型量子計算の計算資源となる状態である。
光方式は室温動作が可能であり、超伝導方式のように量子ビット全体をミリケルビン領域まで冷却する必要がない。ただし、レーザー、光増幅器、制御回路、検出器などの電力は必要であり、システム全体の消費電力上の優位性は、今後の実機規模や構成を踏まえて評価する必要がある。
■NTTの技術的貢献
NTTは出資者としてだけでなく、光通信技術、ネットワーク、データセンター、量子情報処理、IOWNに関する技術と知見を提供する。とりわけ、光増幅技術、光多重化技術、量子分野への応用が期待される誤り訂正技術は、大規模な光量子コンピュータを実現するための基盤技術となる。
2025年1月には、東京大学、NTT、理化学研究所などの研究チームが、光パラメトリック増幅器と位相制御技術を用い、従来の1,000倍以上高速な光量子もつれの生成・観測に成功したと発表した。60GHzという速度で、ピコ秒スケールの光量子もつれをリアルタイムに生成・測定した成果である。
この成果は、数十GHz級のクロックで動作する量子システムの実現可能性を示す基盤技術だ。ただし、量子もつれの生成速度がそのまま完成した量子コンピュータ全体の実効クロック速度になるわけではない。実際の計算性能は、量子状態の品質、演算精度、測定、フィードフォワード制御、誤り訂正など、システム全体の性能に左右される。
2026年3月には、NTT、東京大学、理化学研究所、OptQCが、導波路型光デバイスとして世界最高となる10.1dBの量子ノイズ圧縮を持つスクイーズド光の生成に成功したと発表した。高品質で広帯域なスクイーズド光は、連続量光量子コンピュータの重要な計算資源であり、将来の誤り耐性型量子コンピュータにも必要になる。
光量子コンピュータにおける大きな課題の一つが、光学素子や伝送路で生じる損失とノイズへの対応である。古澤教授らの研究グループは、光の連続変数に量子情報を符号化するGKP(Gottesman-Kitaev-Preskill)量子ビットなどを用いた誤り耐性型量子計算の研究を進めている。
NTTの代表取締役社長兼CEOである島田明氏は、光通信技術、ネットワーク、データセンター、IOWNなどで培ってきた知見を生かし、研究開発から事業化、社会実装までを一体的に進める考えを示している。
■OptQCの基盤技術と研究プロジェクト
OptQCは、東京大学における約25年にわたる光量子コンピュータの基礎研究を土台として設立されたスタートアップである。東京大学や理化学研究所などで光量子コンピュータの研究に携わってきた研究者が、同社の技術開発を担っている。
古澤明教授は1998年、米カリフォルニア工科大学の研究チームの一員として、連続変数を用いた無条件量子テレポーテーションを実証した。量子テレポーテーションは、あらかじめ共有した量子もつれと古典通信を利用し、量子状態を別の場所へ転送する技術である。
光量子コンピュータでは、量子テレポーテーションを演算処理に応用できる。量子状態を直接相互作用させる代わりに、量子もつれ、測定、測定結果に基づく補正を通じて演算を実行する。光スイッチの使用を抑えられれば、スイッチによる光損失を低減できる可能性がある。
古澤教授をプロジェクトマネージャーとする研究チームは、JSTのムーンショット型研究開発事業において、時間領域多重、スクイーズド光、GKP量子ビット、量子誤り訂正などの研究を進めてきた。2020年度に採択された「誤り耐性型大規模汎用光量子コンピュータの研究開発」は2025年度で終了し、2025年度には後継となる「誤り耐性型全光学式光量子コンピュータの研究開発」が採択されている。
また、OptQCはNEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、1万量子ビット級光量子コンピュータの開発を進めている。今回のNTTとの資本業務提携は、こうした研究成果を事業化と社会実装につなげるための取り組みと位置付けられる。
NTTによる具体的な出資額や出資比率は、2026年8月3日の公式発表では明らかにされていない。また、発表時点では出資を完了したのではなく、今後出資を行う予定とされている。
■競合技術との比較
量子コンピュータには、超伝導、半導体、イオントラップ、冷却原子、光など複数の方式があり、それぞれ動作環境、大規模化の方法、制御技術、エラーの性質が異なる。
OptQCは、スクイーズド光など光の連続変数を利用する方式を採用している。連続変数方式では、光の振幅や位相をホモダイン検出によって測定する。単一光子を直接数える方式とは、必要となる光源、検出器、誤り訂正技術が異なる。
海外では、PsiQuantumがシリコンフォトニクスを利用した離散変数方式、Xanaduが連続変数方式を含む光量子コンピューティングに取り組んでいる。ただし、各社が量子ビットや量子モードを定義・集計する方法は同一ではないため、公表された数字だけでシステム性能を単純比較することはできない。
日本では、富士通が理化学研究所や産総研と連携し、2030年度に1万物理量子ビット超の超伝導量子コンピュータを構築し、250論理量子ビットを動作させる計画を進めている。NTTとOptQCは2030年度までに、誤り耐性を備えた100万量子ビット級の光量子コンピュータを目指す。
专者の数字は、方式や研究段階、物理量子ビットと論理量子ビットの関係が異なるため、直接的な性能比較には適さない。重要なのは、誤り率、損失、演算精度、論理量子ビット数、実行可能なアルゴリズム、処理時間などを含むシステム全体の性能である。
産総研のG-QuATは、超伝導、光、冷却原子など複数方式の量子コンピュータと、古典コンピュータを組み合わせた量子・古典融合計算基盤の整備を進めている。MoQurenも、その基盤を構成する光量子コンピュータとして位置付けられている。
■課題となるフォールトトレラント技術
2030年度までに100万量子ビット級のシステムを実現するというロードマップの成否は、大規模化だけでなく、誤り耐性を実装できるかどうかにかかっている。
量子コンピュータでは、ノイズの影響を受ける物理量子ビットを複数組み合わせ、誤りを検出・訂正できる論理量子ビットを構成する。必要となる物理量子ビット数は、採用する誤り訂正符号、物理エラー率、必要な計算精度、実行するアルゴリズムなどによって大きく変わる。
光方式では、光学素子や導波路などで生じる光損失と、スクイーズド光の有限な品質に由来するノイズが重要な課題になる。GKP量子ビットは、光の連続変数に離散的な量子情報を符号化し、変位誤りなどを訂正するための方式として研究されている。
NTTとOptQCは2027年度までに、誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータに必要なシステムアーキテクチャと主要要素技術の設計完了を目指す。その一方で、100万量子ビット級の完全な誤り耐性型光量子コンピュータは、これまで実現例がなく、光源の品質、損失低減、GKP量子ビットの生成、リアルタイム制御、誤り訂正など複数の技術課題が残る。
したがって、2030年度という時期は完成が保証された予定ではなく、両社が掲げる研究開発目標として捉える必要がある。
■NTTのネットワークとの将来的な統合の可能性
NTTのIOWN構想と光量子コンピュータは、光増幅、光多重化、光伝送、光デバイスなどの技術基盤を共有する部分がある。NTTが光通信分野で蓄積してきた技術は、光量子コンピュータの高速化や大規模化に活用できる可能性がある。
一方、今回の公式発表で示されている中心的な目標は、100万量子ビット級光量子コンピュータの研究開発、事業化、ユースケース開拓、サプライチェーン構築、社会実装である。光量子コンピュータをIOWNの分散コンピューティング層として統合する具体的な計画は発表されていない。
将来的には、光量子コンピュータと光ネットワークを接続し、量子情報処理を複数拠点に分散させる構想も考えられる。ただし、通常の光通信ネットワークとの共存、量子状態の変換、伝送損失、量子中継、セキュリティなどの課題があり、現時点では長期的な可能性の段階にある。
■注目ポイントQ&A
●室温動作の光量子コンピュータは、IBMやGoogleのシステムとどのように違うのですか?
IBMやGoogleが開発する超伝導量子コンピュータは、量子ビットを極低温に保つための希釈冷凍機を必要とします。これに対し、OptQCの光量子コンピュータは室温・常圧で動作し、光パルスに量子情報を持たせます。時間領域多重化によって、異なる時間帯の光パルスを共通の光学系で処理できるため、装置を量子ビット数に比例して増やさずに大規模化できる可能性があります。ただし、光源、検出器、制御回路などは必要であり、システム全体の性能や消費電力は実機で評価する必要があります。
●量子テレポーテーションとは何ですか?また、それがOptQCのコンピュータの動作にどう関係するのですか?
量子テレポーテーションとは、共有された量子もつれと古典通信を利用して、量子状態を別の場所へ転送する技術です。物質そのものが瞬間移動するわけではなく、光より速く情報を伝えるものでもありません。光量子コンピュータでは、量子もつれを用意し、その一部を測定して、測定結果に応じた補正を加えることで量子演算を実行できます。光スイッチを多用しない構成にできれば、スイッチによる光損失を減らせる可能性があります。
●NTTが単なる出資者以上の価値をもたらすのはなぜですか?
NTTは光増幅、光多重化、コヒーレント伝送、光デバイス、ネットワーク、データセンターなどの技術を蓄積しています。東京大学などとの共同研究では、60GHzの光量子もつれの生成・測定や、高品質なスクイーズド光の生成を実証しました。今回の提携では、こうした技術とOptQCの光量子コンピューティング技術を組み合わせ、研究開発から事業化、社会実装までを進めます。
●2030年度のロードマップに対する最大の技術的リスクは何ですか?
光損失やノイズを十分に抑え、誤り耐性を備えた論理量子ビットと演算を大規模に実装できるかどうかです。100万量子ビット級への大規模化に加え、高品質な量子光源、GKP量子ビットの生成、低損失な光回路、高速な測定とフィードフォワード制御、誤り訂正を統合する必要があります。完全な誤り耐性型光量子コンピュータは前例がなく、2030年度という時期は両社が掲げる目標であって、実現が確定した予定ではありません。
元記事: NTT Backs Room-Temperature Optical Quantum Computer Targeting Million Qubits
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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