AMD株急騰にアナリストから警戒感、Zen 6発表とQ2決算を前に「好材料は織り込み済み」か

2026年7月14日 18:11

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米半導体大手AMD(Advanced Micro Devices)の株価は2026年に入り年初来で2倍以上に急騰し、データセンター部門の売上高も急成長を遂げている。しかし、一部のアナリストからは、これらすべての好材料がすでに株価に織り込まれている可能性が指摘されている。同社は2026年7月22日・23日にAIイベント「Advancing AI 2026」を控え、8月4日には第2四半期(Q2)決算発表を予定しており、今後の10日間が同社の高バリュエーションを正当化できるかどうかの重要な試金石となる見通しだ。

■急ピッチな株価上昇を支える業績と大型契約

AMDの株価上昇は、実態を伴う事業変革を反映したものだ。同社が発表した2026年第1四半期(Q1)決算は、売上高が前年同期比38%増の103億ドルに達した。なかでもデータセンター部門の売上高は同57%増の58億ドルを記録し、同社の歴史上初めて競合インテルのデータセンター事業を上回った。

この成長を支える顧客獲得の動きも具体的かつ確実なものだ。AMDは2025年10月にOpenAIと6ギガワット規模の複数世代にわたるGPU供給契約を締結しており、2026年後半から「AMD Instinct MI450」GPUの導入が始まる予定である。また、2026年2月にはMetaともカスタムMI450ベースのGPUおよび第6世代EPYC「Venice」CPUを中心とした同様の6ギガワット契約を発表し、2026年後半に初回出荷を予定している。さらにOracleは、5万基のMI450 GPUを搭載したパブリックAIスーパープレスタを2026年第3四半期から提供開始する計画だ。

2026年Q2の業績ガイダンスにおいて、AMDは売上高を約112億ドル(非GAAPベースの粗利益率56%)と予測しており、これは前年同期比46%増に相当し、市場コンセンサスである105億ドルを大きく上回る。リサ・スーCEOは投資家に対し、MI450アクセラレータおよび「Helios」ラックスケールプラットフォームに対する顧客予測は「当初の期待を上回っている」と述べている。

■2nmプロセス採用「Zen 6 Venice」の実力と残された課題

2026年7月の「Advancing AI 2026」で正式発表される予定の「Zen 6 EPYC Venice」プロセッサは、単なるマイナーチェンジにとどまらない。Veniceは、TSMCのN2P(2nm)プロセスを採用して量産される業界初のハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)向けプロセッサである。従来のFinFET構造に代わり、ナノシート(ゲート・オール・アラウンド:GAA)トランジスタを採用することで、マイクロアーキテクチャの改良前段階でもトランジスタレベルでワット当たり約10〜15%の性能向上が見込まれている。

製品スペックもこのプロセス技術の優位性を反映している。Veniceは最大256のZen 6コアを搭載し、192コアのZen 5 EPYC「Turin」から33%増加、前世代比で70%以上の演算性能と効率向上を実現するとされる。ソケット当たりのメモリ帯域幅は、Turinの毎秒614ギガバイトからVeniceでは毎秒1.6テラバイトへと2倍以上に拡大し、16メモリチャネルとPCIe Gen 6をサポートする。CPU-GPU間の帯域幅も倍増し、新しいSP7ソケットが採用される。

大規模展開の核となる「Helios」ラックスケールプラットフォームは、Venice CPUと「MI455X」GPU、毎秒224ギガバイトのインターコネクト帯域幅を持つ第5世代Infinity Fabric、Pensandoの「Vulcano」DPUを組み合わせた水冷式の72基GPUラックで、クラスタ規模のAI学習・推論向けに設計されている。MI455X GPUは432ギガバイトのHBM4メモリを搭載しており、NVIDIAの「Vera Rubin NVL72」システムの288ギガバイトを上回る。これはメモリ容量がモデルサイズを制限する推論ワークロードにおいてハードウェア上の優位性となる。ただし、学習のスループットにおいてはNVIDIAが優位を保っており、AMDの「ROCm」ソフトウェアエコシステムも「CUDA」に対して最適化ライブラリの網羅性で依然として後塵を拝している。この格差は縮まりつつあるものの、まだ解消されてはいない。

■GPUの熱狂の裏で、堅実なCPU需要が支えに

投資家の注目はOpenAIやMetaとのマルチギガワット規模のGPU契約に集まりがちだが、ゴールドマン・サックスのアナリスト、ジェームズ・シュナイダー氏は異なる視点から強気シナリオを描いている。同氏は2026年7月6日にAMDの目標株価を640ドルに引き上げ、自律型AI(エージェンティックAI)のワークロードが高性能サーバーCPUの構造的な需要増を牽引しており、AMDのEPYCシリーズがインテルからのリプレイス需要を捉える上で極めて有利な立場にあると指摘した。ウェルズ・ファーゴのアナリスト、アーロン・レイカーズ氏も同様の議論を展開し、2028年までにAMDのサーバーCPU売上高が250億ドルに達すると予測している。

データもこの主張を裏付けている。AMDのサーバーCPU売上高シェアは、2025年11月のフィナンシャル・アナリスト・デイ時点の約40%から、2026年Q1時点には46%に上昇した。世界中で利用可能なEPYC搭載パブリッククラウドインスタンスは1,600を超え、前年比で約50%増加している。AMDはサーバーCPUの獲得可能な最大市場規模(TAM)の予測を、2030年までに1,200億ドル以上(年平均成長率35%超)へと上方修正しており、これは従来の予測の2倍以上である。

このCPUにおける強固な堀(モート)は、GPUビジネスよりも弱気シナリオに対する防御力が高いという点で重要である。Google(TPU)、Meta(MTIA)、Amazon(Trainium)などのハイパースケーラーが自社開発するカスタムAIチップ(ASIC)は、サードパーティ製アクセラレータのシェアを奪うため、汎用GPU売上に対する構造的な脅威となる。しかし、これらのASICは、一般演算やオーケストレーション、そしてGPUではなくCPU上で実行される推論処理を担うx86 EPYCプロセッサを代替するものではない。最先端の製造プロセスを採用し、業界最多のコア数を誇るx86プロセッサであるVeniceは、AIアクセラレータのようにハイパースケーラーが個別に模倣することが困難である。

■慎重派アナリストが警戒する「3つの構造的リスク」

ウィリアム・ブレアのセバスチャン・ナジ氏は、AMDの業績自体が弱いと見ているわけではない。同氏の売上予測はウォール街でも楽観的な部類に入る。懸念しているのは、株価の急騰によって「ミスの許容範囲(マージン・オブ・エラー)」が失われている点だ。同氏は適正株価を1株あたり約565ドルと見積もっており、現在の水準で「買い」推奨とすることを阻む3つの構造的リスクを指摘している。

第1のリスクは、前述のカスタムASICの脅威だ。Meta、Google、Amazonが自社開発シリコンに処理を移行するたびに、AMDやNVIDIAへの需要が減少する。AMDの現在の需要を生み出しているハイパースケーラーの設備投資(CAPEX)そのものが、長期的にはAMDのGPU市場シェアを制限しかねない自社製チップ開発の資金源となっている。第2のリスクはCPU競争である。現在AMDはサーバーCPUで優位に立っているが、カスタムCPUを設計するハイパースケーラーの間でArmエコシステムが台頭しているほか、NVIDIAも統合プラットフォーム戦略の一環として「Grace」CPUを展開している。また、インテルも2028年頃に「Coral Rapids」プラットフォームを投入し、サーバーCPUの競争力を本格的に回復させる見通しだ。第3のリスクとして、AI処理が学習(GPU集約型)から推論(CPU親和型)へ移行するにつれ、演算処理1回あたりのAIチップ売上高が長期的に圧縮される可能性が挙げられる。

ノースランド・キャピタル・マーケッツも同様の懸念を示しており、2026年4月27日にAMDの投資判断を10年以上維持した「アウトパフォーム」から「マーケットパフォーム」に引き下げた。同社は、2027年のAMDのコンセンサス予想が楽観的すぎること、またコスト規律や従量課金制の浸透により、2027年にはハイパースケーラーの設備投資が減少する可能性があると警告している。ノースランドが当時設定した目標株価260ドルは現在の株価水準からは乖離しているが、「AI設備投資サイクルは現在の成長率を無期限に維持できない」という構造的な主張は、依然として弱気派の根拠となっている。

さらに、より直近の利益率低下リスクも存在する。高帯域幅メモリ(HBM)やGDDR6コンポーネントのコストが急騰しており、AMDはアドインボード(AIB)パートナーに対し、GPUキットの約10%の値上げを通知したと報じられている。この値上げについてAMDからの公式発表はないが、実施されれば上流工程でのコスト圧力を裏付けるものとなる。

■実績PER 177倍という高バリュエーションの評価

実績株価収益率(PER)が約177倍、ベータ値が2.47であるAMDの株価は、非対称な動きをしやすい。好材料には敏感に反応して上昇する一方、悪材料が出た場合は市場全体の約2.5倍の速度で下落が加速する。2027年のコンセンサス予想利益に基づく予想PERは約60〜65倍と大幅に低下するが、これは現在の株価と従来のバリュエーションとのギャップを埋めるほどの急激な利益成長を前提としている。当然ながら、この予想倍率は利益成長が計画通りに実現することを前提としたものだ。

キャシー・ウッド氏率いるARK Investは7月初旬にAMD株のポジションを縮小し、Metaへ資金を再配分した。これはMetaの決算発表を控えた戦術的な動きであり、AMDに対する構造的な評価変更ではないとされる。また、直近ではインサイダー(内部関係者)による売却が一方向で続いているが、急成長するテクノロジー企業のインサイダー売却は、株式に対する見通しとは無関係な理由で行われることも多い。

アナリストの平均目標株価(コンセンサス)は約516ドルとなっており、現在の取引価格を下回っている。投資判断が圧倒的に「買い」であるにもかかわらず、目標株価が現在値を下回っているという現象は、値動きの速い成長株でよく見られる。アナリストがQ1の好決算とQ2ガイダンスを受けてモデルを更新したものの、株価の上昇ペースがそれを上回ったためだ。スティフェルは7月10日に目標株価を450ドルから635ドルに引き上げ、足元の調整はファンダメンタルズの崩壊ではなくバリュエーションのリセットであると主張した。ゴールドマン・サックスは640ドルの目標株価を維持し、ウェルズ・ファーゴの615ドルなど、他のアナリストによる目標株価の引き上げも現在のコンセンサスを上回っているが、最も強気な見方よりは低い水準にある。

■7月22日・23日の「Advancing AI 2026」に求められる成果

モスコーン・センターで開催される今回のイベントは、これまでの年次AIショーケース以上に製品としての重要性が高い。AMDのマーク・ペーパーマスターCTOは企業向けブリーフィングにおいて、Veniceがロードマップから実製品へと移行し、このイベントで正式発表されることを認めている。技術的なハードルは高い。Veniceは、NVIDIAの次世代サーバーCPU(後日発売予定の「Vera」CPU)に対する2nmプロセスのリードが、ハイパースケーラーが現在規模を拡大している自律型AIや推論ワークロードにおいて、測定可能な性能上の優位性に結びついていることを証明しなければならない。

Venice以外にも、このカンファレンスではHeliosラックスケールシステムの詳細や、さらなる顧客獲得の発表が期待されている。シティは、イベントでの重要な顧客獲得の可能性を楽観視する理由として挙げており、これが最近の目標株価引き上げの背景にある。新規ハイパースケーラーとの提携や、予想を上回るHeliosの受注コミットメント、競合に対するVeniceの具体的なベンチマークなど、すでに織り込まれている以上の発表があれば、現在の高倍率なバリュエーションを正当化できるだろう。しかし、発表内容がすでに知られている範囲にとどまれば、高すぎるバリュエーションが災いして「噂で買って事実で売る」という典型的な市場の反応を招く可能性がある。

■8月4日のQ2決算:維持すべき「数字」のハードル

AMDは8月4日の市場引け後に2026年Q2決算を発表する。アナリスト予測は、一時的要因を除いた調整後1株当たり利益(EPS)が1.61ドル、GAAPベースのEPSが1.07ドル、売上高が約112億8,000万ドルとなっており、これはAMD自身のガイダンスである112億ドルとおおむね一致している。焦点は、AMDがQ3に向けてどのようなガイダンスを示すか、そして経営陣がHeliosおよびVeniceの立ち上げについて「当初の予想を上回る、あるいは計画通り」と説明できるか否かである。

同社には、保守的なガイダンスを提示した後にそれを上回る実績を出すという定評がある。Q2のガイダンスは、Q1決算前の市場コンセンサスを7億ドル上回るものだった。このパターンが継続すれば、8月4日の決算発表によってアナリストの予測モデルが再び上方修正され、株価上昇の次の原動力となる可能性がある。しかし、決算が予想通りであっても、Q3のガイダンスを説得力のある形で引き上げることができなければ、現在の高いバリュエーション水準ゆえに、わずかな未達であっても市場は厳しい下落で反応することになるだろう。

現在の株価でAMDに投資することが、実態としての事業を買うことになるのか、それともすでに織り込み済みの「成長ストーリー」を買うことになるのか。その答えは、7月22日、23日、そして8月4日に明らかになる。

■注目ポイントQ&A

●AMDのAI成長ストーリーはGPUビジネスだけが牽引しているのですか?

OpenAIやMeta、Oracleによる大規模なGPU導入契約が注目を集めていますが、ゴールドマン・サックスやウェルズ・ファーゴのアナリストは、サーバーCPU(シェア46%を確保)こそがより持続可能なAI成長の原動力であると指摘しています。自律型AI(エージェンティックAI)のワークロードは多くのCPUコアを必要とするため、CPUの市場規模自体を拡大させており、AMDのEPYCはこの需要を取り込める有利な立場にあります。また、顧客であるハイパースケーラーによる自社製AIチップ(ASIC)の開発は、x86 CPUよりもGPUの売上に対して直接的な脅威となります。

●「Advancing AI 2026」で発表される注目製品と、それが株価に与える影響は何ですか?

最大の注目は、TSMCの2nmプロセスを採用して量産される業界初の高性能サーバーCPU「Zen 6 EPYC Venice」の正式発表です。最大256コアを搭載し、前世代比で70%以上の性能・効率向上、ソケット当たり毎秒1.6テラバイト以上のメモリ帯域幅を実現します。また、Heliosラックスケールシステムの詳細も発表される予定です。ここで事前の期待を上回る新規提携やベンチマークが示されれば現在の高株価を正当化できますが、想定内の内容にとどまった場合は、年初からの急騰に対する「事実売り」を招くリスクもあります。

●実績PER 177倍というバリュエーションは投資家にとって何を意味しますか?

過去12ヶ月の利益に対して株価が約177倍という非常に割高な水準にあることを意味します。2027年の予想利益に基づく予想PERは約60〜65倍まで下がりますが、これはVeniceやHelios、MI450の立ち上げによる急激な利益成長が計画通りに進むことを前提としています。半導体企業としては依然として高い水準であり、ベータ値が2.47と高いため、業績見通しの未達や市場全体の調整局面では、市場平均の約2.5倍の速さで株価が下落するリスクを伴います。

●AMDの「Zen 6 Venice」は、NVIDIAやインテルのサーバー向け製品よりも優れているのですか?

製造プロセスにおいては、TSMCの2nmノードで量産される初のサーバーCPUであるため、Veniceは競合に対して一歩リードしています。インテルの現行競合製品は「Granite Rapids(Xeon 6)」であり、プロセス技術で対抗できる次世代の「Coral Rapids」が登場するのは2028年頃と予想されています。NVIDIAの「Grace」CPUは、GPUと統合されたプラットフォームとして競合するもので、単体CPUソケットでの直接競合とは性質が異なります。ただし、AMDが主張する「前世代比70%の性能向上」などの数値は自社発表のものであり、実際の量産シリコンを用いた第三者による検証はまだ行われていない点に留意する必要があります。

元記事: AMD’s Rally Hits a Wall of Analyst Caution Before Zen 6 Launch, Q2 Earnings

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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