140社超が参画する新ステーブルコイン「Open USD」発表、Circleの金利独占モデルを直撃か

2026年7月2日 21:20

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記事提供元:Tech Times

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Visa、Mastercard、Stripe、BlackRock、Coinbaseなど140社を超える企業連合が、新たな米ドル連動型ステーブルコイン「Open USD(ティッカー:OUSD)」を発表した。OUSDは、裏付け資産から得られる金利収入のほぼすべてを採用・配布パートナー企業に還元する仕組みを特徴としており、金利を自社の収益として囲い込んできたCircleのビジネスモデルに直接揺さぶりをかける。この発表を受け、Circleの株価は一時17%以上急落した。

■CircleのビジネスモデルとOUSDが狙うその弱点

Circleの主な収益源は、USDCの保有者から預かったドルを短期米国債やBlackRockが管理するマネー・マーケット・ファンド(MMF)で運用し、その金利収入を自社で受け取る仕組みだ。同社がニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した当時の発表によると、2024年にはこの仕組みから16億8,000万ドル(約2,738億円)の収益を上げており、これは同社の総収益の約99%を占めていた。

USDCの供給量が730億ドル(約11兆8,990億円)に達し、短期国債の利回りが4〜5%で推移する中、この運用益は年間数十億ドルにのぼる。しかし、この利益はすべてCircleに流れ、実際にUSDCを流通させている企業や取引所、決済プラットフォームには還元されていなかった。

これに対し、OUSDを発行する独立組織「Open Standard」は真逆のアプローチをとる。OUSDも同様に短期国債や大手金融機関のMMFを裏付け資産とするが、Open Standardが受け取る少額の管理手数料を除いた運用のほぼ全額が、配布量や保有量に応じてパートナー企業に直接還元される仕組みだ。

Open Standardの創業者兼CEOであるザック・エイブラムス氏は発表に際し、「既存のステーブルコインには大きな強みがあるが、企業が大規模に利用するには、オープンで低コスト、高スループット、広くアクセス可能で、自社の利益に合致したものが必要だ」と述べた。同氏は以前、Stripeが11億ドル(約1,793億円)で買収したステーブルコインインフラ企業「Bridge」を共同創業した人物でもある。

■巨大連合の規模がもたらす地殻変動

金利をパートナーと分配するモデルはOUSDが初ではない。Paxosが主導し、RobinhoodやKraken、Galaxy Digitalなどが参画する「Global Dollar Network(USDG)」が2024年末から稼働しており、約30億ドルの供給量を集めている。しかし、これはUSDCの730億ドルや、Tether(USDT)の1,450億ドル(約23兆6,350億円)に比べるとわずか数パーセントにすぎず、一部のアナリストは今回のCircle株の急落を「過剰反応」と評している。

しかし、OUSDのローンチパートナーの顔ぶれは格が違う。Stripeは自社プラットフォームを利用する企業向けのデフォルトのステーブルコインとしてOUSDを採用する方針を示しており、初日から膨大な決済ボリュームが流入する可能性がある。さらに、VisaとMastercardは世界のカード決済の大部分を握っており、BlackRockはCircleの裏付け資産を管理しつつ、競合であるOUSDのバッカーにも名を連ねている。そして、Circleの最も重要なパートナーであるCoinbaseもOUSDのパートナーリストに含まれている。CoinbaseとCircleとの間で結ばれている年間9億800万ドル(約1,480億円)規模の商業契約は、2026年8月頃に更新時期を迎える予定だ。

ベンチャーキャピタル大手Dragonflyのジェネラルパートナーであるロブ・ハディック氏は、「著名なパートナー企業の参画は、Circleのビジネスに対する現実的な脅威を示唆している」と指摘。Stripeの幅広い金融製品群により、OUSDがCircleの収益モデルを独自に切り崩す可能性があると付け加えた。同氏のパートナーであるオマール・カンジ氏は、CoinbaseとCircleの関係解消の現実味が増したとしつつも、最終的には条件を改定した上で契約が更新されると予想している。

一方で、クリア・ストリートのマネージングディレクター、オーウェン・ラウ氏は「過剰反応だと思う」と反論する。同氏は、OUSDが書面上の機関投資家の支持を、実際の一般ユーザーの採用に結びつけられるかどうかが重要であり、それは正式ローンチ後に時価総額や利用状況を見極めるまで分からないと指摘した。

コロンビア・ビジネス・スクールの客員教授であるオミッド・マレカン氏はさらに懐疑的で、SNS上で「リストに名前を載せるのは簡単だが、企業の行動やビジネスモデルを実際に変えるのは極めて難しい」と、単なるロゴの羅列にとどまる段階であると釘を刺した。

■Coinbaseの複雑な立場

この構図の中で最も複雑な立場に置かれているのがCoinbaseだ。2023年のCircleとの提携合意に基づき、Coinbaseは自社プラットフォーム上で保有されるUSDCの運用益を100%受け取り、プラットフォーム外の運用益はCircleと50-50で折半している。CircleのS-1申請書類によると、2024年にこの取り決めによってCoinbaseが得た収益は約9億800万ドルにのぼり、これは同年のUSDC全体の金利収入の約56%に相当する。

この合意は2026年8月に期限を迎え、非開示のパフォーマンス指標に基づく自動更新条項が含まれている。また、CoinbaseはCircleが新規に締結するUSDC関連の提携に対して拒否権を保持していると報じられている。

そのCoinbaseが、金利収入を発行体から配布パートナーへと移転させることを目的とした競合ステーブルコイン「OUSD」に署名した。同社は公式声明で、USDCを「自社プラットフォームの要石」と呼びつつ、その収益モデルを代替する設計の競合製品も同時に支持するという二面性を見せている。

CircleのCEOであるジェレミー・アレール氏は、OUSDの名前を直接挙げることは避けつつも、SNS上で市場の動揺に対してコメントした。「ステーブルコインは世界で最も大きな市場機会の一つだ」とし、USDCを「世界で最も信頼され、広く採用されている機関投資家向けのステーブルコイン」と表現した。Circleは単なる発行体にとどまらず、ブロックチェーンネットワーク「Arc」、クロスチェーン転送プロトコル「CCTP」、決済エンジン「StableFX」などのツールを通じ、ステーブルコイン経済のインフラレイヤーとしての地位確立を急いでいる。

■技術的アーキテクチャと規制の壁

OUSDは、短期米国債や現金同等物によって1:1で裏付けられ、等価で償還されるという点ではUSDCと同じ経済的基盤を持つ。構造的な違いは金利の分配方法のみだ。また、OUSDは初日からSolana上でネイティブにローンチされ、続いてStellar、Base(Coinbaseのレイヤー2)、Polygonなどのチェーンに対応する予定だ。ただし、Open Standardは具体的なカストディアン(保管業者)や監査スケジュール、規制上の法的実体などをまだ公表していない。

さらに、OUSDのビジネスモデルには、発表で触れられなかった重大な法的リスクが存在する。米国通貨監督庁(OCC)が2026年2月25日に発表した「GENIUS法」の実施規則案には、第三者への金利分配を事実上禁止する条項が含まれている。

2025年7月18日に成立したGENIUS法第4条(a)(11)は、決済ステーブルコインの発行体が、ステーブルコインの保有や利用に関連して「いかなる形式の利息や金利(現金、トークン、その他の対価を問わず)を支払うこと」も禁止している。OCCの規則案はさらに踏み込み、発行体が関連する第三者を経由して保有者に金利を迂回させる仕組みも違反とみなす。ただし、非関連パートナーとの「ホワイトラベル型の利益分配」は例外として認められる可能性があり、Open Standardのモデルがこれに該当すると認められるかどうかが焦点となる。

GENIUS法の最終実施規則の法定期限は2026年7月18日に迫っており、同法自体は早ければ2027年1月18日に施行される。OUSDは施行前の隙間期間にローンチすることは可能だが、140社のパートナーへの金利支払いを維持するには、今後の規制の枠組みをクリアする必要がある。また、同法に準拠する決済ステーブルコインは銀行預金とはみなされず、連邦預金保険公社(FDIC)の保険対象外となるため、2023年のシリコンバレー銀行破綻時のUSDCのような政府による救済措置は期待できない。

■インフラ重視へ舵を切るCircleと市場の展望

CircleのアレールCEOは、USDCをさらに多くのネットワークや金融機関に拡大し、パートナーを「USDCネットワークの成長の経済的利害関係者」にするとともに、インフラレイヤーの構築によって、仮にOUSDにシェアを奪われたとしてもインフラ側から利益を得られる体制を整える計画を示している。

一方、TetherのCEOであるパオロ・アルドイノ氏はSNSで「OUSDを歓迎する。プレイヤー2がゲームに参入した」と余裕を見せた。Tetherは新興国市場の取引や個人送金を主戦場としており、OUSDが狙う企業決済分野とは直接競合しないためだ。

ステーブルコインの市場規模は現在3,000億ドル(約48兆9,000億円)を超えており、Citiは2030年までに4兆ドル(約652兆円)に達すると予測している。金利を自社に囲い込む単一の発行体が支配する時代から、140社のパートナーで金利を分配する共同体モデルへの移行が成功するかどうか、ステーブルコイン市場はかつてない制度的挑戦の局面を迎えている。

■注目ポイントQ&A

●Open USD(OUSD)とは何ですか?USDCと何が違うのですか?

OUSDは、米国債や現金同等物によって1:1で裏付けられた米ドル連動型のステーブルコインです。USDCとの最大の違いは「金利の分配」にあります。USDCの発行体であるCircleは裏付け資産から生じる金利収入を自社の収益として受け取りますが、OUSDは少額の管理手数料を除いた金利のほぼすべてを採用・配布する140社以上のパートナー企業に還元します。

●OUSDは安全ですか?市場危機が発生した場合の保護はありますか?

OUSDはGENIUS法の規制枠組みにおける決済ステーブルコインとして構成されますが、これらは銀行預金ではなく、FDIC(連邦預金保険公社)の保険対象外です。2023年のシリコンバレー銀行破綻時にUSDCが一時的にディペッグ(等価性の喪失)した際、米政府はCircleの預金を救済して安定化させましたが、OUSDの保有者には同様の政府による救済措置は保証されません。

●GENIUS法の金利禁止条項によって、OUSDのビジネスモデルが差し止められる可能性はありますか?

その可能性はあります。2025年7月に成立したGENIUS法は、発行体が保有者に金利を支払うことを禁止しています。OCC(米国通貨監督庁)が2026年2月に提示した規則案では、第三者を経由した金利の迂回配分も禁止対象に含まれる可能性が指摘されています。ただし、非関連パートナーとの「利益分配」としての例外措置が認められるかどうかが法的な争点となっており、規制の行方は不透明です。

元記事: Open USD Stablecoin Targets Circle’s Reserve Yield With 140-Partner Coalition

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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