関連記事
「いつの間にか富裕層」の現実とは
●金融資産1億円以上の層が最多に
野村総合研究所(NRI)の発表によると、2023年時点で純金融資産(金融資産合計から負債を引いた額)が1億円以上の富裕層と、5億円以上の超富裕層が、2005年の調査開始以来最多だったと言う。
【こちらも】タイミー株上昇の思惑は?
前回調査の2021年から世帯数で約11%、資産総額では約29%増加しており、2013年から増加傾向が続いている。
今回の特徴は、近年の株式相場の上昇を受けて運用資産が増加した新たな層の出現で、NRIではこの層を、「いつの間にか富裕層」と呼んでいる。
失われた30年で貧しくなったと言われる日本で富裕層の増加は、貯蓄から投資への流れが顕著となった傾向なのだろうか?
●いつの間にか富裕層とは?
「いつの間にか富裕層」は、40代後半~50代前半の主に一般の会社員で、年収は500万円~600万円、金融資産が5000万円~1億円の準富裕層から富裕層へ昇格したケースが多いと言う。
いつの間にか富裕層は、2013年のアベノミクスによる金融緩和の恩恵を受けて、NISAや自社株買いで金融資産を増やしていったと見られ、富裕層全体の1~2割を占めていると推察される。
富裕層になっても給与の範囲内でこれまでと変わらない生活スタイルを維持しており、金融リテラシーが高いわけでもなく、自らは放ったらかしで知人・友人や金融機関に薦められるがまま投資した結果成功したケースも一定数いると見られる。
●手放しで喜べない!?広がる貧富の差
日本の家計の金融遺産は、2024年12月時点で2230兆円と過去最高を記録した。
しかし日本国全体で見ると、貧困率は15%~16%で先進国と比べても高い数値となっており、いつの間にか富裕層が多く誕生した40代・50代の金融資産の中央値は、2人以上世帯で220万円・300万円となっている。
いつの間にか富裕層も、都市部でそれなりの年収がある層に片寄っていると見られ、都市部と地方の差も浮き彫りになっている。
今回の調査も2023年時点であり、直近ではトランプ関税で株価の急落が起きており、次回の調査でいつの間にか富裕層が元の層に転落する恐れもある。
いつの間にか富裕層がパニック売りとなれば、相場全体にも影響が及ぶ。金融教育・金融リテラシーの強化は今後も大きな課題となるだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
スポンサードリンク