加賀電子、25年3月期は横ばい予想も中間期は社内計画比で上振れ、高配当利回りなど指標面の割安感は魅力

2024年12月24日 12:46

印刷

記事提供元:日本インタビュ新聞社

 加賀電子<8154>(東証プライム)は独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。半導体・電子部品等の商社ビジネス、電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを主力に、成長戦略として収益力強化、経営基盤強化、新規事業創出、SDGs経営を推進している。25年3月期は営業・経常利益横ばい予想としている。下期からの需要本格回復を見込んでいる。中間期が社内計画比で上振れたことを勘案すれば通期予想にも上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■独立系の大手エレクトロニクス総合商社

 独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。M&Aも活用し、半導体・電子部品等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。

 24年3月期のセグメント別売上高構成比は電子部品事業(半導体、電子部品、EMS)が87%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、各種家電、写真・映像関連商品)が8%、ソフトウェア事業(CGアニメ映像制作、アミューズメント関連商品)が0%、その他事業(エレクトロニクス機器修理、アミューズメント機器製造販売、スポーツ用品販売など)が4%、営業利益構成比は電子部品事業が81%、情報機器事業が11%、ソフトウェア事業が1%、その他事業が6%、調整額が0%だった。

 中期経営計画に沿ったセグメント区分は電子部品事業、EMS事業、CSI事業(情報機器事業)、その他事業(ソフトウェア事業、その他)としている。24年3月期の売上構成比は電子部品事業が66%、EMS事業が22%、CSI事業が8%、その他事業が3%、営業利益構成比は電子部品事業が55%、EMS事業が29%、CSI事業が11%、その他事業が5%だった。

■売上高1兆円企業を見据えた中期経営計画2027

 24年11月に次期中期経営計画2027(26年3月期~28年3月期)を発表した。重点施策として更なる収益力の強化、経営基盤の強化、SDGs経営の推進を掲げ、売上高1兆円企業を見据えて目指す経営目標値として最終年度28年3月期売上高8000億円以上、営業利益360億円以上、オーガニック成長による収益目標として最終年度28年3月期売上高7000億円以上、営業利益350億円以上、資本効率性の指標として最終年度28年3月期ROE12.0%以上(株主資本コスト10%前後)を掲げた。

 なおオーガニック成長による収益目標(28年3月期)のセグメント別内訳については、電子部品事業が売上高4000億円でセグメント利益165億円、EMS事業が売上高2300億円でセグメント利益135億円、CSI事業が売上高550億円でセグメント利益40億円、その他事業が売上高150億円でセグメント利益10億円としている。

 事業戦略としては、商社ビジネスの拡大を高付加価値のEMSビジネスにつなげ、収益性の向上を推進する。また29年3月期売上高1兆円に向けて、M&Aの活用により当中期経営計画期間中に1000億円超の新たな事業収益の獲得を目指す。さらにエネルギー、インフラ、交通、環境を重点テーマとして新規事業を探索する。

 株主還元については連結配当性向の目安を30~40%に引き上げ、中長期的な利益成長を通じた配当成長に努める。普通配当については安定的かつ継続的な配当の目安をDOE4.0%とし、さらに利益水準や資本効率性に応じた追加施策として、特別配当や自己株式取得を機動的に実施する方針だ。

 SDGs経営についてはサステナビリティ中長期経営計画(21年11月公表)に基づいて、持続可能な社会の実現と持続的なグループの成長の両立を目指すとしている。24年3月には経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2024(大規模法人部門)の認定を受けた。23年に続き2年連続となる・

 なお24年4月には子育て世帯に様々なサービスを提供するTIMERS(タイマーズ)への出資を発表、24年5月にはノーコードIoT・DXプラットフォーム事業を展開するミークへの出資を発表した。24年7月には、子会社エクセルおよびアルファバスジャパンと共同で2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の運営参加サプライヤーとして協賛し、環境に配慮した中国ALFA社製小型EVバスを提供すると発表した。

■25年3月期営業・経常利益横ばい予想だが上振れ余地

 25年3月期の連結業績予想は、売上高が24年3月期比2.3%増の5550億円、営業利益が0.6%増の260億円、経常利益が0.1%増の260億円、親会社株主帰属当期純利益が11.5%減の180億円としている。配当予想は第2四半期末110円、期末55円としている。効力発生日24年10月1日の株式2分割後で比較すると24年3月期は年間110円(第2四半期末55円、期末55円)で、25年3月期も24年3月期と同額の年間110円(第2四半期末55円、期末55円)となる。予想配当性向(株式2分割後の会社予想連結EPS342円63銭で算出)は32.1%となる。

 第2四半期累計(中間期)連結業績は売上高が前年同期比5.8%減の2590億64百万円、営業利益が17.1%減の115億01百万円、経常利益が19.1%減の112億78百万円、そして親会社株主帰属四半期(中間)純利益が30.4%減の79億41百万円だった。

 減収減益だった。売上面は電子部品事業における主要顧客の在庫調整長期化の影響に加え、一部の特定大口顧客向け取引縮小も影響した。利益面は、販売ミックス良化で売上総利益の減少が2.9%減にとどまったが、人件費や物流費など販管費の増加も影響した。ただし社内計画比では売上高が約40億円、営業利益が約15億円、それぞれ上振れて着地した。なお営業外では為替差損が増加(前期は2億91百万円、当期は9億95百万円)した。特別利益では投資有価証券売却益が減少(前期は10億74百万円、当期は76百万円)したほか、前期計上の負ののれん発生益4億81百万円と関係会社清算益4億80百万円が剥落した。

 電子部品事業は売上高が6.9%減の2258億66百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が26.4%減の86億79百万円だった。減収減益だった。EMSビジネスは車載向けや産業機器向けが堅調だったが、部品販売ビジネスにおける主要顧客の在庫調整長期化の影響に加え、子会社エクセルの海外子会社における特定大口顧客向け取引縮小も影響した。

 情報機器事業は売上高が10.1%減の186億33百万円、利益が8.7%増の13億92百万円だった。売上面は量販店向けパソコンが低調だったほか、LED設置ビジネス大口案件の一巡も影響して減収だが、利益面はセキュリティソフトの好調などで利益率が向上して増益だった。

 ソフトウェア事業は売上高が20.1%増の14億71百万円、利益が2.3倍の2億56百万円だった。CG映像制作が堅調に推移して増収増益だった。その他事業(エレクトロニクス機器修理・サポート、アミューズメント機器製造・販売、スポーツ用品販売など)は売上高が24.2%増の130億93百万円、利益が75.6%増の10億94百万円だった。パソコン製品・周辺機器のリサイクルビジネス、アミューズメント機器、スポーツ用品の販売が好調に推移して大幅増収増益だった。

 会社別の営業利益(連結調整前)は加賀電子が8.3%減の96億89百万円、加賀EFIが59.1%減の9億91百万円、エクセルが19.8%減の6億93百万円、中計セグメント別の営業利益(同)は電子部品が37.3%減の50億19百万円、EMSが0.5%増の41億64百万円、CSI(コンシューマー&システムインテグレーター)が8.7%増の13億92百万円、その他が2.3倍の8億47百万円だった。

 また全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が1286億38百万円で営業利益が55億50百万円、第2四半期は売上高が1304億26百万円で営業利益が59億51百万円だった。

 通期予想は据え置いて営業・経常利益横ばい予想としている。需要面については下期からの本格回復を見込んでいる。利益面では賃上げ等による人件費の増加を販売数量と販売ミックスによって吸収する見込みだ。

 セグメント別の計画は、電子部品事業の売上高が2.1%増の4825億円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が0.1%増の209億円、情報機器事業の売上高が1.6%増の450億円で利益が2.6%増の30億円、ソフトウェア事業の売上高が16.8%増の30億円で利益が8.1%増の4億円、その他事業の売上高が5.4%増の245億円で利益が9.3%増の17億円としている。営業利益(前期比+2億円)の変動要因は販売数量・販売ミックスで+16億円、人件費増加(賃上げ、新卒採用、定期昇給など)で▲15億円、その他経費で+1億円の見込みとしている。

 第2四半期累計(中間期)の進捗率は売上高が47%、営業利益が44%、経常利益が43%、当期純利益が44%だが、社内計画比で上振れたことを勘案すれば、通期予想にも上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 24年8月には、JPX総研と日本経済新聞社が共同で算出を行っているJPX日経インデックス400およびJPX日経中小型株指数の24年度(24年8月30日~25年8月28日)の構成銘柄として選定された。JPX日経インデックス400は2年連続、PX日経中小型株指数は4年連続となる。

 株価(1株当たり数値は24年10月1日付の株式2分割後)は水準を切り上げて戻り高値圏だ。高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。12月23日の終値は2917円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS342円53銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の110円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2871円11銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約1674億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

【関連記事・情報】
【株式市場特集】名古屋証券取引所バリュー株に脚光!低PER・PBR、高配当銘柄が続々(2024/10/28)
【株式市場特集】日米選挙控え、金関連株と自社株取得銘柄に注目(2024/10/21)
【株式市場特集】為替と金利動向も見据え、相場の方向性を探る(2024/10/15)
【株式市場特集】中東危機で株式市場に異変、日経平均と個別株の反応に乖離(2024/10/07)

※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

関連記事