最後の相場師:是川銀蔵氏もいまなら、「防衛関連株は買い」と言うだろうか

2023年9月7日 08:37

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 2日の西日本新聞meの、『殺傷武器の輸出 密室で方針転換を急ぐな』と題する社説を読んだ。詳細は同紙の紙版などを取り寄せてお読みいただくとして、私は今年に入ってからいわゆる「防衛装備品移転三原則」の政府(自民・公明)与党の「拡大解釈」の方向に、件の社説のタイトル同様の危惧を抱いていた。

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 政府の姿勢は、国際共同開発する防衛装備品の第三国への輸出解禁だ。念頭には、日・英・イタリア三国で共同開発する次期戦闘機があると認識する。現行の防衛装備品移転三原則では、輸出は「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の非戦闘分野だけに認められている。

 戦闘機はその範疇外。政府筋は「それでは日・英・イタリアが共同開発の次期戦闘機の足を日本が引っ張ることになる。国際関係の在り様に不振を生み出しかねない」というという意を日増しに強めていた。秋に与党間の協議を再開することとしてきたが、岸田文雄首相は「前倒し協議」を指示するに至った。

 武器輸出を自制してきた平和国家:日本の理念に反する、と私は見ている。

 世の中の森羅万象を映し出す株価は、見事に?実態を反映している。具体的には代表的な防衛関連企業の、この間の株価動向はこんな具合だ。

 ★三菱重工(東証プライム): 9月1日の(以下同じ)終り値、8330円。年初来高値(同)8425円(9月1日)。年初来安値(同)4435円(3月16日)。IFIS目標平均株価(同)8563円。

 ★三菱電機(東証プライム): 1893円。2105円(7月25日)。1273円(1月12日)。2189円。

 ★IHI(東証プライム): 3632円。4088円(7月3日)。3065円(3月16日)。4500円。

 ★川重(東証プライム): 3760円。3942円(8月8日)。2671円(3月16日)。3963円。

 いずれも強張った値動きを示している。代表的関連株価動向が示す限り、憲法改正問題も絡んでくる「防衛装備品移転三原則」の「拡大化」が政治力で「なし崩し」的に行われていきかねない。

 西日本新聞meの社説を読み、防衛関連企業の株価動向をチェックした際にフッと「最後の相場師」と称される故是川銀蔵氏のことを思い出した。バブル相場の動向をこう語っていた。

 「鉄鋼株は、例えば新日鉄(当時)や川鉄(同)は中長期的に十二分に狙える。6000円台の電力株も同様だ。が、造船株は売りだ。証券会社はいま、造船株を防衛関連で営業しようとしている。しかし世界中がデタント(緊張緩和⇔米ソの核軍縮、冷戦緩和)の方向に向かっているとき、そうした流れに水をさすような防衛関連を買うとは何事か。時代の流れに逆らうものの末路は見えている。売りだ」とした。

 ウクライナ・ロシア問題や北朝鮮の示威行為が続く中ではやはり、是川氏も防衛関連株を「買い」としただろうか・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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