キリン、腸内細菌検査サービスを本格展開 最小単位レベルで腸内細菌を解析

2023年7月20日 15:33

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MicroBio Meの検査イメージ(画像:キリンホールディングスの発表資料より)

MicroBio Meの検査イメージ(画像:キリンホールディングスの発表資料より)[写真拡大]

 キリンホールディングスは18日、腸内細菌検査サービス「MicroBio Me(マイクロバイオミー)」の本格展開を開始したと発表した。同社が出資している米国のThorne HealthTech(ソーンヘルステック)の解析技術を用い、腸内細菌最小単位レベルの精緻な検査を実施。検査結果をもとに医療機関でアドバイスを行う。国内の約60の医療機関で提供を始め、今後拡大を目指すという。

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 腸の中には約1,000種類、約100兆個の腸内細菌が存在し、様々な疾患や健康状態に関与しているという。近年、脳と密接に関わり相互に影響を及ぼす脳腸相関があると明らかにされ、腸本来の働きを取り戻す腸活に取組む向きもある。

 キリンが21年9月に実施したWebアンケート(20~70歳代男女5,615人から回答)では、腸内環境を整えるため日常的に何かを行っている人は93%。一方で、普段の腸内環境がとても良いと回答した人は5.6%で、多くは環境改善の必要性を感じているという。

 また日本では、腸内環境バランスの乱れが一因とされる過敏性腸症候群をおよそ10人に1人が患っているとされ、推定患者数は1,200万人を超える。

 MicroBio Meは専用キットで検査を行う。提携の医療機関で申し込みを行い、腸内細菌検査キットを入手。自宅で採便し、梱包した検体を郵便局へ持ち込むかポストへ投函してキリンに郵送する。同社がThorneに輸送して解析。結果は、6~9週間で医療機関に届き、利用者は医療機関でレポートの説明や、腸内環境改善に向けた医療アドバイスが受けられる。

 特長は解析粒度にある。細菌は、遺伝的特徴をもとに門、目、属、種、株などの階級で細分される。従来の検査は、属レベルで解析を行う「16S解析」が主だったが、MicroBio Meは「ショットガンメタゲノム解析」を採用しており、さらに細かい種や株レベルまで解析可能。腸内に不足している菌や、菌が好む食材、採るべき栄養素なども把握できるという。他、腸内細菌の潜在能力や免疫スコア、脳腸相関なども可視化される。

 今回の事業は、キリンのヘルスサイエンス領域で、初の腸内環境事業になるという。ヘルスサイエンス領域の立ち上げは19年。ビール事業の発酵・バイオテクノロジーをベースとした機能性素材の開発をメインに、プラズマ乳酸菌などを活かした商品を展開してきた。

 こうした動きは19年発表の長期ビジョン「キリングループ・ビジョン2027」に基づく。長期ビジョンで「食から医にわたる領域」での価値創造を掲げ、紐づく中期経営計画(22-24年)では、成長軌道に乗せるため食・ヘルスサイエンス・医の3領域へ経営資源を集中すると設定している。今回の取組みもその1つとなる。

 キリンは今後、MicroBio Meを腸内細菌事業として展開し、国内での取扱い医療機関を拡大していく方針だ。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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