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ブラックホールの劇的な発光の瞬間を捉えることに成功 バーミンガム大ら
「潮汐破壊現象」中に超大質量ブラックホール (背景) に吸い込まれ、スパゲッティ化を経験している星を描いたイラスト。(c) ESO/M. Kornmesser[写真拡大]
2019年9月に発見されたJ221951と呼ばれる天体は、短期間に明るさが大きく変化する過渡現象を伴なう天体として認識されていた。だが最近の研究でこれが、地球から100億光年も離れた宇宙空間にあり、ブラックホールが劇的な発光していたものであることが明らかにされた。これを科学者らは、「ブラックホールのスイッチが入った瞬間」と表現している。
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バーミンガム大学の科学者らを中心とする研究チームは、中性子星が別の中性子星やブラックホールと合体する兆候であるキロノバを探索していたところ、このJ221951にたどり着いたという。
キロノバは通常、青く見え、数日かけて色が消え、より赤く変化する。だが彼らが見つけたJ221951は、過渡現象は青く見えたものの、キロノバのように色が変わったり、急速に色褪せたりすることはなかったため、キロノバとは異なる現象であるとの見解を持った。
100億光年もの遠くの宇宙でこれほど明るい過渡現象が確認できたのは驚きで、従来にない宇宙で最強レベルの発光を伴なう現象であることは、間違いない。その後のJ221951の光スペクトルを調べることで、重力波信号が0.5億光年未満の距離で検出されたことも明らかとなった。
このことはJ221951が、超大質量ブラックホールが周囲の物質を非常に急速に摂食した結果として存在したことを示唆している。
J221951の位置では、検出前に赤い銀河の存在が観察されており、J221951の位置は巨大ブラックホールが自然に存在すると考えられる銀河の中心と一致していたという。また最初の検出の約10カ月前に、突然輝き始めたことも確認されている。これは、ブラックホールがしばらく静かだった後、非常に急速に餌を食べ始めたことを意味する。
超巨大ブラックホールのこの極端な摂食は、ブラックホールの強烈な重力による潮汐現象もしくは、活動銀河核が休止状態から活動状態に変化したことが原因として考えられるが、現時点ではそのいずれであるのかは不明だ。今後数カ月にわたり、J221951の減光がどのように推移していくのかを見極めていくことで、いずれによるものかが明らかにできるだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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