関連記事
物価は上昇しても、日銀が物価2%目標を未達成とする理由は?
(c) 123rf[写真拡大]
総務省統計局が2月24日に発表した1月の消費者物価指数は、前年同月から4.3%の上昇だった。特に、エネルギーでは14.6%と上昇幅が大きく、食料品も7.0%上昇と、生活への打撃が読み取れる調査結果となっている。
同じ2月24日には、衆院で次期日銀総裁候補の植田和男氏への所信聴取が行われ、物価2%目標達成には時間がかかるという発言があった。
物価が上昇していることは消費者として強く実感するところであり、総務省の統計でも示されているが、それでも日銀の2%目標が未達成であるとは、どういうことだろう。その答えは、物価上昇の背景と、これまでの日銀の発言から読み取れる。
現在の物価上昇の特徴は、ロシアのウクライナ侵攻を背景にした燃料・資源価格の上昇や、円安による輸入価格の上昇によるコストプッシュ型という点にある。賃金アップの動きはあるものの、需要が喚起されて物の値段が上がっているわけではない。つまり、現状の物価の動きは持続しないと日銀は考えているのだ。
黒田総裁も植田氏も、2023年度以降は2%を割るだろうという趣旨の発言をしており、「安定的な」物価上昇率2%は未達成である、という認識に到るのである。そのため、日銀はこれまでの金融緩和による政策の副作用は検証しつつ、基本的には現在の方針を維持する方向となる。
2%の物価目標が掲げられたのは2013年であり、当時の日本は深刻なデフレに苦しんでいた。デフレ下においては物の値段が下落し続けることになるが、それは企業収益の低下、従業員給与の減少をまねき、ひいては日本全体の経済の低迷に繋がることになる。これを回避すべく、異次元の金融緩和が進められてきた。
当初2年で達成すると言われた2%という数値は、10年経った今でも実現していない。ではどうすれば「達成した」と言えるのだろう。それにはやはり、冒頭に述べたコストプッシュ型のインフレではなく、需要喚起型のインフレに移行することだろう。
過去に「Go To キャンペーン」等の経済対策が展開され需要を刺激したが、インフレ目標を達成することはできていなかった。やはり鍵となるのは賃上げである。今春の企業による賃金の上げ幅がどうなるか、更に政府による電気・ガス代抑制政策がどの程度効果を発揮するかを見極めながら、日銀は政策の舵取りが求められるだろう。(記事:Paji・記事一覧を見る)
スポンサードリンク